(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
4章 鑑別診断
1.線維筋痛症とリウマチ性疾患の鑑別
1.線維筋痛症とリウマチ性疾患の鑑別
4.SAPHO症候群
![]() |
強直性脊椎炎を代表的疾患とする脊椎関節炎の疾患群には皮膚疾患との関連が深いものがある。掌蹠膿疱症(pustulosis),重症痤瘡,および,乾癬などに関連した関節炎を言う。今回,脊椎関節炎とは項を別にして示した。 |
概要 | |
![]() |
SAPHOとはsynovitis, acne, pustulosis, hyperostosis,osteitisの頭文字を並べたものである。掌蹠膿疱症では特徴的な手掌あるいは足底の皮疹が認められる。末梢関節炎のほかに胸鎖関節炎を示すことが多く,脊椎あるいは仙腸関節炎など軸性の関節炎も出現する。X線所見では胸肋鎖骨の異常骨化像がみられることもある。園崎15)が掌蹠膿疱症性骨関節炎として発表してから注目されるようになった。X線像のみではなく,外見上でも胸鎖関節の腫脹が確認されることがある。皮膚症状あるいは関節炎のどちらが先行するかについては定説がないが,Hayemら16,17)の23年間,120例(男性50例,女性70例)の調査では皮膚症状が先行した症例は39%,関節症状が先行した症例が32%,同時期であった症例が29%であった。また,皮膚症状は84%にみられ,掌蹠膿疱症32%,尋常性乾癬10%,重症痤瘡18%,掌蹠膿疱症と尋常性乾癬の合併18%,重症痤瘡,掌蹠膿疱症,尋常性乾癬の3者の合併が7%と報告している。 |
鑑別のポイント | |
![]() |
診断と鑑別の要点:脊椎関節炎のヨーロッパ分類基準などをもとに,脊椎関節炎の診断も同時に下されるべきである。手掌あるいは足底部に掌蹠膿疱症などがある場合は比較的容易に診断がつくが,皮疹の時期との間隔が数年以上開いていると関連に気づかれないことがある。腰背部痛,あるいは四肢関節痛が出現し,胸鎖関節を主に胸肋鎖骨部に疼痛あるいは腫脹が出現する。胸鎖部に骨性膨隆がみられることもある。 |
![]() |
皮膚病の中でも痤瘡はよくみられるものであるが, 重症の痤瘡では関節炎をきたす。時には四肢の腫脹が著しく,化膿症をきたしたかのごとく,患肢全体が腫脹することもある。この病態を理解していれば診断は可能である。掌蹠膿疱症,乾癬および,痤瘡については皮膚科医の意見を聞き,専門的な治療を受けさせる。 |
![]() |
線維筋痛症の診断以前に皮膚症状,および,胸鎖関節の腫脹などを見落とさないことが大切である。 |