(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
5章 治療
4a.薬物療法:神経因性疼痛改善薬と副症状,合併症に対する治療

2.線維筋痛症の合併症および副症状に対する治療薬
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
エビデンスIV 推奨度C
arrow 線維筋痛症の分類基準では,1次性と2次性のものが区別なく分類される13)。このことから実際の診療では,線維筋痛症の診断基準を満たすものの中には,血清反応陰性脊椎関節炎(seronegative spondyloarthropathy:SNSA),多発性付着部炎(polyenthesitis),胸肋鎖骨異常骨化症(sterno-cost clavicular hyperostosis)等の合併例がみられる。これらの症例では,NSAIDsが有効な例が多く存在する。また,1次性の線維筋痛症でも経験的に使用されている。治療が長期に及ぶため,胃腸障害の少ないプロドラッグであるロキソプロフェン(ロキソニン®*や胃腸障害の軽減と腎保護作用のあるCOX-2選択性阻害薬であるセレコキシブ(セレコックス®*,エトドラク(オステラック®,ハイペン®*などが使用される。NSAIDsによる胃十二指腸の粘膜障害は自覚症状がないこともあるため注意を要する。

ステロイド*
エビデンスV 推奨度C
arrow NSAIDsの使用理由と同じで,血清反応陰性脊椎関節炎,多発性付着部炎の合併例では,少量のステロイドとして,PSL(プレドニゾロン)の10mg/日以下の内服や局所のステロイド注射が有効なことがある。しかし,長期の使用では,副腎皮質の抑制や骨粗鬆症などが問題である。

抗リウマチ薬:サラゾスルファピリジン
エビデンスV 推奨度B
arrow サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN錠®* は,潰瘍性大腸炎や関節リウマチでも効能が認められているが,様々な血清反応陰性関節炎の関節症状にも有効である。線維筋痛症に合併した血清反応陰性脊椎関節炎(特に乾癬性関節炎,反応性関節炎,炎症性腸疾患に伴う関節炎),多発性付着部炎などでは,アザルフィジンEN錠®を500〜1000mg/日投与する。本剤使用時にはアレルギー反応の副作用(発疹,悪心・嘔吐,肝障害,発熱)に注意を要する。特にサルファ剤やサルチル酸製剤に過敏症のある患者は投与禁忌である。

ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®*, 塩酸セベメリン(エポザック® ,サリグレン®*
エビデンスIII 推奨度B
arrow ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®)はムスカリン受容体のM3に選択的に作用し,シェーグレン症候群の唾液分泌を亢進させ, 涙液の分泌亢進作用も持つ薬剤である。塩酸セベメリン(エポザック®,サリグレン®)は唾液分泌作用のみ認められる。線維筋痛症では,半数以上の患者にドライアイ,ドライマウスを伴っているが,シェーグレン症候群にみられる抗SS-A抗体や抗SS-B抗体の陽性例や唾液腺への著明なリンパ球の浸潤例は少ない。しかし経験上,ピロカルピン塩酸塩(サラジェン®)は線維筋痛症の乾燥症状に有効であり,少量の2.5〜5mg/日(就寝前)より投与を開始する。副作用は,発汗が最も多く,その他に下痢,頻尿,頭痛,ほてり等である。

下痢型過敏性腸症候群治療薬(ラモセトロン塩酸塩:イリボー®*
推奨度B
arrow 線維筋痛症には,高頻度で過敏性腸症候群が合併するが,下痢型の同症では,ラモセトロン塩酸塩(イリボー®)が有効である。本剤は,現在のところ男性例のみの保険適応であるが,今後女性例にも適応拡大の予定である。便秘型の症例では,かえって便秘を悪化させる可能性があり,注意を要する。1日にラモセトロン塩酸塩として5μgの1錠を1回投与するが,今後の症例の集積が必要である。

 

 
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