(旧版)女性下部尿路症状診療ガイドライン
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診療アルゴリズム
初期診療のアルゴリズム

❶ | このアルゴリズムはなんらかの下部尿路症状(頻尿,夜間頻尿,尿意切迫感,尿失禁,排尿困難,膀胱痛など)を訴える成人女性を対象とする。未成年女性と要介護高齢女性は対象としない。女性の下部尿路症状の原因となる疾患・病態は多数ある*。 * 原因となる疾患・病態の例:過活動膀胱,細菌性膀胱炎,間質性膀胱炎,膀胱癌,膀胱結石,尿道炎,尿道狭窄,骨盤底の脆弱化(尿道過可動,骨盤臓器脱など),骨盤部手術・放射線治療後遺症,膀胱・尿道腟瘻,多尿,夜間多尿,各種神経疾患(神経因性膀胱)など。 |
❷ | 基本評価には,必ず行うべき評価(基本評価1)として,症状と病歴の聴取,身体所見,尿検査がある。症例を選択して行う評価(基本評価2)としては,症状・QOL 質問票による評価,排尿記録,残尿測定,尿細胞診,尿培養,血清クレアチニン測定,超音波検査などがある。これらの所見と治療方針を患者に説明し,治療に関する希望を確認する。 |
❸ | 問題ある病歴・症状・検査所見がある場合は,専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。すなわち,尿閉,再発性尿路感染症,肉眼的血尿,骨盤部の手術や放射線治療,神経疾患,下腹部膨隆,生殖器(卵巣,子宮,腟,外陰部)の異常,腟外に突出する骨盤臓器脱,膀胱・尿道腟瘻が示唆される場合,発熱を伴う膿尿,尿細胞診陽性,腎機能障害,多い残尿量(50 mL 以上を目安とする),膀胱結石,超音波検査異常などである。 なお,症状が重度の場合や膀胱痛・会陰痛を認める場合も,専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。頻尿とともに,尿が膀胱にたまったときに強くなる膀胱痛・会陰痛を認める場合は,間質性膀胱炎の可能性がある。 |
❹ | 発熱を伴わない膿尿は尿路感染症として適切な抗菌薬により治療する。ただし,治癒した場合も基礎疾患が存在する可能性に注意する。 |
❺ | 排尿・排尿後症状が主体の場合には,専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。排尿症状と蓄尿症状の両者がある場合には残尿測定を行う。残尿が50 mL 未満であれば,蓄尿症状の診断・治療を優先させ,残尿が50 mL 以上であれば,専門的診療(専門医への紹介)を考慮する。 |
❻ | 過活動膀胱症状(尿意切迫感を伴う頻尿や尿失禁)がある場合は,「治療:1. 行動療法」ならびに「治療:2. 薬物療法 1)過活動膀胱の薬物療法」の項を参照されたい。また,過活動膀胱診療ガイドライン1,2)を参照してもよい。 |
❼ | 夜間頻尿が主たる症状である場合は,夜間多尿や睡眠障害が原因として考えられるので,夜間頻尿診療ガイドライン3)を参照されたい。 |
❽ | 一時的な治療で症状が改善することがあるので,症状が改善した後も漫然と治療を継続することなく,薬剤の中止や減量を含めて定期的に治療の変更・修正を考慮する。 |