(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
4章 鑑別診断
4.線維筋痛症と神経内科的疾患の鑑別

2.アイザックス症候群
1)概要
arrow アイザックス症候群は,全身性の筋肉のピクツキ,こむらがえり,筋硬直,手指の開排制限などの筋収縮後の弛緩困難(neuromyotonia)を特徴とし,これらの筋症状は運動負荷・虚血・寒冷刺激などで増強する。筋肥大を起こすこともあり,また筋痙攣が強い場合は,その筋に筋力低下をきたすこともある。発汗過多を中心とした自律神経症状も30〜50%の症例で認められる。通常はこのような運動症状が主であるが,異常感覚や局所的な痛みを伴う症例の報告も認められる。
arrow 筋電図検査で,ミオキミア放電とニューロミオトニア放電が観察され,これらの自発放電の起源は,末梢神経と考えられている。アイザックス症候群では,電位依存性K+チャネル(voltage-gated potassium channel:VGKC)に対する抗体(抗VGKC抗体)の存在が確認されている。末梢神経の興奮性は,Na+電流が活動電位を発生させ,K+電流で再分極させている。抗VGKC抗体がVGKCに結合することで,K+電流量が低下し,末梢神経の興奮性亢進が起こり,筋収縮後弛緩困難などの症状が起こると理解されている3)

2)鑑別のポイント
arrow 筆者らは,全身性の慢性疼痛を示す線維筋痛症患者において筋肉のピクツキ,こむらがえり,筋硬直,時に筋肥大を示す一群が存在することを報告しており,これらの症状は線維筋痛症患者でしばしば認められる。しかしながら,アイザックス症候群は一般的には線維筋痛症のような全身性の慢性疼痛を示さない。部分的に痛みを伴っていても,筋肉の症状が主である場合はアイザックス症候群を疑い,筋電図検査の施行が望まれる。また,アイザックス症候群は抗VGKC抗体が陽性である場合が多いが,筆者らの検討では線維筋痛症患者においても抗VGKC抗体が陽性である場合が認められ,今後の検討が必要である。

 

 
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