(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版
4
EDのリスクファクター
13
薬剤
多くの薬剤がEDを引き起こす。しかしその根拠の多くは症例報告による。薬剤性EDの機序はまだよく解明されていない。
原因薬剤の中止が原因治療となる。
〔推奨グレードC1〕
しかし,原因薬剤を中止しても回復するとは限らないし,原因薬剤の中止は困難なことが多い。

しかし,原因薬剤を中止しても回復するとは限らないし,原因薬剤の中止は困難なことが多い。
少し古いデータではあるが,新規ED患者の25% が薬剤性EDという報告もある134)。表2 135)に代表的な薬剤を示す。
高血圧自体もEDのリスクファクターであるが,降圧薬も薬剤性EDを起こすことがよく知られている136)。降圧薬によるED発症の機序としては,高血圧に合併する動脈硬化病変のために陰茎への血流が低下しているところに,降圧薬による降圧によりさらに陰茎血流が低下するためと考えられている137)。しかし,降圧薬の種類によりED発症の頻度が大きく異なることはこの理論からは説明できない。
358名の高血圧患者をIIEF で調査した研究によると138),降圧薬を投与されている患者(268名)は無投与の患者(91名)に比べ,有意にEDに罹患しており〔108名(40.4%)と18名(19.8%)〕,単剤投与の患者に比べ,2剤以上投与を受けている患者で有意にEDの罹患率が高かった(36.3% vs 46.7%)。また,利尿薬かβ遮断薬を投与されている患者のほうが,カルシウム(Ca)拮抗薬/ACE 阻害薬/アンジオテンシン受容体拮抗薬のいずれかを投与されている患者よりも有意にED罹患率が高かった。
アンジオテンシン受容体拮抗薬は勃起機能に保護的に働くことを示唆する研究がある。82名の高血圧患者に12週間ロサルタンを投与したところ,性的活動の頻度が投与前に比べ有意に上昇した139)。また1,889名の高血圧患者にバルサルタンを16週間投与したところ,性的活動の頻度が投与前に比べ有意に上昇した140)。一方,スウェーデンでの規制当局への副作用報告をまとめた報告によると141),1990〜2006年までの17年間の23,176件の副作用報告中225件(1%)がEDであり,その225件中59件(26%)が降圧薬によるものであった。報告された降圧薬は,β遮断薬,Ca 拮抗薬,ACE 阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,サイアザイド系利尿薬であり,アンジオテンシン受容体拮抗薬が処方件数当たりの報告が最多であった。
抗うつ薬に代表される精神科の治療薬もEDをしばしば発症させることが知られている136)。うつ病患者で問題なのは,EDを自分の欠点のようにとらえることが多く,それがさらに自分はダメな人間なのだという感情につながることである。また,患者がこの副作用を申告しないことが多く,服薬コンプライアンスの低下にもつながる136)。
前立腺肥大症に対する5α還元酵素阻害薬によるEDについて83-85)は4-8参照。前立腺癌に対する抗アンドロゲン薬によるEDについて142,143)は6-4参照。
非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)によるEDを地域住民で調べた研究があり144),NSAIDs を使用している住民ではEDの罹患率が93/1,000人・年であるのに対して,使用していない住民では35/1,000人・年であった(有意差あり)。また,8万人の男性の前向きコホート試験では145),NSAIDs の使用による重症ED発症のオッズ比は1.38(95% 信頼区間:1.29〜1.47)であり,強く関連性がうかがわれる。
対処法としては,①経過観察:EDが自然に改善するのを待つ,②原因薬剤を減量もしくは中止する,③ED治療薬を追加する(PDE5阻害薬など),④休薬日を作る,⑤カウンセリングと教育,とされている146)。
高血圧自体もEDのリスクファクターであるが,降圧薬も薬剤性EDを起こすことがよく知られている136)。降圧薬によるED発症の機序としては,高血圧に合併する動脈硬化病変のために陰茎への血流が低下しているところに,降圧薬による降圧によりさらに陰茎血流が低下するためと考えられている137)。しかし,降圧薬の種類によりED発症の頻度が大きく異なることはこの理論からは説明できない。
358名の高血圧患者をIIEF で調査した研究によると138),降圧薬を投与されている患者(268名)は無投与の患者(91名)に比べ,有意にEDに罹患しており〔108名(40.4%)と18名(19.8%)〕,単剤投与の患者に比べ,2剤以上投与を受けている患者で有意にEDの罹患率が高かった(36.3% vs 46.7%)。また,利尿薬かβ遮断薬を投与されている患者のほうが,カルシウム(Ca)拮抗薬/ACE 阻害薬/アンジオテンシン受容体拮抗薬のいずれかを投与されている患者よりも有意にED罹患率が高かった。
アンジオテンシン受容体拮抗薬は勃起機能に保護的に働くことを示唆する研究がある。82名の高血圧患者に12週間ロサルタンを投与したところ,性的活動の頻度が投与前に比べ有意に上昇した139)。また1,889名の高血圧患者にバルサルタンを16週間投与したところ,性的活動の頻度が投与前に比べ有意に上昇した140)。一方,スウェーデンでの規制当局への副作用報告をまとめた報告によると141),1990〜2006年までの17年間の23,176件の副作用報告中225件(1%)がEDであり,その225件中59件(26%)が降圧薬によるものであった。報告された降圧薬は,β遮断薬,Ca 拮抗薬,ACE 阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,サイアザイド系利尿薬であり,アンジオテンシン受容体拮抗薬が処方件数当たりの報告が最多であった。
抗うつ薬に代表される精神科の治療薬もEDをしばしば発症させることが知られている136)。うつ病患者で問題なのは,EDを自分の欠点のようにとらえることが多く,それがさらに自分はダメな人間なのだという感情につながることである。また,患者がこの副作用を申告しないことが多く,服薬コンプライアンスの低下にもつながる136)。
前立腺肥大症に対する5α還元酵素阻害薬によるEDについて83-85)は4-8参照。前立腺癌に対する抗アンドロゲン薬によるEDについて142,143)は6-4参照。
非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)によるEDを地域住民で調べた研究があり144),NSAIDs を使用している住民ではEDの罹患率が93/1,000人・年であるのに対して,使用していない住民では35/1,000人・年であった(有意差あり)。また,8万人の男性の前向きコホート試験では145),NSAIDs の使用による重症ED発症のオッズ比は1.38(95% 信頼区間:1.29〜1.47)であり,強く関連性がうかがわれる。
対処法としては,①経過観察:EDが自然に改善するのを待つ,②原因薬剤を減量もしくは中止する,③ED治療薬を追加する(PDE5阻害薬など),④休薬日を作る,⑤カウンセリングと教育,とされている146)。
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