(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
5章 治 療
4c.薬物療法:線維筋痛症に伴う不眠,うつ状態の薬物治療
4c.薬物療法:線維筋痛症に伴う不眠,うつ状態の薬物治療
2.線維筋痛症に伴う不眠の非薬物療法
成長ホルモン* | |
推奨度C
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Bennettら17)は線維筋痛症の3分の1でInsulin-like growth factor 1(IGF-1)が低値を示し,しかもIGF-1低値例に対してgrowth hormone(GH)の注射が有効であると報告している。GHは深睡眠期に放射状に分泌されるホルモンであることが知られているが,GH分泌低下と睡眠構造の関係を詳細に検討することも,病態研究に貢献しうるものと考えられる。ただし,副作用として手根管症候群なども出現するため,十分検討した上で投与することが望ましい。 |
経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal continuous positive airway pressure:n-CPAP) | |
エビデンスIV 推奨度C
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線維筋痛症では,睡眠時無呼吸が多発するとの報告18)がある。Goldら19)は,線維筋痛症において,上気道抵抗症候群を思わせる睡眠中の呼吸気流抑制(air flow limitation)の存在を指摘し, これに対し経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal continuous positive airway pressure:n-CPAP)が有効であると報告している。睡眠中の呼吸障害が線維筋痛症の中途覚醒多発と関連しているという仮説は魅力的だが,これに対し否定的な報告20)もあるので,今後さらに系統的な検討が必要だろう。 |
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本疾患患者数が非常に多いことを考えると,全例で終夜睡眠ポリグラフィー(polysomnography:PSG)を実施するのは,労力の点から無理があるため,アクチグラフィー(actigraphy)で睡眠・覚醒の定量評価を行う方法も用いられている。 |
睡眠障害に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy for insomnia:CBT-I) | |
エビデンスIIa 推奨度B
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不眠治療において近年その有効性が確立されてきているCBT-Iも,線維筋痛症での不眠に対して試みる価値があるものと期待されている21)。しかし,日本でCBT-Iの技術を取得している者が少ないことや,治療に時間がかかることから,すぐに実用化されるのは望めない状況である。 |