(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
7章 ケアおよび支援の体制
1.公的保障制度の解説
1.公的保障制度の解説
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2010年3月に発行された「線維筋痛症診療ガイドライン2009(厚生労働省研究班)」で示されている通り,全国に線維筋痛症患者は約200万人と言われている。近年,各種マスメディアにたびたび紹介され,医療機関へ相談される患者数も増加していることで,「線維筋痛症」という病名は,少しずつではあるがわが国でも認知されてきている。 |
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しかしながら,いまだ原因が解明されていないことや身体面の多彩な症状,外因的・心因的ダメージによる精神面の症状が表出する中で,ケアの体制,支援内容がその個別性もあることで,確立されていないのが現状である。私自身,医療機関の医療ソーシャルワーカーとして,主に入院患者への相談支援を行っているが,個々の患者の身体状況や生活・社会環境は様々である中で,どのように制度を組み合わせて,活用していくのか日々悩みも多くあるが,ここでは,公的保障制度をご紹介していきたい。 |
1.医療制度の活用
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医療費に関わる公的支援に関しては,医療保険制度や後期高齢者医療制度によるもの,障害者自立支援法による自立支援医療,身体障害者手帳,精神保健福祉手帳の交付による医療費助成制度などがある。医療保険の種類は,国民健康保険,協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険),公務員共済保険,私立学校教職員共済組合,船員保険などがある。 |
1)医療費が高額になった場合の自己負担の軽減 | |
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同じ病院や診療所で支払った1カ月の医療費の自己負担額(外来・入院費)が限度額を超えた場合,高額療養(医療)費として還付される。年齢により内容が変わるが,下記の通りとなる。 |
(ア)70歳未満の場合(表1参照) | |
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世帯の収入に応じて上位所得者,一般,低所得者(住民税非課税世帯)に分類され,限度額の違いがある。外来の場合は,自己負担額の上限を超えても,窓口での支払いはそのまま行い,後日申請により還付を受ける。なお,表1の中の「4回目以降」については,過去12カ月間に高額療養費の支払い回数が4回以上となった場合の4回目以降の上限金額である。また,同一月に21,000円以上の窓口負担が世帯で2件以上あった場合,それぞれの自己負担金を合算して自己負担限度額を超えた場合も同様に還付を受けることができる。ただし,70歳以上の方がいる世帯では,計算方法が異なる。 |
表1 ![]() ![]() |
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入院の場合,「負担限度額適用制度」を活用することで,高額療養費の自己負担限度額(保険適応分)のみ支払うことが可能となる(差額ベッド料金,食費等は保険適応外)。申請については,各保険事務所,国民健康保険の場合は,市区町村役場の国民健康保険担当課となる。 |
(イ)70歳以上の場合(表2参照) | |
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世帯の収入に応じて,現役並み所得者,一般,低所得者I・IIに分類される。 |
表2 ![]() ![]() |
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入院と外来で自己負担限度額が異なる。外来は,自己負担分を一度支払い,自己負担分を超えた分の申請を行う。入院は自己負担限度額(保険適応分:世帯単位)の範囲の支払いとなる。世帯単位で入院と外来が複数あった場合は,自己負担額を合計し,負担限度額を超えた場合,申請により超えた分の還付を受けることができる。 |
2)後期高齢者医療制度 | |
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後期高齢者医療制度の対象者は,75歳以上もしくは65歳以上で一定の障害を有する方である。外来,入院の医療費の自己負担額については,表2の通りとなる。収入に応じて,一定以上所得者,一般,低所得者I,IIにわけられる。なお,低所得者I・IIについては,市区町村役場での限度額適用認定証の交付を受ける必要がある。 |
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外来では,自己負担限度額の上限額を超えても,医療機関での窓口では,そのまま請求され,後日超過分が還付される。入院の場合,保険適応分については,入院医療費の上限額での請求となる。なお,現行制度については,廃止も含め現在見直しが行われている。今後の動向を見守る必要がある。 |
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また,「高額医療・高額介護合算制度」「高額療養(医療)費貸付制度」もある。詳しくは,国民健康保険については,市区町村の国保担当窓口,被用者保険は各事業所の窓口へ問い合わせ,医療機関の担当者への相談が必要である。 |