(旧版)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011
第2章 診断
■ Clinical Question 4
腰部脊柱管狭窄症を診断するために有用な画像検査は何か
推奨
【Grade B】
MRIは,腰部脊柱管狭窄症の画像診断に適した非侵襲的な検査である.
【Grade B】
脊髄造影や脊髄造影後CT(CTM)は,MRIが禁忌の患者,MRI所見が確定診断に至らない患者では有用な検査法である.
【Grade B】
CTは,MRIが禁忌の患者,MRI所見が確定診断に至らない患者,脊髄造影やCTMができない患者では有用な検査法である.
【Grade B】
外側陥凹狭窄,椎間孔狭窄の診断はMRI,CTMを用いても困難である.
解説
近年,MRIなどの普及により安易に腰部脊柱管狭窄症の診断がなされる傾向にある.しかし,画像だけでは症状の有無を判別できず,しかも狭窄の程度と臨床症状の重症度とは必ずしも相関しない.このため,病歴や診察所見と画像所見とを併せて診断することが重要である.
画像検査に関する論文の多くはMRIと脊髄造影や脊髄造影後CT(CTM)を対比しているが,メタ解析からは本症の診断におけるこれら3種の検査法はほぼ同等に有用とのエビデンスが得られている1, 2, 9, 10, 14)(EV level II〜III).ただし,MRIの感度は脊髄造影と同等であるが,特異度では劣るとする報告もある13).また,仰臥位で得られる画像のみでは狭窄が過小評価される可能性があり,検査時の体位変換の診断的意義も検討されている.脊髄造影時には前後屈における狭窄程度の変化が評価できる15).最近,MRIやCTにおける頭尾側方向の負荷による硬膜管横断面積の変化の報告が散見される16).しかし,これにより得られた所見と患者の予後や転帰との関連性に関する十分なエビデンスはない.
画像検査については,適切な盲検法の不備や必ずしも高くない再現性など,観察者間の信頼性の問題も提起されている.これらの評価における根本的な問題は横断画像における腰部脊柱管狭窄状態の統一された診断基準がないことにある.中心性狭窄の診断に関して,半定量的判定基準の試み3,8)がなされているが,外側陥凹狭窄や椎間孔狭窄の画像検査による診断は困難である4).MRIによる腰部脊柱管狭窄の定性的検討でも,中心性狭窄における観察者間の信頼性は高いが,椎間孔狭窄や神経根絞扼では信頼性が中等度であり,椎間関節下領域の狭窄では診断の不一致率が最も高かった11)(EV level II).わが国では治療に用いる経椎間孔硬膜外注射(いわゆる神経根ブロック)および神経根造影が本症の障害神経根の診断に利用されているが,その有用性については十分なエビデンスが不足している.
腰部脊柱管狭窄症の診断において,MRIでは有症状の患者と無症状の患者を判別することはできなかったが,電気生理学的検査では可能であったとする前向き対照盲検比較研究が報告されている6).しかし,本症の診断や治療の評価における電気生理学的検査の有用性は低く,他の神経障害の合併が疑われた場合の鑑別には優れると評価されている7, 12).
腰部脊柱管狭窄症に関する各種検査の診断能についてのレビューでは,研究の不均一性や質の低さのため,検査法の優劣について確固たる結論を導き出すことはできなかった5).
画像検査に関する論文の多くはMRIと脊髄造影や脊髄造影後CT(CTM)を対比しているが,メタ解析からは本症の診断におけるこれら3種の検査法はほぼ同等に有用とのエビデンスが得られている1, 2, 9, 10, 14)(EV level II〜III).ただし,MRIの感度は脊髄造影と同等であるが,特異度では劣るとする報告もある13).また,仰臥位で得られる画像のみでは狭窄が過小評価される可能性があり,検査時の体位変換の診断的意義も検討されている.脊髄造影時には前後屈における狭窄程度の変化が評価できる15).最近,MRIやCTにおける頭尾側方向の負荷による硬膜管横断面積の変化の報告が散見される16).しかし,これにより得られた所見と患者の予後や転帰との関連性に関する十分なエビデンスはない.
画像検査については,適切な盲検法の不備や必ずしも高くない再現性など,観察者間の信頼性の問題も提起されている.これらの評価における根本的な問題は横断画像における腰部脊柱管狭窄状態の統一された診断基準がないことにある.中心性狭窄の診断に関して,半定量的判定基準の試み3,8)がなされているが,外側陥凹狭窄や椎間孔狭窄の画像検査による診断は困難である4).MRIによる腰部脊柱管狭窄の定性的検討でも,中心性狭窄における観察者間の信頼性は高いが,椎間孔狭窄や神経根絞扼では信頼性が中等度であり,椎間関節下領域の狭窄では診断の不一致率が最も高かった11)(EV level II).わが国では治療に用いる経椎間孔硬膜外注射(いわゆる神経根ブロック)および神経根造影が本症の障害神経根の診断に利用されているが,その有用性については十分なエビデンスが不足している.
腰部脊柱管狭窄症の診断において,MRIでは有症状の患者と無症状の患者を判別することはできなかったが,電気生理学的検査では可能であったとする前向き対照盲検比較研究が報告されている6).しかし,本症の診断や治療の評価における電気生理学的検査の有用性は低く,他の神経障害の合併が疑われた場合の鑑別には優れると評価されている7, 12).
腰部脊柱管狭窄症に関する各種検査の診断能についてのレビューでは,研究の不均一性や質の低さのため,検査法の優劣について確固たる結論を導き出すことはできなかった5).
文献