精巣腫瘍診療ガイドライン 2015年版

 
 

CQ24
Stage Iセミノーマに対してどのような経過観察(サーベイランス)が推奨されるか?

推奨グレードB 高位精巣摘除術後に 3 つの選択肢(経過観察、放射線療法、カルボプラチン療法)のいずれを選んでも、再発の大部分は 2 年以内に起こり、術後 3 年以内は 特に綿密なフォローが必要である。しかし、無視できない確率で 5 年以降にも再発してくるため、少なくとも年 1 回のフォローアップを、術後 10 年を目処に続ける必要がある。


解説
   現在、Stage Iセミノーマに対して、高位精巣摘除術後には 1.経過観察、2.補助放射線療法、3.補助カルボプラチン単独療法、の 3 つのオプションがある。各々のオプションに対する利点・欠点については、CQ7 を参照していただきたい。Stage Iセミノーマにおける高位精巣摘除術後の経過観察には、上記の 1、2、3 で再発パターンや時期に違いがあるため、各々の選択で経過観察プロトコールを変更するのが理想である。
   3 つのオプションで共通する事項として、高位精巣摘除術後の再発の大部分は 2 年以内に起こること、しかし無視できない確率で 5 年以降にも再発するため、少なくとも年 1 回のフォローアップを、10 年を目安として必要であることが挙げられ、留意すべきである。
   また、経過観察や補助放射線療法では、対側精巣にも de novo の腫瘍発生が 1-2%で生じることを患者へ周知させる。カルボプラチンが投与された場合、この対側発生頻度は低下するが、ゼロではない。
   大半のセミノーマには、フォローアップに有用な病勢を反映する腫瘍マーカーがない。そのために、画像検査を主とした経過観察を 2 年以内は頻回に行う。AFP、hCG、β-hCG や LDH の測定は続けるべきである。
1.経過観察が選択された場合の留意事項    再発までの中央値は 13-16 カ月との報告が多く1-3)、2 年以内の再発が大半を占めるが、それ以降の晩期再発も無視できない割合で起こる。例えば、638 例の経過観察(観察期間中央値 7 年)の報告では、18.9%(121 例)の再発が認められた。そのうち約 70%の再発は 2 年以内であるが、6.6%(8 例、全体の 1.3%)は 6 年以降の再発で、最長は 12 年後であった4)。さらには、88 例の経過観察(観察期間中央値 12.1 年)で、17 例の再発があり、そのうち 2 例(2.3%、再発の 12%) は 5 年後以降の再発であったとの報告や2)、203 例の経過観察(観察期間中央値9.2 年)で 35 例(17.2%)が再発し、うち 5 例(2.5%)が 5 年以降の再発で、最長は手術後 9 年、術後 5-10 年での再発率は 4%という報告5)などがあり、長期フォローアップの必要性を示している。
   経過観察が選択された場合の再発部位は、圧倒的に傍大動脈領域のリンパ節が多い。経過観察研究の 527 例中、75 例の再発(再発中央値:20 カ月)を認めたが、再発病巣は 74 例(98.6%)で腹部骨盤部 CT によって検出されており、残る 1 例も腹部腫瘤で発見されている6)。また、横隔膜より頭側での病変が存在する場合にも、腹部骨盤部 CT で併存病変が検出されている3,7)。したがって、胸部単純 X 線検査は不必要ではないか、との主張もあるが6)、一般化された意見ではない。しかしながら少なくとも、腹部骨盤部 CT は経過観察プロトコールには必須の検査項目となるが、CT による被曝量や経済面を考慮し、その必要最小限の頻度やいつまで継続するか、という問題への回答となるエビデンスはない。英国では CT の検査回数減量、MRI による CT の代替のなどの妥当性を検証する Medical Research Council によるランダム化比較試験 TRISST 研究(Trial of imaging and schedule in seminoma testis:MRC TE24)研究が進められている。
2.補助放射線療法が選択された場合の留意事項    再発率は 4-5%程度に下げることができる(CQ7 参照)8-11)。補助放射線療法を施行した場合にも多く(>80%)の再発は 2 年以内に起こる。例えば 625 人を対象にした研究では、再発時期の中央値は 13 カ月という報告があり9)、別の 283 名 のデータでは、再発時期の中央値は 18 カ月で、最大で 6 年後という報告がある12)
   しかし、観察期間が延びれば晩期再発はさらに長期に及ぶ可能性がある5)。傍大動脈領域のみの 20-30 Gy の補助放射線療法が行われた場合、照射領域での再発は非常にまれ(5/487:1%)となり、再発部位は縦隔や鎖骨上窩リンパ節が多い8)。このため、例えば傍大動脈領域の補助放射線療法を行った場合、腹部 CT は 不要で、骨盤内のみの CT スキャンを推奨している報告もある12)。照射野に関する TE10 研究のデータでは、242 例の dogleg 型照射では骨盤内再発は観察されなかったが(0%)、236 例の傍大動脈領域のみの照射では 4 例(1.7%)に認めている11,13)。しかし、傍大動脈領域・dogleg 型の両照射方法においても、腹部リンパ節や照射野にも再発は起こる8,11)。したがって、経過観察の CT においては骨盤部だけのスキャンだけでなく、腹部骨盤部のスキャンを行うのが妥当と考えられる14,15)。なお対側精巣の腫瘍発生については、放射線療法(20-30 Gy、傍大動脈領域のみ照射)では 904 例中 15 例(1.7%:観察期間中央値 6.5 年)に認められているが、後ほど述べる補助カルボプラチン療法(AUC=7)を行うと、573 例中 2 例(0.3%)と有意に低下している10,11)
3.補助カルボプラチン単独療法が選択された場合の留意事項    ランダム化比較試験のデータでは、573 人に対して AUC7 で 1 コースの補助カルボプラチン療法が行われた場合、5 年非再発率は 94.7%とされているが、実際に AUC7 以上が投与された場合の 5 年非再発率は 96.1%である10)。再発の多くは 2 年以内に起こり、3 年以降に再発したのは 3 例(0.5%)のみで、最長は 61 カ月後であった(観察期間中央値 6.4 年)10,11)。しかし、観察期間が延びれば長期の晩期再発を認める可能性は否定できない。再発部位は後腹膜が 66.7%であり、全再発の 52%が 2 年目の腹部フォロー CT で検出されている10)。なお、カルボプラチン投与量 400 mg/m2 のデータであるが、2 コースの投与では再発率は 2%以下に改善できる、との報告があるが(CQ7 参照)、ランダム化比較試験で明らかにされたものではない。
   前述したように、対側精巣の腫瘍発生は中期的なフォローでは低下させる(発生率:0.3%)ことが示されているが10,11)、さらなる長期経過観察での対側精巣発生率は不明である。
   以上、3 つの選択肢のいずれを選択しても、再発時期の中央値データから考えると、術後 3 年以内の集中的なフォローが必要になる。その後の必要なフォローの期間については、明確なエビデンスはない。最低限のフォローの期間として 5 年間を目安にしているガイドラインもある14-16) (表 1)。放射線療法が選択された場合、晩期再発は通常よりさらにまれになる。しかし、術後補助治療後の晩期合症としての二次癌発生の危険性や心血管合併症、さらには対側精巣腫瘍発生も考慮するべきである17-19)。また、カルボプラチンの長期経過観察データは十分とはいえない。その観点からも、上記の 3 つのどの選択肢においても少なくとも 10 年間の長期フォローアップの必要があると考えられる15)。それ以上の期間のフォローの必要性・妥当性については、現時点では十分なエビデンスはない。10 年以降の再発の確率は極めて低いが、ゼロでないことを患者に十分理解してもらい、方針を決めるのが妥当と考えられる。

表 1 EAU 経過観察プロトコール 14)
経過観察、放射線療法後および化学療法後 #
   表 2 に Stage Iのセミノーマに対する高位精巣摘除後の本邦でのフォロープロトコールの例を示す。欧米のプロトコール14-16)より綿密なスケジュールである。なお本邦では、胸部のチェックは腹部 CT 時に同時に行われることが多く、その場合、胸部 X 線検査は省略可能である。

表 2 本邦での経過観察法(例)
術後経過観察が選択された場合 # *腹部 CT に併せて胸部 CT を撮影する場合、胸部 X 線検査は省略可能


文献
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2) Choo R, Thomas G, Woo T, et al. Long-term outcome of postorchiectomy surveillance for Stage I testicular seminoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2005;61:736-40.(IVa)
3) Cummins S, Yau T, Huddart R, et al. Surveillance in stage I seminoma patients:a long-term assessment. Eur Urol. 2010;57:673-8.(IVa)
4) Warde P, Specht L, Horwich A, et al. Prognostic factors for relapse in stage I seminoma managed by surveillance:a pooled analysis. J Clin Oncol. 2002;20:4448-52.(IVa)
5) Chung P, Parker C, Panzarella T, et al. Surveillance in stage I testicular seminoma- risk of late relapse. Can J Urol. 2002;9:1637-40.(IVa)
6) Tolan S, Vesprini D, Jewett MA, et al. No role for routine chest radiography in stage I seminoma surveillance. Eur Urol. 57:474-9.(IVa)
7) Horwich A, Alsanjari N, A’Hern R, et al. Surveillance following orchidectomy for stage I testicular seminoma. Br J Cancer. 1992;65:775-8.(IVa)
8) Santoni R, Barbera F, Bertoni F, et al. Stage I seminoma of the testis:a bi-institutional retrospective analysis of patients treated with radiation therapy only. BJU Int. 2003; 92:47-52;discussion 52.(IVa)
9) Jones WG, Fosså SD, Mead GM, et al. Randomized trial of 30 versus 20 Gy in the adjuvant treatment of stage I Testicular Seminoma:a report on Medical Research Council Trial TE18, European Organisation for the Research and Treatment of Cancer Trial 30942 (ISRCTN18525328). J Clin Oncol. 2005;23:1200-8.(Ⅱ)
10) Oliver RT, Mead GM, Rustin GJ, et al. Randomized trial of carboplatin versus radiotherapy for stage I seminoma:mature results on relapse and contralateral testis cancer rates in MRC TE19/EORTC 30982 study(ISRCTN27163214). J Clin Oncol. 2011;29:957-62.(Ⅱ)
11) Mead GM, Fosså SD, Oliver RT, et al. Randomized trials in 2466 patients with stage I seminoma:patterns of relapse and follow-up. J Natl Cancer Inst 2011;103:241-9.(Ⅱ)
12) Skliarenko J, Vesprini D, Warde P. Stage I seminoma:what should a practicing uro-oncologist do in 2009?. Int J Urol. 2009;16:544-51.
13) Fosså SD, Horwich A, Russell JM, et al. Optimal planning target volume for stage I testicular seminoma:A Medical Research Council randomized trial. Medical Research Council Testicular Tumor Working Group. J Clin Oncol. 1999;17:1146.(Ⅱ)
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16) National Comprehensive Cancer Network(NCCN). org. NCCN Clinical practice guidelines in oncology:testicular cancer. Ver. 1. 2014.
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18) Zagars GK, Ballo MT, Lee AK, Strom SS. Mortality after cure of testicular seminoma. J Clin Oncol. 2004;22:640-7.(IVa)
19) Fosså SD, Chen J, Schonfeld SJ, et al. Risk of contralateral testicular cancer:a population-based study of 29,515 U. S. men. J Natl Cancer Inst. 2005;97:1056-66.(IVa)

 
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