(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版
4
EDのリスクファクター
7
うつ症状
うつ症状とEDの関連は横断研究/縦断研究から明らかであり,しかもそれは双方向性である。
うつ症状があればEDの存在を疑い,EDがあればうつ症状の存在を疑うべきである。
〔推奨グレードB〕

古くから,夜間勃起現象(nocturnal penile tumescence: NPT)がうつ病患者では有意に減少していること65),またうつ症状の改善とともにNPT も回復することが知られていた66)。
しばしば引用するMMAS1)のデータをうつ症状に絞って検討した疫学調査がある67)。40〜70歳までの1,265名の地域住民を自己記入式のCenter for EpidemiologicalStudies-Depression(CES-D)で調査したところ,うつ症状によるED発症の調整後オッズ比は1.82(95% 信頼区間:1.21〜2.73)と強い相関があった。また,日本においても4都市に居住する40〜64歳までの男性1,419名を対象に,IIEF5で勃起機能を,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)でうつ症状を調べた研究がある68)。それによると,多変量解析による調整後オッズ比は2.02(95% 信頼区間:1.32〜3.08)であり,MMAS と同様に強い相関を認めた。
フィンランドのTampere 市における地域住民の5年間にわたる縦断調査がある69)。1994年と1999年に質問票(うつ症状はMental Health Inventory 短縮版で,30点満点の16点以上を中等度〜重度のうつ症状と判定)を送付し,両時点の調査に有効回答を寄せた1,380名の地域住民(ベースラインの1994年時点で50歳,60歳,70歳であったもの)を対象としている。フォロー中のED発症率は,ベースラインでうつ症状があった群では59/1,000人・年なのに対して,ベースラインでうつ症状がなかった群では37/1,000人・年であった。また逆に,フォロー中のうつ症状発症率は,ベースラインでEDがあった群では20/1,000人・年なのに対して,ベースラインでEDがなかった群では11/1,000人・年であった。したがって,EDとうつ症状とは双方向性があると考えられる69)。
また,Shabsigh ら70)は泌尿器科外来を受診したEDと前立腺肥大症(BPH)のどちらか,または両方を抱える100名の男性をPrimary Care Evaluation of Mental Disorders調査票とBeck Depression Inventory でうつ症状をスクリーニングし,EDだけの群,EDとBPH の併存群,BPH だけの群においてうつ症状を示す割合は,それぞれ54%,56%,21% であり,ED患者はBPH だけの患者に比べ2.6倍(p<0.005)うつ症状を示したとしている。
さらに,うつ症状と心血管疾患とEDの3者が共存しやすいことが指摘されており71),ED患者を外来にむかえた場合,うつ症状と心血管疾患の合併を念頭に置いた診療が求められる。
抗うつ薬によってEDが起こることはよく知られており69),薬剤性EDの項を参照されたい。治療に関しては,他の原因によるEDと同じくPDE5阻害薬が有効である72-74)。
* 付録4にDSM-IV-TR のうつ病診断基準を掲載
しばしば引用するMMAS1)のデータをうつ症状に絞って検討した疫学調査がある67)。40〜70歳までの1,265名の地域住民を自己記入式のCenter for EpidemiologicalStudies-Depression(CES-D)で調査したところ,うつ症状によるED発症の調整後オッズ比は1.82(95% 信頼区間:1.21〜2.73)と強い相関があった。また,日本においても4都市に居住する40〜64歳までの男性1,419名を対象に,IIEF5で勃起機能を,Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)でうつ症状を調べた研究がある68)。それによると,多変量解析による調整後オッズ比は2.02(95% 信頼区間:1.32〜3.08)であり,MMAS と同様に強い相関を認めた。
フィンランドのTampere 市における地域住民の5年間にわたる縦断調査がある69)。1994年と1999年に質問票(うつ症状はMental Health Inventory 短縮版で,30点満点の16点以上を中等度〜重度のうつ症状と判定)を送付し,両時点の調査に有効回答を寄せた1,380名の地域住民(ベースラインの1994年時点で50歳,60歳,70歳であったもの)を対象としている。フォロー中のED発症率は,ベースラインでうつ症状があった群では59/1,000人・年なのに対して,ベースラインでうつ症状がなかった群では37/1,000人・年であった。また逆に,フォロー中のうつ症状発症率は,ベースラインでEDがあった群では20/1,000人・年なのに対して,ベースラインでEDがなかった群では11/1,000人・年であった。したがって,EDとうつ症状とは双方向性があると考えられる69)。
また,Shabsigh ら70)は泌尿器科外来を受診したEDと前立腺肥大症(BPH)のどちらか,または両方を抱える100名の男性をPrimary Care Evaluation of Mental Disorders調査票とBeck Depression Inventory でうつ症状をスクリーニングし,EDだけの群,EDとBPH の併存群,BPH だけの群においてうつ症状を示す割合は,それぞれ54%,56%,21% であり,ED患者はBPH だけの患者に比べ2.6倍(p<0.005)うつ症状を示したとしている。
さらに,うつ症状と心血管疾患とEDの3者が共存しやすいことが指摘されており71),ED患者を外来にむかえた場合,うつ症状と心血管疾患の合併を念頭に置いた診療が求められる。
抗うつ薬によってEDが起こることはよく知られており69),薬剤性EDの項を参照されたい。治療に関しては,他の原因によるEDと同じくPDE5阻害薬が有効である72-74)。
* 付録4にDSM-IV-TR のうつ病診断基準を掲載