(旧版)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011
序文
超高齢社会をむかえた我が国において,腰部脊柱管狭窄症を診療する機会は多い.『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン』は日本整形外科学会と日本脊椎脊髄病学会の監修により作成された.作成メンバーは日本整形外科学会診療ガイドライン委員会のもとにある腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会の10名であり,日本脊椎脊髄病学会の委員会も同一のメンバーから構成されている.
本ガイドライン作成の経緯については「前文」に記載されているが,2008年4月24日から2010年10月29日までに合計16回の委員会が開催された.とくに第11回から第16回までの委員会は1回平均7時間におよび,委員全員による内容の精読,修正,加筆を行った.また,75名の方々にアブストラクトの作成をして頂いた.本ガイドライン作成に関与された全ての方々に心より御礼を申し上げる.
脊柱管の狭小に関する記載は,19世紀に遡るとされるが,散発的な症例報告が行われるようになったのは,20世紀初頭からである.1949年,Verbiestはsténosesという言葉をはじめて使用した.わが国では1970年,東北大学の若松により本症がはじめて紹介された.1976年,Arnoldiらにより本症に関する定義と分類が発表され,腰部脊柱管狭窄症とは様々な疾患に伴う症候群であるとされた.本ガイドラインでは,症候群としての定義をより明確にするため,前文の表1のような診断基準を提示した.
本ガイドラインは系統的な文献検索により,執筆時における最新の知識を中立的な立場からまとめたものである.診療の際に是非,活用して頂ければと考えている.ただし,同じように神経が圧迫されていても,障害の範囲,程度,時間的変化は患者ごとに異なり,診断法や治療方針が異なる可能性がある.臨床の現場においては,医師による適切な診断が行われ,十分な説明にもとづく患者の同意が根幹となることはいうまでもない.すなわち,本ガイドラインはひとつの目安であり,診療内容を不当に制限したり,逆に拡大したりするために使用してはならない.また将来,病態の解明や診断・治療法の進歩により,執筆内容が大きく変化する可能性があり,むしろ変化すべきものと考えている.
おわりに,文献検索等にあたっては,日本医学図書館協会の河合富士美様,鈴木孝明様,坪内政義様,山田有希子様のご協力をいただいた.心からの御礼を申し述べたい.
2011年7月
日本整形外科学会
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会
委員長 高橋 和久
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン策定委員会
委員長 高橋 和久