(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
6章 小児の線維筋痛症の診療と治療

5.小児線維筋痛症の治療
arrow 若年性線維筋痛症の疼痛に対する薬物治療薬としてNSAIDs*が用いられる。しかし効果に乏しい。本症に対する特異的な治療薬としてノイロトロピン®*が用いられることが多いが,効果についてのエビデンスはない。ノイロトロピン®の静注薬は短期的な疼痛の軽減のために用いられることがある。
arrow 成人例では様々な薬物療法が試みられており,SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬),SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)などの抗うつ薬による有効性が報告されている。しかし,若年性線維筋痛症例では成人例と異なり,抗うつ薬や,ガバペンチンといった薬物は適応年齢や副作用の問題があり導入が困難で,少数例の検討では有効性は低い。最近,プレガバリン*,トラマドール*,ミルタザピン*などの新薬も開発されているが,小児例については,使用するのであれば組織的に治験を行うべきである。
arrow 一方で,薬物に頼らず小児科外来で医療面接を繰り返し,児童精神科を併診して心理・精神的なアプローチを行い,症状の改善,消失を得られる期待がある6)。極端な例では,“若年性線維筋痛症”という診断がついたことに安堵して,すべての症状が初回受診後消失してしまう症例もある7)
arrow 若年性線維筋痛症の症例に対しては,“病気⇔くすり”の考え方は払拭して取り組むべきで,まずは患児と目線を合わして話を聴くという基本姿勢が大切である。発症背景に家族,特に母親の存在が関わっていると察せられたような場合,生活環境からの一時的遮断を意図した入院措置が効果的であることがある。ただし,入院に際してはいくつかの条件がある。入院は2〜3週間の短期入院とし,この間家族の面会は一切断る。一方で,院内学級に転校して教師や他の入院病児との積極的な交流ができるように環境を整えて病児に新しい環境を提供する。病棟スタッフおよび看護チームと協議を行い,疼痛に関する話題を避けることを申し合わせ,また病棟の日課(食事の時間,シーツ交換,入浴時間,就眠時間など)に従わせる。車椅子を使用していたり,杖を用いていたりする病児の場合には,リハビリテーション科と相談し適切なプログラムを用意する。

生活環境からの一時的遮断を狙った入院措置
  • 母子分離・環境分離を図る
  • 入院は2〜3週間とし,この間家族の面会は断る。携帯電話も禁止する。
  • 病棟スタッフおよび看護チームと協議を行い疼痛に関する話題を避けることを申し合わせる
  • 段階的にリハビリテーションを開始する
  • 院内学級で教師および他の病児との交流を図る

arrow 睡眠障害に対する対応は困難ではあるが,メラトニンや短時間作用型の睡眠導入薬の併用が有効な場合もあり,十分な睡眠が確保されるに従い,疼痛の改善を期待できる例もある。睡眠障害に関しては,小児の慢性疲労症候群にみられるような辺縁系の生体リズム障害と共通する病態が推察される8)

 

 
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