(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
本ガイドラインの記載方法
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線維筋痛症は比較的頻度の高いリウマチ性疾患であるにもかかわらず,本邦では医療側を含めて疾患概念の認識度が著しく低い。その結果,医療のもとで適正にケアされている患者はきわめて少なく,多くの患者は診断不明,あるいは他の疾患と扱われたりしてドクターショッピングを繰り返し,長期に病んでいる。また,医療に失望して民間療法などに流れているものも少なからずある。このようにわが国における線維筋痛症を取り巻く医療環境には大きな問題がある。幸いに,厚生労働省において線維筋痛症に関する調査研究班が組織され,わが国の線維筋痛症患者の実態調査や病因・病態,治療やケア,あるいは支援体制に対する研究が進められ,また日本線維筋痛症学会が発足するなど,日本人を対象としたエビデンスが集積しつつある。 |
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このような状況下で,患者中心の,あるいは医療経済的視点に立ったわが国における線維筋痛症の診療体制の確立は急務である。そこで,わが国において適正な線維筋痛症の診療が実践されるために,現在までに得られたエビデンスに基づいて,わが国の医療制度に則した診療の手引きとして,診療ガイドラインをまとめることとした。 |
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本ガイドラインは本邦人を対象とするものである。しかし,本邦人に対するエビデンスがいまだ十分でないため,多くのものは欧米におけるエビデンスおよび専門医の臨床経験をもとにしたコンセンサスカンファランスでの合意のもとに,本邦の医療事情を考慮して記載することとした。できるだけ記載内容についてエビデンスレベルに基づく推奨度を併記して記載することとし,エビデンスの十分でないものについては推奨度を併記することなく,単に記述するにとどめた。また,本ガイドラインは線維筋痛症の確定診断に至るプロセス,および確定診断後の患者の取り扱いについて,現行の本邦保険医療制度・介護保険制度あるいは福祉制度の視点からどのように行うことが合理的であるかについて言及したものである。今後さらに本邦人を対象としたエビデンスの蓄積により,より質の高いEBMに基づいたガイドラインの改訂を前提に,今回のガイドラインの有用性が広く臨床の現場でお役に立てれば幸いである。 |
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なお,本ガイドラインは以下の記載方法による。 |
1)保険適応外使用の表記 | |
「*」:線維筋痛症の副症状・合併症に対して保険診療として認められているもの | |
「**」:未承認薬 | |
2)データ記載について | |
本邦人を対象としたものは,データはそのままで記載し,外国人を対象としたデータは,本文に対象集団を明示する。例:「米国では…」など。 | |
3)推奨度の表記 | |
可能なものは推奨度(A〜D)を表記する。日本人を対象としたエビデンス(複数のRCTがあれば)推奨度A。海外でのRCTによるものは,本邦人を対象としていないため推奨度B。エビデンスがなく有効とする報告がなされているものは推奨度C。臨床家の経験的なものは,推奨度は記載しない。 | |
4)推奨度 | |
推奨A:行うよう強く勧められる 推奨B:行うよう勧められる 推奨C:行うよう勧めるだけの根拠が明確でない 推奨D:行わないよう勧められる ※推奨度は以下の要因を勘案して総合的に判定される。 ・ エビデンスのレベル ・ エビデンスの数と結論のバラツキ(同じ結論のエビデンスが多ければ多いほど,そして結論のバラツキが小さければ小さいほど勧告は強いものとなる。必要に応じてメタ解析を行う) ・ 臨床的有効性の大きさ ・ 臨床上の適用性 ・ 害やコストに関するエビデンス (福井・丹後「診療ガイドライン作成の手順」version 4.3) |
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治療内容によっては,エビデンスとして一定の評価がまとまらないことがあるが,そのようなときには推奨の度合いを記載しない。 |
エビデンスレベルによる分類
