(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
7章 ケアおよび支援の体制
2.線維筋痛症のチーム医療と看護職
2.線維筋痛症のチーム医療と看護職
1.「痛み」とは
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痛みの定義を国際疼痛学会では「実際に何らかの組織損傷が起こったとき,または組織損傷を起こす可能性があるとき,あるいはそのような損傷の際に表現される,不快な感覚や不快な情動体験」1)と定義している。米国リウマチ学会(ACR:America College of Rheumatology)および日本線維筋痛症学会においては,線維筋痛症における痛みの定義は存在せず,線維筋痛症の診断指針が2010年に米国リウマチ学会によって示されており, わが国においてもその指針を検証している段階である。 |
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その指針に示されているように「疼痛=痛み」が線維筋痛症の主症状であり,痛みなくしては線維筋痛症の診断を行うことは不可能である。先述した「痛み」という定義に焦点をあてると,痛みが身体的感覚のみならず不快な情動体験と心の動きを伴うものであることが示されている2)。線維筋痛症の疼痛が機能性疼痛と称される痛みであることは広く認識されているが,心理社会的な苦痛が痛みを増幅させる一要因になっていることも同様に認知されている。これは「がん性疼痛」の特徴とよく似ている部分がある。がん性疼痛を増強させる因子として,表1のものが挙げられる。 |
表1 ![]() ![]()
(櫻井宏樹:がん性疼痛ケア完全ガイド.林 章敏,中村めぐみ,高橋美香子 編著,照林社,2010,p18を一部引用して作成)
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治療法の確立や確実な治癒・寛解の実証が少ない疾患である「がん」は,線維筋痛症と同様に見通しが立ちづらく,治療の行方が掴みづらい。そのため患者は不安に陥りやすい状況にある。治療法の確立がなく,治療の行方が不鮮明な状況は患者にとって大きな不安を抱かせる要素になりうる。その不安や葛藤が苦痛となり,身体の痛みを過敏に増幅させていることもある。不眠と痛みの関係のように,「心理社会的苦痛」と「痛み」が互いに刺激し合い悪循環のスパイラルのようになってしまうのである。 |
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しかし逆に,がん性疼痛を和らげる状況も存在する。がん性疼痛を減弱させる因子
として表2のものが挙げられる。 |
表2 ![]() ![]()
(櫻井宏樹:がん性疼痛ケア完全ガイド.林 章敏,中村めぐみ,高橋美香子 編著,照林社,2010,p18を一部引用して作成)
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「痛み」というものを,身体的症状だけでなく心理社会的な側面から全人的にとらえ,アプローチ(関わる・ケア)していくことが必要となっていく。 |