(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
2章 本邦線維筋痛症の臨床疫学像

1.本邦における有病率
arrow 厚生労働省の研究班による全国疫学調査では,2003年1年間に線維筋痛症の診断で病院に受診した患者数(受療患者数)は2600名(95%信頼区間(CI):1900〜3900名),日本リウマチ財団リウマチ登録医への線維筋痛症受療患者数は3900名(95%CI:3200〜4600名)であった。これは欧米のこれまでの疫学調査からみてもきわめて少ない患者数である。
arrow そこで同研究班により本邦2地域で住民調査が行われた。人口当たりの有病率は大都市部2.2%(95%CI:0.6〜3.8%),地方部1.2%(95%CI:0.4〜2.1%)であり,全体として本邦の有病率は人口比1.7%(95%CI:0.9〜2.1%)であった。これまで思われていたほど稀ではなく, 本邦での有病率は欧米(約2%)にかなり近い値であり,線維筋痛症は本邦でも比較的頻度の高い特異な機能性リウマチ性疾患であることが確認された1,2,3)。この有病率に多くの臨床医が驚きと疑いを持つことがしばしばある。しかしながら,日本における慢性疼痛保有率が人口の13.4%にみられると報告4)されており,これら慢性疼痛患者の一部に線維筋痛症患者が含まれることから線維筋痛症の有病率人口比1.7%は決して現実離れしたものではないことを強調したい。
arrow このように線維筋痛症は比較的頻度の高いリウマチ性疾患であるにもかかわらず本邦では認知度が低いことより,同研究班,日本線維筋痛症学会,NPO法人線維筋痛症友の会,マスメディアによる啓蒙活動などにより,最近では線維筋痛症の認知度が高まったと言える。そこで,第2回目のリウマチ登録医を対象とした調査が行われ,2009年1年間に線維筋痛症と診断・診療した患者数は1万1000名(95%CI:6400〜1万6000名)と推計された。前回調査より増加しているが,やはりわずかな患者数のみがリウマチ医を受診しているにすぎない。一方,リウマチ登録医が診療する関節リウマチ患者数は2009年1年間では38万5000名(95%CI:32万8000〜44万2000名)であった。これは1年間に本邦関節リウマチ患者のおよそ55%をリウマチ登録医が診療しているが,線維筋痛症患者のわずか0.6%しか診療していないことを示しており,本邦リウマチ医は関節リウマチを積極的に診療するが,線維筋痛症の診療は避けている可能性が示唆される。

 

 
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