(旧版)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011
第4章 予後
■ Clinical Question 14
腰部脊柱管狭窄症の手術治療成績に影響する因子は何か
推奨
【Grade C】
75歳以上の腰部脊柱管狭窄症患者は,除圧術により65歳以上75歳未満の患者とほぼ同等の手術成績を期待できる.高齢という理由だけで手術回避を強く勧める理由とはならない.
【Grade B】
手術適応と判断された患者において,罹病期間が長すぎると十分な改善を得られないことがある.
【Grade B】
安静時の下肢しびれは消失しにくい.
【Grade B】
術前にうつ状態があると成績が低下する.
解説
Arinzonらは283例の後ろ向き比較研究から,75歳で分けた2群の成績比較により高齢であっても同等の手術成績を期待できると報告した1).妥当性の実証された評価方法を使用していなかったこと,術式にばらつきがあったことからEV
level IVとした.
全米の病院データベースに診断名が腰部脊柱管狭窄症で非固定椎弓切除術を受けた者として登録されている471,215例の記録によれば,術後合併症の発生率は12.2%で術後血腫(5.2%)と泌尿器系合併症(2.8%)が多かったとされている5).その他の術後合併症の内容は,肺合併症,心臓合併症,神経合併症,肺塞栓,創感染などである.年齢が高くなるほど術後合併症発生率が増加し,術前の内科的合併症数(心血管疾患,末梢血管障害,慢性呼吸器疾患,未治療糖尿病,腎不全,肝疾患など)が増えるほど増加する.ただし高齢であることが手術の禁忌とするほどの結果ではない(EV level IV).
Arinzonらの報告によると,65歳以上の後方除圧術患者における比較対照試験の結果から,高齢であることや糖尿病を合併していることについては手術回避を強く勧告するだけの理由がなく,それ以外の症例とほぼ同様の恩恵を手術によって受けることができるという結果であった2)(EV level IV).
最低3ヵ月の保存治療を受けて手術(固定または非固定の除圧術)となった100例をOswestry Disability Index(ODI),Low back outcome score, visual analog scale(VAS)で調査した結果(1年追跡率100%,2年追跡率85%),罹病期間の短いほうが成績はよかった6).しかし本論文では罹病期間の定義が曖昧であり,手術適応を著しく拡大してよいという根拠にはならないので,その解釈には慎重を要する.手術治療群のコホート研究であるが保存治療群との比較研究ではないので,EV level IIIとする.
手術により改善しにくい症状について,加藤らは,腰部脊柱管狭窄症患者の手術症例63例中55例の自覚症状を術後1年で評価した4).その結果,安静時症状が,歩行時に出現する症状よりも改善しにくく,安静時の下肢しびれが残存しやすかった(EV level II).原田らは術後1年以上経過した298例(全366例中81.4%)に対するアンケート調査を行い,術後に足部のしびれが78.2%に残存していたと報告している3)(EV level IV).
Sinikallioらは,99名の手術患者(手術内容は不明)をOswestry Disability Index(ODI),Beck depression inventory などで検討した比較対照試験の結果から,術前のうつ状態は成績低下の原因のひとつとなりうるとした7)(EV level III).
全米の病院データベースに診断名が腰部脊柱管狭窄症で非固定椎弓切除術を受けた者として登録されている471,215例の記録によれば,術後合併症の発生率は12.2%で術後血腫(5.2%)と泌尿器系合併症(2.8%)が多かったとされている5).その他の術後合併症の内容は,肺合併症,心臓合併症,神経合併症,肺塞栓,創感染などである.年齢が高くなるほど術後合併症発生率が増加し,術前の内科的合併症数(心血管疾患,末梢血管障害,慢性呼吸器疾患,未治療糖尿病,腎不全,肝疾患など)が増えるほど増加する.ただし高齢であることが手術の禁忌とするほどの結果ではない(EV level IV).
Arinzonらの報告によると,65歳以上の後方除圧術患者における比較対照試験の結果から,高齢であることや糖尿病を合併していることについては手術回避を強く勧告するだけの理由がなく,それ以外の症例とほぼ同様の恩恵を手術によって受けることができるという結果であった2)(EV level IV).
最低3ヵ月の保存治療を受けて手術(固定または非固定の除圧術)となった100例をOswestry Disability Index(ODI),Low back outcome score, visual analog scale(VAS)で調査した結果(1年追跡率100%,2年追跡率85%),罹病期間の短いほうが成績はよかった6).しかし本論文では罹病期間の定義が曖昧であり,手術適応を著しく拡大してよいという根拠にはならないので,その解釈には慎重を要する.手術治療群のコホート研究であるが保存治療群との比較研究ではないので,EV level IIIとする.
手術により改善しにくい症状について,加藤らは,腰部脊柱管狭窄症患者の手術症例63例中55例の自覚症状を術後1年で評価した4).その結果,安静時症状が,歩行時に出現する症状よりも改善しにくく,安静時の下肢しびれが残存しやすかった(EV level II).原田らは術後1年以上経過した298例(全366例中81.4%)に対するアンケート調査を行い,術後に足部のしびれが78.2%に残存していたと報告している3)(EV level IV).
Sinikallioらは,99名の手術患者(手術内容は不明)をOswestry Disability Index(ODI),Beck depression inventory などで検討した比較対照試験の結果から,術前のうつ状態は成績低下の原因のひとつとなりうるとした7)(EV level III).
文献