(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版

 
11 勃起機能に関した書類・診断書希望例への対処法

患者から勃起機能に関係した書類・診断書の記入を希望された場合,必ず客観的な医学検査を十分施行してから記載することが重要である。患者の訴えだけをもとに医師の主観的な推測のみで書類を記入することは避けるべきである。
〔推奨グレードC1〕
1 分類
勃起機能に関して,書類・診断書の記載を患者から希望される場合,この患者群は大きく2つに分類される1)。なお,以下に記載するEDとはすべて器質性EDを意味している。

1)『EDである』ことの証明を患者が希望する群

『EDである』ことが証明されると,以下のa〜c では患者は金銭的メリットを享受でき,またd では刑事罰の軽減というメリットが発生する。このため詐病の可能性も十分あることを念頭に置く必要がある。

a.労災事故関係

労災事故後の労災保険の認定である。原因疾患としては,尿道外傷や骨盤骨折,脊髄損傷2),陰茎損傷などがある。これらの例では『EDである』ことが証明されると労災認定で第9級の12と判定され,給付基礎日額の391日分の障害補償一時金が支払われる3)

b.交通事故関係

交通事故後の自動車損害賠償責任保険(以下:自賠責保険)の後遺障害診断書の記載を求められる場合が多い。

c.医療訴訟関係

何らかの医療行為や薬剤投与がEDの原因であることを患者が強く主張し,これを訴訟にもち込むケースである。
これには,①手術に関係したもの:骨盤内悪性腫瘍術後(直腸癌や前立腺癌などの根治手術後)や脊椎脊髄手術後などが多い。術前にED発生の可能性について文書でのインフォームドコンセントを怠ると医師側に不利になる可能性が大きい。②薬剤に関係したもの:前立腺肥大症に対する抗アンドロゲン薬や,前立腺癌に対するLH-RH アゴニスト薬,向精神薬などでED発症の可能性がある。投薬前にED発生の可能性に関する服薬指導が必須である。

d.犯罪関係

婦女暴行や痴漢行為に関係したものが多い。

2)『EDでない』ことの証明を患者が希望する群

離婚関係

協議離婚や調停離婚,訴訟離婚などにおいて,妻のサイドが夫のEDを離婚の最大の理由としてもち出したケースでは,夫側から『EDでない(器質性EDではない・勃起機能が正常)』診断書を希望されるケースがある。ちなみに,最高裁判例ではEDを民法770条1項の離婚原因1号から5号のうちの5号(婚姻を継続しがたい重大な事由)に該当すると判断している4)。この背後には,慰謝料や財産分与などの金銭的な面で少しでも有利な展開をさせたい夫側の願望が存在する。大半の例がすでに別居状態である。
 この章の参考文献一覧

 



 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す