(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
4章 鑑別診断
5.線維筋痛症と精神疾患の鑑別

5.線維筋痛症症状と身体表現性障害,疼痛性障害との関連
arrow 線維筋痛症症例の診察を精神科医に依頼したら身体表現性障害と診断されたという身体科の医師の話をしばしば耳にするが,これには問題がある。第一に身体表現性障害というのはいくつかの疾患を含むカテゴリーの呼称であり,診断名ではない。診断名として取り上げるのは誤用である。第二に,もし身体表現性障害に含まれる疾患として診断するなら,持続性身体表現性疼痛障害や疼痛性障害である。しかし持続性身体表現性疼痛障害や疼痛性障害では痛みの原因に精神面が多かれ少なかれ関係しているとされ,同じ痛みに対して線維筋痛症という身体疾患と精神疾患両方の診断をつけるのは不適切である。
arrow 持続性身体表現性疼痛障害や疼痛性障害は精神疾患の診断基準に改訂が加えられるたびに微妙に内容が変化する病名であるため,診断基準に記載された内容に従って診断するしかない。診断において重視すべき点は「身体疾患の重症度のわりに痛みの自覚が強すぎないか」と「痛みのわりに社会的機能(仕事,学業など)が低下しすぎてないか」であろう。
arrow 精神疾患として記載される疼痛性障害には特定の薬剤が有効であるというエビデンスがほとんどないが,線維筋痛症には薬剤が有効であるというエビデンスがあるので,このため,もし同じ病態をみているとしても,線維筋痛症のほうが診断として価値があるのではないかという議論がある。薬剤の有効性のみを臨床単位の意義とするのは議論があるにしても,疾患をわざわざ身体と精神に分けて議論する必要はなく,また治療法の有無は臨床単位の意義を示す重要な要因であるため,このような視点での検討は今後続けていく必要がある。

 

 
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