(旧版)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011
第3章 治療
■ Clinical Question 10
腰部脊柱管狭窄症における硬膜外ステロイド注射の意義は何か
推奨
【Grade B】
経椎間孔硬膜外への単回のステロイド注射(いわゆる神経根ブロック)は,腰部脊柱管狭窄に起因する神経根症状を短期的に緩和させるうえでは有効であるが,その長期的効果を一貫として裏づけるエビデンスは得られていない.
【Grade C】
経椎間孔硬膜外(いわゆる神経根ブロック)あるいは仙骨硬膜外への複数回のステロイド注射によって,腰部脊柱管狭窄症に伴う神経根症状や神経性跛行は長期的に改善する可能性がある.
解説
腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアによる神経根性疼痛患者に対する硬膜外注射が短期的に疼痛改善に有効であることは日常診療でよく経験される.その注射経路として椎弓間,仙骨裂孔,椎間孔がある.注射薬として,局所麻酔薬単独かステロイド併用かについては議論のあるところである.硬膜外注射の効果については多くの報告があるが,長期成績については一定の見解はない.手術時期を遅らせたり,手術を回避する手段として行われることがある.腰椎椎間板ヘルニアまたは腰部脊柱管狭窄症117例に対する経椎間孔硬膜外単回局所麻酔薬注射(いわゆる神経根ブロック)の前向き症例集積研究では,3ヵ月にわたってわずかな効果が得られたとの報告があるが5),腰部脊柱管狭窄症のみの治療効果の統計学的比較がなされていないのでEV level IVとする.
椎間孔狭窄41例に対するCTガイド下の経椎間孔硬膜外単回ステロイド注射(いわゆる神経根ブロック)21例の症例集積研究では,平均経過観察期間9ヵ月の最終調査時には95%の患者で疼痛の軽減が得られていたとの報告があるが9),疼痛スコアを含めて妥当性のある評価項目の記載が不十分であり,高い治療効果ありとの結論には問題があるためEV level IVとする.
腰椎椎間板ヘルニアまたは椎間孔狭窄により片側下肢痛を有する患者に対し,局所麻酔薬単独43例と局所麻酔薬・ステロイド併用43例の経椎間孔硬膜外単回注射(いわゆる神経根ブロック)の効果についての無作為化二重盲検対照試験がある4).5例が試験から脱落し,局所麻酔薬単独41例,局所麻酔薬・ステロイド併用40例で,腰椎椎間板ヘルニア49例,椎間孔狭窄32例が対象であった.注射後6週および12週の臨床効果を Oswestry Disability Index(ODI), visual analog scale(VAS),および歩行距離で評価したが,いずれについても統計学的有意差はなく,局所麻酔薬にステロイドを追加する意味はないとしている.腰部脊柱管狭窄症のみの治療効果の比較でも,局所麻酔薬単独(15例)と局所麻酔薬・ステロイド併用(17例)の2群間に統計学的有意差はなかった.しかし,腰部脊柱管狭窄症の症例数が少ないことからEV level IIとする.
片側の下肢症状を有する腰部脊柱管狭窄症34例に経椎間孔硬膜外複数回注射(いわゆる神経根ブロック)を行った前向き症例集積研究では,64%で長期的な(12ヵ月)症状緩和が得られたとの報告があるが1),患者数が少なく, visual analog scale(VAS)以外の適切な評価項目が用いられていないのでEV level IVとする.X線透視下での複数回の経椎間孔硬膜外(いわゆる神経根ブロック)あるいは仙骨硬膜外へのステロイド注射を行った140例の後ろ向き症例集積研究において32%の患者に2ヵ月以上の疼痛緩和が得られたとの報告がある2)(EV level IV).下肢神経根症状を有し,MRIまたはCTで神経根の圧迫が確認でき,手術治療が必要とされた腰椎椎間板ヘルニアまたは腰部脊柱管狭窄症55例に対し,局所麻酔薬単独27例と局所麻酔薬・ステロイド併用28例の経椎間孔硬膜外複数回注射(いわゆる神経根ブロック)の無作為化二重盲検対照試験では,ステロイド併用は手術移行患者数を減少させることが可能であったとの報告がある7).すなわち,13〜28ヵ月の経過観察期間のなかで,手術に移行しなかったのは29例(53%)であり,内訳は局所麻酔薬単独群9例(31%),局所麻酔薬・ステロイド併用群20例(69%)であった.腰部脊柱管狭窄症の患者数が明示されていないことから,EV level IIとする.
X線透視下で注射しない場合,腰椎疾患100例の椎弓間硬膜外注射で17%が不正確であったという報告3)(EV level I),腰椎疾患328例の仙骨硬膜外注射での正確さは,経験10回未満の術者では47%で,10〜50回の術者で53%,そして51回以上の術者では62%であったという報告6)(EV level I),腰椎疾患300例の仙骨硬膜外注射の不正確さは25%で,椎弓間硬膜外注射での不正確さは30%であったという報告8)(EV level I)がある.硬膜外注射が正確に行われたか否かの判断には造影剤の併用がよいという結論が導かれるが,造影剤の使用は実際の臨床の場では現実性に乏しい場合もあることから,参考意見にとどめておく.
椎間孔狭窄41例に対するCTガイド下の経椎間孔硬膜外単回ステロイド注射(いわゆる神経根ブロック)21例の症例集積研究では,平均経過観察期間9ヵ月の最終調査時には95%の患者で疼痛の軽減が得られていたとの報告があるが9),疼痛スコアを含めて妥当性のある評価項目の記載が不十分であり,高い治療効果ありとの結論には問題があるためEV level IVとする.
腰椎椎間板ヘルニアまたは椎間孔狭窄により片側下肢痛を有する患者に対し,局所麻酔薬単独43例と局所麻酔薬・ステロイド併用43例の経椎間孔硬膜外単回注射(いわゆる神経根ブロック)の効果についての無作為化二重盲検対照試験がある4).5例が試験から脱落し,局所麻酔薬単独41例,局所麻酔薬・ステロイド併用40例で,腰椎椎間板ヘルニア49例,椎間孔狭窄32例が対象であった.注射後6週および12週の臨床効果を Oswestry Disability Index(ODI), visual analog scale(VAS),および歩行距離で評価したが,いずれについても統計学的有意差はなく,局所麻酔薬にステロイドを追加する意味はないとしている.腰部脊柱管狭窄症のみの治療効果の比較でも,局所麻酔薬単独(15例)と局所麻酔薬・ステロイド併用(17例)の2群間に統計学的有意差はなかった.しかし,腰部脊柱管狭窄症の症例数が少ないことからEV level IIとする.
片側の下肢症状を有する腰部脊柱管狭窄症34例に経椎間孔硬膜外複数回注射(いわゆる神経根ブロック)を行った前向き症例集積研究では,64%で長期的な(12ヵ月)症状緩和が得られたとの報告があるが1),患者数が少なく, visual analog scale(VAS)以外の適切な評価項目が用いられていないのでEV level IVとする.X線透視下での複数回の経椎間孔硬膜外(いわゆる神経根ブロック)あるいは仙骨硬膜外へのステロイド注射を行った140例の後ろ向き症例集積研究において32%の患者に2ヵ月以上の疼痛緩和が得られたとの報告がある2)(EV level IV).下肢神経根症状を有し,MRIまたはCTで神経根の圧迫が確認でき,手術治療が必要とされた腰椎椎間板ヘルニアまたは腰部脊柱管狭窄症55例に対し,局所麻酔薬単独27例と局所麻酔薬・ステロイド併用28例の経椎間孔硬膜外複数回注射(いわゆる神経根ブロック)の無作為化二重盲検対照試験では,ステロイド併用は手術移行患者数を減少させることが可能であったとの報告がある7).すなわち,13〜28ヵ月の経過観察期間のなかで,手術に移行しなかったのは29例(53%)であり,内訳は局所麻酔薬単独群9例(31%),局所麻酔薬・ステロイド併用群20例(69%)であった.腰部脊柱管狭窄症の患者数が明示されていないことから,EV level IIとする.
X線透視下で注射しない場合,腰椎疾患100例の椎弓間硬膜外注射で17%が不正確であったという報告3)(EV level I),腰椎疾患328例の仙骨硬膜外注射での正確さは,経験10回未満の術者では47%で,10〜50回の術者で53%,そして51回以上の術者では62%であったという報告6)(EV level I),腰椎疾患300例の仙骨硬膜外注射の不正確さは25%で,椎弓間硬膜外注射での不正確さは30%であったという報告8)(EV level I)がある.硬膜外注射が正確に行われたか否かの判断には造影剤の併用がよいという結論が導かれるが,造影剤の使用は実際の臨床の場では現実性に乏しい場合もあることから,参考意見にとどめておく.
文献