(旧版)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011
第3章 治療
■ Clinical Question 11
腰部脊柱管狭窄症における薬物治療・その他の保存治療の長期成績はどのようなものか
推奨
【Grade C】
軽度ないし中等度の腰部脊柱管狭窄症の患者で最初に薬物治療・その他の保存治療を受け,2年から10年間経過観察が行われた患者のうち約20〜40%は最終的に手術治療が必要となる.手術を必要としなかった患者の約50〜70%では疼痛が軽減する.
【Grade C】
保存治療の予後を左右するものは,病態と初期治療の成績であった.神経根症状が主体の患者,初期治療の成績が良好であった患者では,長期成績も良好であった.一方,変性側弯合併例では保存治療の長期成績は劣っていた.
解説
腰部脊柱管狭窄症に対する保存治療は,薬物治療を始めとしてさまざまな治療法が行われている.しかし,その長期成績を報告した論文は少なく,エビデンスの高い論文も限られている.ここでは,長期成績を2年ないしそれ以上経過観察したものとして検討を行った.
腰部脊柱管狭窄症に対する保存治療の長期成績を評価する研究実施に際しては,倫理上の大きな制約がある.重症例でははじめから手術治療が選択される場合が多く,保存治療の長期成績を検討することがむずかしい.保存治療を第一選択とした軽度ないし中等度の症例であっても,経過中に症状が悪化すれば手術治療に変更せざるを得ない.参考となる研究としてはAmundsenらの症例対照研究1)(n = 68),Simotasら4)(n = 49)およびWaikakulら5)(n = 70)の症例集積研究,Zuchermanら6)の前向きコホート研究(n = 91)などがあげられる(すべてEV level IV).さらには,レビュー論文としてEnglund 2)によるものがある(EV level V).
これらの研究を総括すると,軽度から中等度の症例ではじめに薬物治療(NSAIDs,筋弛緩薬,メチルコバラミンなど)やその他の保存治療(装具治療,腰痛学級・患者教育,運動療法,硬膜外ステロイド注入など)を受けた患者のなかで,約20〜40%は最終的に手術が必要となった.一方,手術に至らなかった患者の約50〜70%では疼痛が改善した.
わが国においては,Miyamotoら3)が腰部脊柱管狭窄症により10分以内の神経性跛行を呈した患者のなかで,入院での保存治療が効果的であった170例中120例(男性70例,女性50例:入院時平均年齢63.6歳)を最短5年間経過観察した.入院下での保存治療は,侵襲性の低い治療から高い治療へと,次の治療を効果が得られるまで順番に施行した.ベッド上での骨盤牽引,体幹ギプス装着,硬膜外ブロック,最後に神経根ブロックを行った.その結果,19例(15.8%)が症状増悪のため,退院後平均22.1ヵ月で手術治療となった.最終経過観察時の自覚症状は,退院時のそれと比較して,改善したものが52例(43.3%),不変が20例(16.7%),悪化が48例(40.0%)であった.ADLはJOAスコアをもとに評価した.無症状のものを優,いくつかの症状はあるが支障のないものを良,なんらかの支障のあるものを可,大きな支障があるものを不可とした.その結果,優が26例(21.7%),良が37例(30.8%),可が35例(29.2%),不可が22例(18.3%)であった.すなわち,ADL上,何ら障害のないもの(優と良を合わせて)が52.5%であった.神経根症状が主体の患者または入院保存治療によく反応した患者では,その他の患者と比較して,長期成績が良好であった.一方,変性側弯を伴う患者の成績は不良であった(EV level IV).
腰部脊柱管狭窄症に対する保存治療の長期成績を評価する研究実施に際しては,倫理上の大きな制約がある.重症例でははじめから手術治療が選択される場合が多く,保存治療の長期成績を検討することがむずかしい.保存治療を第一選択とした軽度ないし中等度の症例であっても,経過中に症状が悪化すれば手術治療に変更せざるを得ない.参考となる研究としてはAmundsenらの症例対照研究1)(n = 68),Simotasら4)(n = 49)およびWaikakulら5)(n = 70)の症例集積研究,Zuchermanら6)の前向きコホート研究(n = 91)などがあげられる(すべてEV level IV).さらには,レビュー論文としてEnglund 2)によるものがある(EV level V).
これらの研究を総括すると,軽度から中等度の症例ではじめに薬物治療(NSAIDs,筋弛緩薬,メチルコバラミンなど)やその他の保存治療(装具治療,腰痛学級・患者教育,運動療法,硬膜外ステロイド注入など)を受けた患者のなかで,約20〜40%は最終的に手術が必要となった.一方,手術に至らなかった患者の約50〜70%では疼痛が改善した.
わが国においては,Miyamotoら3)が腰部脊柱管狭窄症により10分以内の神経性跛行を呈した患者のなかで,入院での保存治療が効果的であった170例中120例(男性70例,女性50例:入院時平均年齢63.6歳)を最短5年間経過観察した.入院下での保存治療は,侵襲性の低い治療から高い治療へと,次の治療を効果が得られるまで順番に施行した.ベッド上での骨盤牽引,体幹ギプス装着,硬膜外ブロック,最後に神経根ブロックを行った.その結果,19例(15.8%)が症状増悪のため,退院後平均22.1ヵ月で手術治療となった.最終経過観察時の自覚症状は,退院時のそれと比較して,改善したものが52例(43.3%),不変が20例(16.7%),悪化が48例(40.0%)であった.ADLはJOAスコアをもとに評価した.無症状のものを優,いくつかの症状はあるが支障のないものを良,なんらかの支障のあるものを可,大きな支障があるものを不可とした.その結果,優が26例(21.7%),良が37例(30.8%),可が35例(29.2%),不可が22例(18.3%)であった.すなわち,ADL上,何ら障害のないもの(優と良を合わせて)が52.5%であった.神経根症状が主体の患者または入院保存治療によく反応した患者では,その他の患者と比較して,長期成績が良好であった.一方,変性側弯を伴う患者の成績は不良であった(EV level IV).
文献