(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
5章 治療
5b.非薬物療法:認知行動療法(CBT),精神療法,心理療法

精神療法
エビデンスI 推奨度B
arrow Glombiewskiら1)による23の線維筋痛症に対する精神療法の研究のメタ解析では,1396症例で平均7.4カ月間施行された精神療法の解析結果で,精神療法は,睡眠の問題,抑うつ,機能面,catastrophize(些細なことを大惨事のように言うこと)に有効であったと報告している。
arrow 各精神療法については以下に記す。

認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)
エビデンスI 推奨度B
arrow これまで,いくつかの論文で線維筋痛症に対するCBTの有効性は報告されているが,14の線維筋痛症に対するCBTを施行されたランダム化試験のメタ解析で,910症例で平均9週間(5〜15週)施行されたCBTは,抑うつと痛みの自己評価に有効であり,疲労感,睡眠,健康の質での有効性は認めなかったと報告2)されている。また,前述の23の精神療法の研究のメタ解析において, 他の精神療法と比較して,CBTの有効性が報告1)されており,推奨される。しかし,CBTを行っている施設が少なく,1回あたりの治療に時間もかかるため普及には時間がかかるであろう。

オペラント条件付け行動療法(operant-behavioral therapy:OBT)
エビデンスIIa 推奨度B
arrow Thiemeら3)は線維筋痛症125症例でCBTとOBTと対象群(セッションに参加はするが,特別な指導は与えられないattention-placebo)のランダム化試験で,CBTとOBTは疼痛を軽減したと報告している。また前述の線維筋痛症に対する精神療法のメタ解析で,OBTは受診回数の減少を認めたと報告1)されている。

エデュケーション療法
推奨度A
arrow Hammondら4)は線維筋痛症133症例を対象にエクササイズ教育法とリラクセーション法のランダム化試験を4カ月間施行し,エクササイズ教育法のほうがリラクセーションよりも改善したが,効果は8カ月後まで持続しなかったと報告している。

リラクセーション
エビデンスIIb 推奨度B
arrow Ruccoら5)は,線維筋痛症53症例を自主トレーニング群と,エリックソン法をまねる群にランダム化し,エリックソン法が有意に疼痛と睡眠を改善したと報告している。一方,Castelら6)は鎮痛をイメージさせた催眠療法のほうが,リラクセーション法よりも有効であったと報告している。

電気痙攣療法(electroconvulsive therapy:ECT)
エビデンスIV 推奨度C
arrow 線維筋痛症に対してECTの研究は少ないが,臼井ら7)は重症の線維筋痛症15例で13例に有効であったと報告している。これに対しHuuhkaら8)はうつ病を合併している線維筋痛症では無効であったと報告しており,今後さらなる研究が必要だろう。
arrow ECTは精神科専門療法であり,事前に精神科医と治療に適応するか十分精査した上で慎重に判断すべきである。

 

 
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