(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版
4
EDのリスクファクター
5
脂質異常症(高脂血症)
日本人では,脂質異常症はEDのリスクファクターとは言い難い。
コレステロール低下薬による薬剤性のEDに関しての関連は,むしろ勃起機能を改善するという報告と悪化させるという報告があるが,ともに論文のエビデンスレベルは低く,現時点では不明である。
〔推奨グレード保留〕

米国でのマネージドケアのデータベース(272,000名)を用いた調査では,ED患者の42.4% が脂質異常症を有していたとされる53)。やはり米国で,調査開始時にはEDでなかった3,250名を6〜48カ月間フォローした結果,総コレステロールの高値とHDL の低値がED発症のリスクファクターであった54)。一方,ボストンの地域住民1,899名(30〜79歳)を調査した研究〔Boston Area Community Health(BACH)Survey〕55)では,脂質異常症を総コレステロール値>240 mg/dL で定義し,IIEF5で勃起機能を評価すると,脂質異常症で無治療群が21.6,脂質異常症なし群で20.6と差がなかった。
わが国における疫学研究をみてみると,企業従業員とその家族を調査した研究(1,517名,脂質異常症は自己申告)4),慢性疾患のために通院中の患者を調査した研究(4,609名,脂質異常症は自己申告)5),人間ドックのデータを解析した研究(2,084名,総コレステロール値>220 mg/dL あるいはLDL 値>140 mg/dL を脂質異常症と定義)6),3つの研究すべてで脂質異常症とEDの関連を認めていない。また,隣国の韓国での疫学調査(1,570名)56)でも,総コレステロール値,HDL 値,LDL 値のいずれもED患者と健常者間で差を認めていない。したがって,脂質異常症に関しては,欧米人と日本人を含むアジア人種ではリスクファクターとしての寄与度が異なるのかもしれない。
さて,脂質異常症に対する薬物療法の勃起機能への影響に関して,総説57)によると,相反する報告がなされている。脂質異常症のみがEDのリスクファクターである少数例の患者(9名)にスタチン(アトルバスタチン)を投与した観察研究では,投与後にSexual Health Inventory for Men(SHIM)スコア が改善している。また,シルデナフィルにアトルバスタチン(12名)かプラセボ(12名)を上乗せしたランダム化比較試験(RCT)では,IIEF の勃起機能(EF)ドメインがアトルバスタチン群で有意に改善した。さらに,神経温存前立腺全摘術後の勃起機能回復をシルデナフィル単独群とアトルバスタチン併用群で比較した研究(50名)では,併用群で有意に早い回復を認めている。
一方,脂質異常症で外来を受診した患者を,薬物治療を受けていた群(339名)と受けていなかった群(対照群,339名)に分けED(NIH の定義による)の有無を調べたところ,薬物治療群では12.1%,対照群では5.6% と有意差(p=0.0029)をもって薬物治療群でEDを多く発症していた。また,心血管リスクの高い患者群(93名)にスタチンを6カ月間投与したところIIEF5が18.7から10.4に低下し,新たに22%の患者にEDが発生した。さらに,前述のBACH 研究55)でも,55歳以下で糖尿病か心血管疾患を有する患者では,脂質異常症治療薬はEDのリスクを上昇させた(オッズ比10.39,95% 信頼区間:3.25〜33.20)。
わが国における疫学研究をみてみると,企業従業員とその家族を調査した研究(1,517名,脂質異常症は自己申告)4),慢性疾患のために通院中の患者を調査した研究(4,609名,脂質異常症は自己申告)5),人間ドックのデータを解析した研究(2,084名,総コレステロール値>220 mg/dL あるいはLDL 値>140 mg/dL を脂質異常症と定義)6),3つの研究すべてで脂質異常症とEDの関連を認めていない。また,隣国の韓国での疫学調査(1,570名)56)でも,総コレステロール値,HDL 値,LDL 値のいずれもED患者と健常者間で差を認めていない。したがって,脂質異常症に関しては,欧米人と日本人を含むアジア人種ではリスクファクターとしての寄与度が異なるのかもしれない。
さて,脂質異常症に対する薬物療法の勃起機能への影響に関して,総説57)によると,相反する報告がなされている。脂質異常症のみがEDのリスクファクターである少数例の患者(9名)にスタチン(アトルバスタチン)を投与した観察研究では,投与後にSexual Health Inventory for Men(SHIM)スコア が改善している。また,シルデナフィルにアトルバスタチン(12名)かプラセボ(12名)を上乗せしたランダム化比較試験(RCT)では,IIEF の勃起機能(EF)ドメインがアトルバスタチン群で有意に改善した。さらに,神経温存前立腺全摘術後の勃起機能回復をシルデナフィル単独群とアトルバスタチン併用群で比較した研究(50名)では,併用群で有意に早い回復を認めている。
一方,脂質異常症で外来を受診した患者を,薬物治療を受けていた群(339名)と受けていなかった群(対照群,339名)に分けED(NIH の定義による)の有無を調べたところ,薬物治療群では12.1%,対照群では5.6% と有意差(p=0.0029)をもって薬物治療群でEDを多く発症していた。また,心血管リスクの高い患者群(93名)にスタチンを6カ月間投与したところIIEF5が18.7から10.4に低下し,新たに22%の患者にEDが発生した。さらに,前述のBACH 研究55)でも,55歳以下で糖尿病か心血管疾患を有する患者では,脂質異常症治療薬はEDのリスクを上昇させた(オッズ比10.39,95% 信頼区間:3.25〜33.20)。