(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
4章 鑑別診断
1.線維筋痛症とリウマチ性疾患の鑑別
1.線維筋痛症とリウマチ性疾患の鑑別
2.シェーグレン症候群
疫学像 | |
![]() |
線維筋痛症で乾燥症状をきたすことが多い。シェーグレン症候群は,40代以降の中年女性に多い。有病率は約10万人当たり25人で男女比は1:13.7と女性に多くみられる2,3)。 |
臨床像 | |
![]() |
眼球乾燥症状,口腔乾燥症状,口角炎・口内炎,胃炎,中耳炎などを起こしやすい。そのほか,腟炎,レイノー現象,紫斑,皮膚の乾燥症状,関節炎,リンパ節腫脹,耳下腺腫脹,などを起こす。また,肝機能異常,甲状腺機能低下症,間質性腎炎,間質性肺炎,悪性リンパ腫などの併発もある。 |
臨床経過と予後 | |
![]() |
膠原病に合併する続発性シェーグレン症候群と,膠原病の合併のない原発性シェーグレン症候群に分類される。原発性シェーグレン症候群は3病型に分けられる。その第1には眼球乾燥と口腔乾燥症状のみがある症例で,約45%と言われている。第2は全身性の臓器病変を伴うグループで,約50%。第3は悪性リンパ腫や原発性マクログロブリン血症を発症した状態で,約5%である。約半数の症例は10年以上経っても何の変化もなく過ごすが,残りの半数の症例では10年以上経つと何らかの検査値の異常や新しい病変がみられる2,3)。 |
診断基準 | |
![]() |
シェーグレン症候群厚生省診断基準(1999年)が使われる2)(表3)。 |
表3 ![]() ![]() |
|
![]() |
厚生省自己免疫疾患研究班(文献2より引用)
|
鑑別診断の要点 | |
![]() |
線維筋痛症では乾燥症状が49.3%にみられると報告されており6),シェーグレン症候群が潜在する可能性も無視できない。シェーグレン症候群と確定診断される症例は多くはないが,シェーグレン症候群が疑われる症例は膠原病専門医の受診が勧められる。耳鼻咽喉科ではガムテスト,サクソンテスト,唾液腺造影,唾液腺シンチグラフィー,唾液腺生検,眼科ではシルマーテスト,蛍光色素試験,細隙灯顕微鏡検査などが行われる。器質的疾患であるシェーグレン症候群と確定診断できる症例は線維筋痛症10%以下と考えられる7)。 |
![]() |
逆にシェーグレン症候群と診断された症例の中で広範囲疼痛を訴える症例は線維筋痛症をまず疑ってみるべきである。最近,シェーグレン症候群に広範囲疼痛を訴える患者が報告されており,小線維性神経炎(small fiber neuropathy)と診断しているが,線維筋痛症との異同8)が今後の課題となると思われる。 |