(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
7章 ケアおよび支援の体制
1.公的保障制度の解説

3.障害者制度の活用
arrow 障害者サービスを利用するには,まず身体障害者手帳・精神障害者福祉手帳等の手帳の取得が必要である(高次脳機能障害で手帳の取得ができない場合は,医師の意見書)。
arrow 手帳制度はそれぞれの障害についての法律により別々に定められているため,障害に応じて対応する必要がある。「指定医」は,手帳を申請するために必要な診断書を作成できる医師のことで,身体障害では,肢体,視覚,聴覚など各障害部位によって決められている。
arrow 「線維筋痛症」のような機能性疾患については,四肢の切断,脊椎損傷,脳卒中による麻痺,関節リウマチのような器質性疾患と異なるため,実際,身体障害者手帳の認定については,「非該当」と判断される事例が多いと言われている。市区町村の障害福祉担当課へ申請した書類・診断書は,都道府県に設置されている「身体障害者更生相談所」等で身体障害者手帳の対象かどうか審査され,さらに審査が困難な場合や障害に該当しないと思われるケースは,地方の社会福祉審議会で審議されるしくみとなっている。
arrow 判定結果は,文書にて申請者に通知される。認定結果の内容に不服がある場合は,再審査請求を行うことができる(通知書におそらく明記されている)。まずは,市区町村への相談・審査するための手続き方法を確認して頂きたい。なお,再審査請求する場合,通知を受けてから60日以内など申立てに日数の制限があるので注意が必要である。

1)手帳の申請と取得
♦身体障害者手帳の取得
対象:肢体(上肢・下肢・体幹),視覚,聴覚,平衡機能,音声言語機能,そしゃく機能,内部機能,免疫機能に障害があり,一定以上の期間,永続する状態。
手帳の等級:1〜7級(7級は手帳の発行なし)
申請方法:診断書,写真,印鑑を準備し,診断書(所定様式あり)については,指定医のみ作成可能。居住地の市区町村の障害福祉担当課へ提出し,申請する。
♦精神障害者福祉手帳の取得
対象:「精神障害」のため長期にわたる日常生活,社会生活に制限のある人。ただし初診から6カ月以上経過していること(療育手帳の対象となる知的障害者は除く)。
手帳の等級:1〜3級
申請方法:申請書,医師の診断書または障害年金受給者は年金証書の写しと改定通知書,印鑑を準備し,居住地の市区町村の福祉課もしくは保健所へ提出し,申請を行う。2年ごとの更新となる。

2) 障害者サービスの内容と利用方法
arrow 身体・知的・精神の障害ごとに異なっていた福祉サービスを一元化することを目的に「障害者自立支援法」が2006年(平成18)年4月より実施されている。利用者負担については,原則1割の定率負担となり,低所得者には所得段階別に負担限度額の上限が設定され,負担の軽減が図られている。なお,「障害者自立支援法」については,2013年(平成25年)8月までに現行制度を廃止し,「障害者総合福祉法」への移行が検討されている。また,2010年(平成22年)4月から当面の措置として,低所得(市町村税非課税世帯)の障害者および障害児の保護者につき,障害者自立支援法及び児童福祉法による障害福祉サービス及び補装具にかかる利用者負担を無料とする措置がとられている。
<利用手順>
(ア)申請
サービス利用の開始にあたっては,利用者自身が居住する市区町村障害福祉担当課または相談支援事業所を通じて申請を行う。
(イ)区分認定
サービス利用にあたっては,障害者福祉サービスの必要性を明らかにするため,障害者の心身の状態を総合的に表す「区分」の認定が必要となる。市区町村がサービスの種類や量を決定する際に勘案する事項のひとつとなる。区分1〜6(軽〜重度)により認定される。流れとしては,全国一律の認定基準による一次判定と市区町村審査会による二次判定があり,一次判定では,要介護認定調査項目(79項目),障害者項目(27項目)から判定され,障害者項目については,障害の特性に応じた質問内容となっている。図1に示す訓練等給付の場合は,一次判定のみで決定されるが,介護給付と訓練給付の一部については,二次判定まで受ける必要がある。認定結果は,利用者または相談支援事業所に通知される。

図1
図1  障害者自立支援法の体系
(出典:図説 よくわかる障害者自立支援法.第2版,2008,中央法規)

(ウ)サービス利用の調整
認定を受けたのち,その基準内に定められた範囲で,希望するサービスについて,相談支援事業所および市区町村障害福祉担当課と相談しながら調整し,「サービス利用計画書」を作成し,利用する。
(エ)サービスの種類
「介護サービス(介護給付)」「訓練等サービス(訓練給付)」「補装具」などの自立支援 給付と「地域生活支援事業」がある。体系については,図1の通りである。障害の内容,認定区分によって利用制限があるサービスがあり,入所施設を利用する場合は,日中活動と居住(夜間)にサービスがわかれる。
arrow 障害者サービスの内容は,下記の通りである。
  • 「介護サービス」:居宅介護(ホームヘルプ)による身体介護,家事援助,通院介助を伴う訪問介護,重度訪問介護,行動援護,重度障害者包括支援,児童デイサービス,短期入所(ショートステイ),療養介護,生活介護,施設入所支援,共同生活介護(ケアホーム)(表3参照)。
  • 「訓練等サービス」:自立訓練(機能訓練・生活訓練),就労移行支援,就労継続支援(A型,B型),共同生活援助(グループホーム)など(表4参照)。
  • 「補装具」は,身体機能を補うための歩行器,車いすなどの用具であるが,障害部位や等級,所得に応じて制限もあるため,市区町村障害福祉担当課への相談と申請を進める必要がある。
  • 「地域生活支援事業」は,相談支援事業,コミュニケーション支援事業,日常生活用具給付事業,移動支援事業,地域活動支援センター事業など市区町村単位で実施されている必須事業と福祉ホーム事業,訪問入浴サービス事業など任意事業がある。

表3 介護サービス(介護給付)
表3

表4 訓練等サービス(訓練等給付)
表4

3)経済面にかかわるサービス内容
arrow 身体障害者手帳等の取得による経済面における支援・給付に関して,障害内容や手帳の等級,所得や市区町村によってサービス内容や基準が異なり,申請する窓口も様々である。居住地域についての情報を整理し,対象となるか検討する必要がある。
arrow 具体的な内容としては,一例として,鉄道・バス・タクシーなどの交通運賃の割引,有料道路の割引,障害者自動車運転免許取得費・改造費の助成,駐車禁止除外指定車標章の交付,自動車税の免除,所得税,市県民税の控除,NHK放送受信料の減免,携帯電話の割引,特別障害者手当の支給(要件を満たす在宅生活者のみ),「自立支援医療」(障害の種類や所得により制限あり)の利用,障害者医療費助成制度の利用,日常生活用具の給付,住宅改修費の支給などがある。手帳の等級,所得など,対象となる範囲がそれぞれ違うため,詳しくは,お住まいの市区町村の障害福祉担当課等へ相談が必要である。精神保健福祉手帳によるサービスについても様々あり,活用については,お住まいの福祉課・保健所等へご確認頂きたい。

 

 
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