(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
3章 診断基準
1.米国リウマチ学会線維筋痛症分類基準(1990)
エビデンスIIa 推奨度A | |
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線維筋痛症の臨床的基準として,疾患定義基準,分類基準,診断基準など様々なものがこれまで提案されてきた。その中で米国リウマチ学会(ACR)が疾患の定義,病名の提唱とともに線維筋痛症分類基準(1990)(表1,図1)1)を提案した。この基準については提案当初から最近に至るまで様々な意見があることも事実であるが,その有用性から広く国際的に分類(診断)基準として用いられ,臨床的には診断基準として用いられてきたのが現状である。しかし,分類基準はあくまでも,線維筋痛症症例を用いた臨床研究や基礎的研究に際して線維筋痛症症例の質の担保を保証するものであり,診断基準ではない。診療の場では分類基準を満たさない症例が存在し,分類基準を満たさない症例を線維筋痛症から除外するための基準でもない。米国リウマチ学会が分類基準(1990)を作成するときに用いられた症例は線維筋痛症症例が293例,対照症例は165例であり。これら症例による診断感度は88.4%,診断特異度は81.1%であり,診断基準として用いることの有用性を示していた。その結果米国リウマチ学会分類基準(1990)が広く国際的に診断基準的に用いられているのが実情である。しかしながら,この基準作成時に用いた症例(対照症例)は米国症例であり,本邦症例に対する妥当性の検証が行われないまま,診断基準として用いるには問題があることを認識すべきである。 |
表1 ![]() ![]() |
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![]() 図1 ![]() |
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一方,米国リウマチ学会が2010年に20年ぶりに線維筋痛症の臨床基準として診断予備基準を提案した2)。この基準はもっぱら自覚症状の臨床徴候の組み合わせからなり,線維筋痛症の特徴的臨床像が確認される場合に臨床診断が可能であり,さらに臨床徴候に基づく臨床的病勢の数量化(徴候重症度:symptoms severity:SS)を提案していることが特徴である。 |