(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版

 
10 ペロニー病(Peyronie’s disease)

4 治療

1)待機療法

自然史で述べたように自然回復はほとんど望めないので,変形が軽いため挿入が可能で,EDもなく,本疾患が進行性であることを理解した患者が適応となる2)

2)内服薬

ビタミンE

抗酸化作用を期待して,頻用されている薬剤である。患者に質問票を郵送して調査した後ろ向きの研究によると,無治療群(27名)とビタミンE 群(59名)の比較で,変形,痛み,性交可能性のいずれも有意差がなかった13)。また,ビタミンE群(58名)とプラセボ群(59名)との6カ月のRCT 14)でも,変形,痛み,プラークの大きさのいずれの項目でも有意差を認めなかった。
副作用に関しては,ビタミンE の癌と心血管イベントの予防目的のRCT(9,541名を4年半フォロー)において,ビタミンE 群のプラセボ群に対する心不全の相対リスクが1.13(95% 信頼区間:1.01〜1.26,p=0.03)と心不全を増加させた15)。また,前立腺癌の予防目的のRCT(最低7年フォロー)において,ビタミンE 群(8,737名)のプラセボ群(8,696名)に対する前立腺癌のハザード比は1.17(99% 信頼区間:1.004〜1.36,p=0.008)で,1,000人・年当たり1.6人前立腺癌を増やすことが報告されている16)
以上,有効性は不確かで,安全性に問題があり,推奨できない。

3)局所注射

a.Ca拮抗薬

Ca 拮抗薬であるベラパミルをプラークに直接注射する方法である。患者14名に対して実薬と生理食塩水を6カ月間毎週注射した一重盲検試験で,実薬群では変形が26% の患者で改善し,57% の患者でプラークの減少を認め,勃起機能が43% の患者で改善した17)。日本では,同じCa 拮抗薬であるニカルジピンを注射した試験がある18)。患者74名に対して実薬と生理食塩水を2週間ごとに6回注射した一重盲検試験で,実薬群では生理食塩水群と比較して,痛み,勃起機能,プラークのサイズ,変形のいずれもが有意に改善した。両試験ともに大きな副作用は報告されていない。

4)手術療法

病歴が1年以上で,症状の安定期間が6カ月以上の患者で,陰茎の変形が性交渉の妨げになっており,十分な勃起が保たれている(プロステーシス挿入術が前提の患者の場合はこの条件は当てはまらない)患者が適応となる2)。術後の変形の矯正程度,陰茎の短縮の可能性,勃起機能の低下の可能性などを患者と十分に話し合う必要がある2)

手術法

プリケーション法や楔状切除術は,陰茎を真直ぐにする手術である。変形の程度が軽く,陰茎の長さが保たれている症例に用いられる。侵襲が少なく術後のEDの可能性がほとんどないという利点の反面,陰茎の短縮は避けられず,亀頭部の感覚障害,結紮点の触知/痛み,変形の再発などの欠点がある2)
グラフト法は,砂時計様変形などの変形が強い場合に考慮される。プラークを切除し,その白膜欠如部にグラフト片(静脈,真皮,精巣鞘膜など)を移植する手術である。術後のED発生の可能性が高いので,プロステーシス挿入術の可能性を考慮しておかなければならない2)
 この章の参考文献一覧

 


 
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