(旧版)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011
第4章 予後
■ Clinical Question 16
腰部脊柱管狭窄症に対する固定術の骨癒合状態が手術成績に与える影響と,固定術における脊椎インストゥルメンテーション併用のもたらす効果は何か
推奨
【Grade B】
変性脊椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎固定術の施行後に画像所見で骨癒合不全が証明されても,本所見が2〜3年後の手術成績に影響することはない.
【Grade I】
5年以上の期間でみた場合,変性脊椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎固定術後の骨癒合不全は手術成績低下の原因となりうる.
【Grade B】
変性脊椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症では,後側方固定術に脊椎インストゥルメンテーションを併用することで骨癒合率が高まる.
解説
腰椎固定術においては,骨癒合状態の治療成績に及ぼす影響が懸念される.今回採用された論文の固定術式はいずれも後側方固定術であるが,骨癒合不全の臨床的転帰への影響について術後2〜3年の短期と術後5年以上の長期経過では異なった見解が示されている.
Herkowitzら3)は,腰部脊柱管狭窄症および変性脊椎すべり症の50例を対象とした無作為化対照試験を実施した.患者を除圧術単独群(25例)と除圧固定術群(25例)の2群に無作為化し,追跡調査期間2.4〜4年での検討できわめて良好,良好との評価を得た割合は,除圧固定術群(96%)が除圧術単独群(44%)よりも有意に高いことを示した.しかし,除圧固定術群では骨癒合不全をきたした例が36%存在したものの,これによる転帰への影響はなかったと結論している.同研究からは「3年間でみた場合,変性脊椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症の治療に際しては,除圧固定術によって除圧術単独よりも良好な転帰がもたらされる.また,骨癒合不全を示す所見が固定術施行群の転帰に影響を及ぼすことはない」とのエビデンスを得ることができる(EV level II).
Fischgrundら2)は,腰部脊柱管狭窄症に変性脊椎すべり症を合併した症例を対象とした無作為化非盲検対照試験を前向き形式で実施し,ペディクルスクリューによる脊椎インストゥルメンテーション併用固定術と非併用固定術を比較検討した.76例を対象に2年間の経過観察期間で有効データが得られたのは67例であり,臨床的転帰がきわめて良好,良好と評価された症例の割合は,脊椎インストゥルメンテーション併用群76%,非併用群85%であった.骨癒合率は脊椎インストゥルメンテーション併用群82%,非併用群45%であったが,全般に骨癒合と転帰との相関関係は認められなかったとしている.同研究からは「脊椎インストゥルメンテーション併用固定術では,脊椎固定部位の安定化を得られる可能性は高くなる.しかし,2年間でみた場合,本法の施行と良好な転帰との相関関係は認められない」とのエビデンスを得ることができる(EV level II).
以上は,術後2年の時点では骨癒合不全があっても臨床的転帰には影響しないとのエビデンスを示したものである.
一方,5年以上の経過で骨癒合不全がみられたならば,それは手術成績低下の原因となりうるとのエビデンスも認められる.
Kornblumら5)は,腰部脊柱管狭窄症および変性脊椎すべり症を有し,前2回の前向き研究2, 3)で対象とした58例についてその後の経過を報告した.除圧術と骨移植による脊椎インストゥルメンテーション非併用後側方固定術を受けており,経過観察期間は5〜14年で,有効データは47例から得られた.骨癒合不全の有無別に分類した治療成績できわめて良好,良好との評価を得た割合は,骨癒合例では86%,骨癒合不全が疑われた患者では56%であったと報告した.同研究からは「長期的にみた場合,変性脊椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎インストゥルメンテーション非併用除圧固定術の施行後に骨癒合不全が証明されたならば,本所見は予後不良を示す指標となる」とのエビデンスを得ることができる(EV level III).
変性脊椎すべり症を伴った腰部脊柱管狭窄症に対する後側方固定術において,脊椎インストゥルメンテーションの併用がもたらす効果として骨癒合率の向上と術後すべりの増大防止があげられている.
Fischgrundら2)は,前述のように脊椎インストゥルメンテーション併用固定術と非併用固定術を比較検討した.骨癒合率は脊椎インストゥルメンテーション併用群82%,非併用群45%であり,同研究からは「脊椎インストゥルメンテーション併用固定術では,脊椎固定部位の骨癒合が得られる可能性は高くなる」とのエビデンスを得ることができる(EV level II).
Bridwellら1)は,腰部脊柱管狭窄症および変性脊椎すべり症を有する44例を対象とした一部無作為化による非盲検試験を実施した.症例を「除圧術単独群(第1群9例)」「脊椎インストゥルメンテーション非併用除圧固定術群(第2群11例)」「脊椎インストゥルメンテーション併用固定術群(第3群24例)」に分類した.第3群の患者数が特に多いのは,術前の機能撮影にて10°または3mm以上の動きを認めた患者を第3群に割り付けたためである.経過観察期間は2年以上で,固定術の術後評価は単純X線像で行っているが,すべり増大例の割合は,第1群44%,第2群70%,第3群4%であった.すべりの増大と他の症状との間には関連性が認められ,脊椎インストゥルメンテーション併用固定術群ではすべり増大例の割合が有意に低く,骨癒合率は高く,転帰は良好であったと結論した.同研究からは「変性脊椎すべり症および腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎インストゥルメンテーション併用固定術は,すべりや他の症状の進行を抑えるうえで除圧術単独または脊椎インストゥルメンテーション非併用除圧固定術群よりも有効である」とのエビデンスを得ることができる(EV level III).
脊椎インストゥルメンテーション併用群において,骨癒合率が高まり8),すべりの進行が抑えられるとのエビデンスが示されているのは,脊椎インストゥルメンテーション併用のもたらす効果として妥当な結果と思われる.ただし,その使用においては合併症6)および医療経済的側面4, 7)からの検討も必要であり今後の課題である.
Herkowitzら3)は,腰部脊柱管狭窄症および変性脊椎すべり症の50例を対象とした無作為化対照試験を実施した.患者を除圧術単独群(25例)と除圧固定術群(25例)の2群に無作為化し,追跡調査期間2.4〜4年での検討できわめて良好,良好との評価を得た割合は,除圧固定術群(96%)が除圧術単独群(44%)よりも有意に高いことを示した.しかし,除圧固定術群では骨癒合不全をきたした例が36%存在したものの,これによる転帰への影響はなかったと結論している.同研究からは「3年間でみた場合,変性脊椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症の治療に際しては,除圧固定術によって除圧術単独よりも良好な転帰がもたらされる.また,骨癒合不全を示す所見が固定術施行群の転帰に影響を及ぼすことはない」とのエビデンスを得ることができる(EV level II).
Fischgrundら2)は,腰部脊柱管狭窄症に変性脊椎すべり症を合併した症例を対象とした無作為化非盲検対照試験を前向き形式で実施し,ペディクルスクリューによる脊椎インストゥルメンテーション併用固定術と非併用固定術を比較検討した.76例を対象に2年間の経過観察期間で有効データが得られたのは67例であり,臨床的転帰がきわめて良好,良好と評価された症例の割合は,脊椎インストゥルメンテーション併用群76%,非併用群85%であった.骨癒合率は脊椎インストゥルメンテーション併用群82%,非併用群45%であったが,全般に骨癒合と転帰との相関関係は認められなかったとしている.同研究からは「脊椎インストゥルメンテーション併用固定術では,脊椎固定部位の安定化を得られる可能性は高くなる.しかし,2年間でみた場合,本法の施行と良好な転帰との相関関係は認められない」とのエビデンスを得ることができる(EV level II).
以上は,術後2年の時点では骨癒合不全があっても臨床的転帰には影響しないとのエビデンスを示したものである.
一方,5年以上の経過で骨癒合不全がみられたならば,それは手術成績低下の原因となりうるとのエビデンスも認められる.
Kornblumら5)は,腰部脊柱管狭窄症および変性脊椎すべり症を有し,前2回の前向き研究2, 3)で対象とした58例についてその後の経過を報告した.除圧術と骨移植による脊椎インストゥルメンテーション非併用後側方固定術を受けており,経過観察期間は5〜14年で,有効データは47例から得られた.骨癒合不全の有無別に分類した治療成績できわめて良好,良好との評価を得た割合は,骨癒合例では86%,骨癒合不全が疑われた患者では56%であったと報告した.同研究からは「長期的にみた場合,変性脊椎すべり症を伴う腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎インストゥルメンテーション非併用除圧固定術の施行後に骨癒合不全が証明されたならば,本所見は予後不良を示す指標となる」とのエビデンスを得ることができる(EV level III).
変性脊椎すべり症を伴った腰部脊柱管狭窄症に対する後側方固定術において,脊椎インストゥルメンテーションの併用がもたらす効果として骨癒合率の向上と術後すべりの増大防止があげられている.
Fischgrundら2)は,前述のように脊椎インストゥルメンテーション併用固定術と非併用固定術を比較検討した.骨癒合率は脊椎インストゥルメンテーション併用群82%,非併用群45%であり,同研究からは「脊椎インストゥルメンテーション併用固定術では,脊椎固定部位の骨癒合が得られる可能性は高くなる」とのエビデンスを得ることができる(EV level II).
Bridwellら1)は,腰部脊柱管狭窄症および変性脊椎すべり症を有する44例を対象とした一部無作為化による非盲検試験を実施した.症例を「除圧術単独群(第1群9例)」「脊椎インストゥルメンテーション非併用除圧固定術群(第2群11例)」「脊椎インストゥルメンテーション併用固定術群(第3群24例)」に分類した.第3群の患者数が特に多いのは,術前の機能撮影にて10°または3mm以上の動きを認めた患者を第3群に割り付けたためである.経過観察期間は2年以上で,固定術の術後評価は単純X線像で行っているが,すべり増大例の割合は,第1群44%,第2群70%,第3群4%であった.すべりの増大と他の症状との間には関連性が認められ,脊椎インストゥルメンテーション併用固定術群ではすべり増大例の割合が有意に低く,骨癒合率は高く,転帰は良好であったと結論した.同研究からは「変性脊椎すべり症および腰部脊柱管狭窄症に対する脊椎インストゥルメンテーション併用固定術は,すべりや他の症状の進行を抑えるうえで除圧術単独または脊椎インストゥルメンテーション非併用除圧固定術群よりも有効である」とのエビデンスを得ることができる(EV level III).
脊椎インストゥルメンテーション併用群において,骨癒合率が高まり8),すべりの進行が抑えられるとのエビデンスが示されているのは,脊椎インストゥルメンテーション併用のもたらす効果として妥当な結果と思われる.ただし,その使用においては合併症6)および医療経済的側面4, 7)からの検討も必要であり今後の課題である.
文献