(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
2章 本邦線維筋痛症の臨床疫学像
4.本邦線維筋痛症の臨床像1〜3)
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全国疫学調査から得られた本邦線維筋痛症では,中心症状は全身の広汎な慢性疼痛と解剖学的に明確な部位の圧痛であり,ほぼ全例に認められる。一方,筋・骨格系以外の症状(副症状)として報告されているものは身体症状として,種々の程度の疲労・倦怠感,微熱(38℃以下),レイノー現象,盗汗,動悸,呼吸苦,嚥下障害,間質性膀胱炎様症状,生理不順・月経困難症,体重の変動,寒暖不耐症,顎関節症,腹部症状,便通異常(下痢,便秘),手の腫脹,口内炎,皮膚瘙痒感,皮疹,光線過敏症,各種アレルギー症状などがあり,神経症状としては頭痛・頭重感,四肢の感覚障害,手指ふるえ,眩暈,浮遊感,耳鳴,難聴,羞明,視力障害,筋力低下,筋脱力感,手根管症候群,restless leg syndrome(ムズムズ脚症候群)などであり,精神症状には睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群を含む),抑うつ気分,不安感,焦燥感,集中力低下,注意力低下,健忘,軽度の意識障害などがある(表3,4)。これら線維筋痛症の臨床像に人種間,民族間の差異がみられるとの報告はないが,本邦人では欧米症例に比して,乾燥症状(薬剤によらない),疲労・倦怠感,抑うつ,頭痛・頭重感,不安感の出現頻度が高いことが明らかとなった(表3,4)。 |
表3 ![]() ![]() ![]() |
表4 ![]() ![]() ![]() |
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一方,ほぼ全例に疲労・倦怠感を訴えるが,その疲労は休養により回復困難な程度であることが本邦例の検討で明らかにされた。すなわち,疲労の程度の客観的評価であるperformance status(PS:0〜9)を用いた検討では,平均6.0±2.4(0〜9)であり,慢性疲労症候群の疲労のPS scoreが3以上とされていることから,線維筋痛症患者は慢性疲労症候群に匹敵する激しい疲労・倦怠感を自覚している(図3)。 |
![]() 図3 ![]() |
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疲労のperformance status(PS;0〜9):6.0±2.4
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