(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
5章 治療
3.精神科的アプローチによる治療の導入

3.線維筋痛症における精神疾患治療の必要性
arrow 疾患概念と診断については,他稿に詳しいため,ここでは述べないが,実際の臨床現場において精神科的な治療アプローチが必要な線維筋痛症患者は多く存在し,実際にその治療が奏効することもよく認められる。現時点で,線維筋痛症を中心とした患者群を診断・治療する診療科は存在せず,リウマチ専門医を中心とする整形外科,精神科や心療内科などの精神科領域,ペインクリニックなどの麻酔科領域,免疫内科などの診療科で対応している。本ガイドラインでは,線維筋痛症は筋緊張亢進型,腱付着部炎型,うつ型の3つのクラスターに分類されるとしているが,前2者は主に整形外科の専門領域に最も近く,うつ型は精神科領域に最も近いと考えられる。また,疼痛そのものは麻酔科領域が最も近く,よく鑑別診断や合併症として問題となる自己免疫疾患は整形外科や免疫内科がカバーする領域である。
arrow つまり,理想的な線維筋痛症の専門医はそれぞれの診療科の専門医である必要があるが,これらすべての診療科の研修を積みその専門家となるためにはひとつの診療科において一人前になる必要があり,それには通常10年以上の経験が必要であることから,現実的には不可能である。よって,関係するすべての診療科においてその専門性を活かした上で,連携して治療に当たることが現時点では最もよいと考えられる。線維筋痛症の専門家には整形外科医が多く,それは3つのクラスターのうち2つを主にカバーすることから妥当であるが,残りのクラスターであるうつ型をカバーすべき精神科医が線維筋痛症患者を診る医師として関与することは稀である。線維筋痛症患者において,これらのクラスターの重複が認められるものは非常に重症であることが知られており,このような点からも精神科医の関与が必要とされる。

 

 
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