(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版

 
8 治療

5 陰圧式勃起補助具
陰圧式勃起補助具は性交に可能な勃起状態を90% で達成可能であるが,満足度や長期の継続率は高くない。副作用は軽度のものが多い。
〔推奨グレードB〕
陰茎に陰圧をかけて陰茎内に血液を吸引した後,陰茎基部にゴムバンドを巻いて血液を滞留させる。したがって,生理的な勃起とは異なる擬似勃起状態を起こす。バンドの締め付け時間は30分以内が適切である。性交に可能な勃起状態は90% で達成できるが,満足度は27〜94% とばらつきがある54)。長期使用での継続率は35〜40%(観察期間29〜84カ月)で,中止例の大半は使用開始3〜4カ月後に中止している55,56)。若い患者より中高年以上の患者でパートナーの理解があると本治療の有効性は高い41)。副作用としては,陰茎痛,陰茎のしびれ,皮下出血,射精障害,陰囊吸引57),冷たい勃起54)などがあげられる。抗凝固療法施行中や出血素因の患者では相対的禁忌(慎重使用)とされている54)。また,PDE5阻害薬単独では無効例において,PDE5阻害薬と陰圧式勃起補助具の併用治療が有効である(有効率約70%)58)。さらに,前立腺癌で前立腺全摘術後の陰茎海綿体リハビリテーションとして,術後早期よりの陰圧式勃起補助具の使用法が推奨されており,勃起機能回復のみならず陰茎長や陰茎周囲長の維持にも有効である59)
わが国では陰圧式勃起補助具は,以前はいわゆる雑貨として何らの規制もなく販売されていたが,平成10年(1998年)10月1日以後は厚生労働省による「医療用具として製造(輸入)承認及び許可」が必要となった(厚生省薬務局医療機器開発課:陰圧式陰茎勃起補助具の取扱いについて。薬機第198号1995年9月19日)。さらに2005年4月1日の改正薬事法において,陰圧式勃起補助具は医療機器の分類上クラスII(管理医療機器:厚生労働省の製造販売承認必要)に属している。購入にあたっては医師の処方は不要で,保険適応はなく自費購入となる。
現在,厚生労働省の認可を受けているのは,VCD 式カンキ(図8)(承認番号21200BZZ00652000,製造:快生薬研ゴム球型のみ,ピストン型は製造中止)で,インターネット販売(http://www.kaiseiyakken.jp/category/item/vcd)または医療機器メーカーの株式会社武井医科光器製作所(電話03-3255-0711)で購入可能(費用は約3万円)である。
VCD 式カンキは400 mmHg まで陰圧の負荷が可能である。シリンダーの挿入口の内側と外側,締め付けバンド,陰茎に潤滑ゼリーを十分に塗布する。このゼリーの塗布が不十分であると,シリンダーの体壁への密着がうまくいかず,ひいては陰圧がかかりづらくなり,満足いく勃起が得られなくなる。操作中は立位でしたほうがやりやすい。シリンダーとポンプを接続チューブでつなぐ。片手でポンプを,もう一方の手にシリンダーを持ち,シリンダーに陰茎を挿入する。この際,空気が漏れないように,シリンダーをしっかりと体壁に押しつけることが重要である。陰茎が性交可能と判断される勃起状態になるまで,ポンプをゆっくりと作動させる。十分な勃起が得られたら,締め付けバンドを陰茎の根元に押し込め,シリンダーを陰茎より取りはずす。バンドの締め付け時間は必ず30分以内とする。陰圧式勃起補助具の使用にあたっては,ある程度慣れるまでの練習が必要であり,医療関係者による適切な指導も治療成功への鍵である。
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