(旧版)女性下部尿路症状診療ガイドライン
5
診断
2 診察
Gynecological examination(婦人科診察),bench inspection(台上診),gynecologicalinspection(婦人科視診),lithotomy position inspection(砕石位視診),internal gynecologicalexamination(婦人科内診),vaginal speculum(腟鏡),bimanual examination(双手診),cough test (咳テスト),Q-tip test (Q チップテスト),bulbocavernosus reflex(球海綿体筋反射)をキーワードとして検索し,検出された263 論文のうちの女性下部尿路症状の診察において参考となる論文7 編と2001 年以前の1 編の合計8 編を引用した。
通常の泌尿器科的診察と同様に,全身に下部尿路症状と関連した所見ならびに神経疾患,婦人科的疾患,先天性異常がないかを観察する。下腹部正中の膨隆は多量の残尿による拡張した膀胱を示唆し,臀部正中の窪み,発毛,脂肪沈着を認める場合は二分脊椎症の可能性がある。
女性の場合,骨盤底,生殖器の異常が下部尿路症状と密接に関連するため,必要に応じて患者を砕石位として視診と内診にて評価する。尿道カルンクル,尿道狭窄などの外尿道口の異常,腟の発赤や萎縮がないかを観察する1)。腹圧性尿失禁が疑われる場合は,尿道過可動の有無を評価する。慣れれば視診でも評価は可能であるが,Q チップテストを行うと評価しやすい2-5)。尿道に綿棒を挿入し腹圧をかけさせ,綿棒の傾きが30°以上を過可動と判定する(図5)。また,実際に尿失禁の有無を確認する方法として,ストレステストがある。蓄尿状態で砕石位として咳や腹圧をかけさせて,尿の漏出と程度を確認する。
通常の泌尿器科的診察と同様に,全身に下部尿路症状と関連した所見ならびに神経疾患,婦人科的疾患,先天性異常がないかを観察する。下腹部正中の膨隆は多量の残尿による拡張した膀胱を示唆し,臀部正中の窪み,発毛,脂肪沈着を認める場合は二分脊椎症の可能性がある。
女性の場合,骨盤底,生殖器の異常が下部尿路症状と密接に関連するため,必要に応じて患者を砕石位として視診と内診にて評価する。尿道カルンクル,尿道狭窄などの外尿道口の異常,腟の発赤や萎縮がないかを観察する1)。腹圧性尿失禁が疑われる場合は,尿道過可動の有無を評価する。慣れれば視診でも評価は可能であるが,Q チップテストを行うと評価しやすい2-5)。尿道に綿棒を挿入し腹圧をかけさせ,綿棒の傾きが30°以上を過可動と判定する(図5)。また,実際に尿失禁の有無を確認する方法として,ストレステストがある。蓄尿状態で砕石位として咳や腹圧をかけさせて,尿の漏出と程度を確認する。

また,膀胱瘤,子宮脱,直腸瘤などの骨盤臓器脱の有無を評価する。この際,腹圧負荷による下垂の変化を確認する。必要に応じて腟の前後壁を鉤で圧迫して観察すると,それぞれ直腸瘤と膀胱瘤の観察が容易となる6)。骨盤臓器脱が存在する場合は,pelvic organ prolapse quantification(POP-Q)system を用いて評価記載する(図6)。POP-Q には9 つの計測部位がある。すなわち,前腟壁のAa,Ba 点,上腟部のC,D 点,後腟壁のAp,Bp 点の計6 ポイントと,外尿道口中心から後方処女膜正中部までの長さ〔gh〕,後方処女膜正中部から肛門中心部までの長さ〔pb〕,全腟管の長さ〔tvl〕である7)(図6)。このうち腟壁上の6ポイントは,最も下垂した状態で処女膜位置を基点として何cm にあるかを計測する。処女膜位置より上方であればマイナス,処女膜より下方であればプラスの数値として記載する。通常9 つの計測値は3×3 のグリッド内に記載する(図7)。なお,日常診療でこれらを計測記載することが困難な場合は,stage 分類を使用してもよい(図8)。最も下垂した部位が処女膜位置から±1 cm 内にあればstage II となる。
内診は通常の婦人科的方法で行い,内生殖器に加えて骨盤底の状態とトーヌスを評価する。Dry time のない尿失禁を認める場合は,膀胱(尿道)腟瘻,尿管異所開口を疑い,必要に応じてインジゴカルミンを入れた生理食塩水を膀胱内に注入して腟内を観察する。直腸診では,便貯留の状態や排尿に影響する所見がないかを調べる。直腸瘤が疑われる場合は砕石位では目立たないことがあるので,指で腟後壁の強度を確認する。肛門のトーヌスが低下している場合は仙髄領域(S3-5)の末梢性神経障害が疑われ,亢進している場合は仙髄以上の神経障害の可能性がある。
内診は通常の婦人科的方法で行い,内生殖器に加えて骨盤底の状態とトーヌスを評価する。Dry time のない尿失禁を認める場合は,膀胱(尿道)腟瘻,尿管異所開口を疑い,必要に応じてインジゴカルミンを入れた生理食塩水を膀胱内に注入して腟内を観察する。直腸診では,便貯留の状態や排尿に影響する所見がないかを調べる。直腸瘤が疑われる場合は砕石位では目立たないことがあるので,指で腟後壁の強度を確認する。肛門のトーヌスが低下している場合は仙髄領域(S3-5)の末梢性神経障害が疑われ,亢進している場合は仙髄以上の神経障害の可能性がある。



参考文献 |
1) | Price N, Currie I. Urinary incontinence in women: diagnosis and management. Practitioner 2010; 254: 27-32 |
2) | Weber LeBrun EE, Harmanli OH, Lidicker J, Dandolu V. Can we use a catheter to do the Q-tip test? Obstet Gynecol 2007; 110: 1297-1300 |
3) | Larrieux JR, Balgobin S. Effect of anatomic urethral length on the correlation between the Q-tip test and descent at point Aa of the POP-Q system. Int Urogynecol J Pelvic Floor Dysfunct 2008; 19: 273-276 |
4) | Zyczynski HM, Lloyd LK, Kenton K, Menefee S, Boreham M, Stoddard AM for the Urinary Incontinence Treatment Network(UITN). Correlation of Q-tip values and point Aa in stress-incontinent women. Obstet Gynecol 2007; 110: 39-43 |
5) | Mattison ME, Simsiman AJ, Menefee SA. Can urethral mobility be assessed using the pelvic organ prolapse quantification system? An analysis of the correlation between point Aa and Q-tip angle in varying stages of prolapse. Urology 2006; 68: 1005-1008 |
6) | Trowbridge ER, Wei JT, Fenner DE, Ashton-Miller JA, DeLancey JOL. Effects of aging on lower urinary tract and pelvic floor function in nulliparous women. Obstet Gynecol 2007; 109: 715-720 |
7) | Bump RC, Mattiasson A, Bø K, Brubaker LP, DeLancey JO, Klarskov P, Shull BL, Smith AR. The standardization of terminology of female pelvic organ prolapse and pelvic floor dysfunction. Am J Obstet Gynecol 1996; 175: 10-17 |
8) | Swift S, Theofrastons J. A etiology and classification of pelvic organ prolapse. In: Cardozo L, Staskin DR eds. Textbook of female urology and urogynecology. Oxford, UK: Isis Medical Media, 2001: 575-585 |