(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
5章 治 療
4c.薬物療法:線維筋痛症に伴う不眠,うつ状態の薬物治療

1.線維筋痛症に伴う不眠の薬物療法
arrow 線維筋痛症の約8割は睡眠障害を伴うとの報告もあり1),線維筋痛症と睡眠障害の因果関係を明らかにすることが,本病態の解明にも重要であると考えられている。
arrow 主症状である疼痛の次に多いのが睡眠障害(特に不眠)で,患者は熟眠障害と,疼痛より中途覚醒するという特徴的なパターンを示すことが多い。Affleckら2)は浅眠と痛みの相関を報告しており,Lentzら3)もslow wave sleepが減ると痛みが増強すると報告している。また,睡眠障害の改善に伴い疼痛が改善することが少なくないことから,睡眠障害が疼痛の重要な増悪因子であるという仮説4)も立てられている。また,線維筋痛症では,睡眠脳波中にα波の混入するalpha sleepやalpha-delta sleepが多発するとの報告が多く5),Rainら6)はalpha sleepは慢性疼痛に共通した所見であると報告している。
arrow また線維筋痛症にはむずむず脚症候群を夜間に発症することが高率にあることも示され7),不眠の原因の1つともなっており,線維筋痛症の64%に合併を認めるとの報告もある8)。むずむず脚症候群の治療薬の線維筋痛症への有効性の報告もあり,ドーパミンとの関係を検討することも必要であると示唆される。

プレガバリン*
エビデンスI 推奨度B
arrow プレガバリンの線維筋痛症に対するプラセボ対照二重盲検無作為化試験では,プレガバリン300mg/日と450mg/日の投与群にて睡眠の質が有意に改善していたと報告されている9)。また,4つの線維筋痛症に対するプレガバリンのランダム化試験の2754症例のメタ解析においても,疼痛と睡眠の改善を認めたとの報告10)があり,睡眠障害を伴う線維筋痛症には大いに推奨される。

アミトリプチリン*
エビデンスI 推奨度B
arrow Nishishinyaら11)は10の線維筋痛症に対するアミトリプチリンのプラセボ対照二重盲検無作為化試験のメタ解析にて,アミトリプチリンの25mg/日以上の用量および,8週以上の長期における有効性は認めないと報告したが,Häuserら12)は,10の線維筋痛症に対するアミトリプチリンのプラセボ対照二重盲検無作為化試験(612症例),4つの線維筋痛症に対するデュロキセチンのプラセボ対照二重盲検無作為化試験(1411症例),5つの線維筋痛症に対するミルナシプランのプラセボ対照二重盲検無作為化試験(4129症例)のメタ解析にてアミトリプチリンのほうがデュロキセチンとミルナシプランよりも,疼痛軽減,睡眠障害,疲労感,健康に関する生活の質において有効であったと報告している。

ガバペンチン*
エビデンスIIa 推奨度B
arrow プレガバリン同様,線維筋痛症に対するガバペンチンのプラセボ対照二重盲検無作為化試験では痛みだけでなく睡眠も改善したとの報告13)があり,疼痛と睡眠障害の両方に対しての治療が可能となるため,推奨される。

デュロキセチン*
エビデンスI 推奨度B
arrow デュロキセチンのプラセボ対照二重盲検無作為化試験では,530症例で24週間,デュロキセチン60〜120mg/日(60mg/日,90mg/日,120mg/日)の投与群にて睡眠困難が有意に改善したとの報告14)があり,線維筋痛症の疼痛と睡眠障害の両方に対しての治療が可能となるため,推奨される。

トラゾドン*
エビデンスIV 推奨度C
arrow Morillasら15)はトラゾドンのオープン試験において,66症例で12週間,50〜300mg/日のflexible dose設定で,きわめて有意に睡眠の改善を認めたと報告している。またトラゾドンの大うつ病の睡眠障害への有効性の報告16)は以前より多くあり,睡眠障害を伴う線維筋痛症への投与は推奨される。


 

 
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