(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版

 
3 EDの疫学

わが国のEDの有病者数は中等度EDが約870万人,完全EDが約260万人,あわせて約1,130万人と推定された。この疫学調査は1998年に施行されたものであり,人口の高齢化に伴って今後さらに有病者数は増えることが予測されている。
疫学論文のレビューによれば,現在,世界中の成人男性の5〜20% が中等度ないし完全ED注)であるとされている1)。また,人口動態のデータにマサチューセッツ男性加齢研究(Massachusetts Male Aging Study: MMAS)のED罹患率をあてはめることによって推定した世界のED患者数は,1995年時点では1億5,200万名で,これが2025年には3億2,200万名に倍増するとされている2)。特に人口増加が著しく,高齢化も進んでいるアジア地区での大幅な増加が予測されている2)。最近では,排尿症状と健康状態についてのコホート研究(Olmsted County Study)のなかで男性性機能についてまとめた報告がある3)。この研究では,ベースラインの平均年齢58.39歳の男性2,213名を1996年から2004年まで縦断的研究法で解析したところ,EDの頻度が加齢に伴って増加するが,この変化に教育レベルの差,喫煙,心血管系疾患の有無は影響を与えなかった。
わが国においては,MMAS4)と同形式の質問票を用いた疫学調査が1998年に行われた。調査対象の選び方は,住民基本台帳に基づいて,郵送訪問調査という形をとり,正確な統計調査が行われたので,全国規模での正確な有病者数の推定が可能となった。全国100地点で無作為に抽出された2,000名を対象に調査が行われ,55.2% の回収率であった。有病率は,MMAS と同様に年齢とともに上昇した。これらの有病率から30〜79歳の男性におけるEDの有病者数は中等度EDが約870万名,完全EDが約260万名,あわせて約1,130万名と推定された5)。とりわけ,高齢化の著しいわが国では,今後さらに有病者数は増えることが予測されている。
注) 患者本人による重症度分類である。簡単なEDの定義を解説した後,次の4つのうち,どれが自分の状態にあてはまるかを尋ねている。
・EDではない:「毎回,性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる」
・軽度ED:「たいていの場合,性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる」
・中等度ED:「時々,性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる」
・完全ED:「毎回,性交に十分な勃起が得られない。また,維持もできない」
という定義である。このような1つの質問でのEDの重症度分類は,有用性が確立しているIIEF(International Index of Erectile Function)6)による重症度分類ときわめてよく相関することが示されている7)
参考文献
1) Kubin M, Wagner G, Fugl-Meyer AR. Epidemiology of erectile dysfunction. Int J Impot Res 2003; 15: 63- 71(レベルI
2) Aytaç IA, McKinlay JB, Krane RJ. The likely worldwide increase in erectile dysfunction between 1995 and 2025 and some possible policy consequences. BJU Int 1999; 84: 50- 56(レベルIVb
3) Gades NM, Jacobson DJ, McGree ME, St Sauver JL, Lieber MM, Nehra A, Girman CJ, Jacobsen SJ. Longitudinal evaluation of sexual function in a male cohort: the Olmsted County Study of Urinary Symptoms and Health Status among Men. J Sex Med 2009; 6: 2455- 2466(レベルIVa
4) Feldman HA, Goldstein I, Hatzichristou DG, Krane RJ, McKinlay JB. Impotence and its medical and psychosocial correlates: results of the Massachusetts Male Aging Study. J Urol 1994; 151: 54-61(レベルIVb
5) 丸井英二.わが国におけるEDの疫学とリスクファクター.医学のあゆみ2002; 201: 397 -400 (レベルIVb
6) Rosen RC, Riley A, Wagner G, Osterloh IH, Kirkpatrick J, Mishra A. The International Index of Erectile Function(IIEF): a multidimensional scale for assessment of erectile dysfunction. Urology 1997; 49: 822- 830(レベルIVb
7) Derby CA, Araujo AB, Johannes CB, Feldman HA, McKinlay JB. Measurement of erectile dysfunction in population-based studies: the use of a single question self-assessment in the Massachusetts Male Aging Study. Int J Impot Res 2000; 12: 197- 204(レベルIVb

 


 
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