(旧版)糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン

 
I.糖尿病患者における歯周病の病態


角1 角2
 
Q1:糖尿病になると歯周病になりやすいか?
 
角3 角4

A:糖尿病になると歯周病になりやすい。(レベル3)


背景・目的
厚生労働省の平成19年度糖尿病実態調査報告から,わが国における「糖尿病が強く疑われる人」は約820万人,さらに「糖尿病の可能性を否定できない人」が1,050万人と,成人の5〜6人に1人は糖尿病あるいは糖尿病発症前状態であることが明らかになっている。糖尿病は,放置すると網膜症,腎症,神経障害などの合併症を引き起こし,また,脳卒中,虚血性心疾患などの心血管疾患の発症,進展を促進することも知られている。このような合併症は患者のQOLを著しく低下させるのみでなく,医療経済的にも大きな負担を社会に強いており,対策が求められている。口腔領域においても,歯周病が糖尿病患者に高頻度にみられることから,歯周病は糖尿病の第6番目の合併症であると提唱されている。

解説
今回の文献検索では,糖尿病患者と非糖尿病患者の歯周組織の状態を比較したものを主に抽出した。
1型糖尿病と歯周病の関係では,フィンランドにおけるコホート研究がある1)。これは,重篤な1型糖尿病を有する歯周病患者では,糖尿病を有さない歯周病患者や軽度の1型糖尿病を有する歯周病患者に比べ歯周基本治療後12ヶ月での4mm以上の歯周ポケットの割合が有意に高いという報告である。従って,重度の1型糖尿病患者では,歯周治療後の再発が生じやすいといえる。また,わが国における調査でも,若年者の1型糖尿病患者ではおよそ10%以上が歯周炎に罹患しているのに対し,全身的に健康な同年代の若年者群では約1%程度にすぎないという報告があった2)
2型糖尿病と歯周病の発症率との関係は,2型糖尿病を高い頻度で発症する米国アリゾナ州のピマインディアンを対象にした研究がある。それによると,2型糖尿病患者では非糖尿病患者に比べ歯周病の発症率が2.6倍高いことが示されている3)
このように,糖尿病患者は1型,2型に関わらず健常者に比較して有意に歯周病を発症する頻度が高いといえる。

文献検索ストラテジー
電子検索データベースとして,Medlineを検索した。Medlineに用いた検索ストラテジーは,“Diabetes Mellitus”[MeSH Terms] AND “Prognosis”[MeSH Terms] AND “Periodontal Disease”[MeSH Terms] Limits: Humansで,関連のある論文を抽出した後,その論文の参考文献リストについても内容の検討を行った。主要な情報として,歯周病の罹患および進行に関する糖尿病患者群と非糖尿病患者群の比較研究を採取した。

seq. terms and strategy hits
#1 “Diabetes Mellitus”[MeSH Terms] 224,993
#2 “Prognosis”[MeSH Terms] 614,632
#3 “Periodontal Disease”[MeSH Terms] 52,203
#4 #1 AND #2 AND #3 Limits: Humans 43
最終検索日2008年7月9日

参考文献
1) Tervonen T, Karjalainen K. Periodontal disease related to diabetic status. A pilot study of the response to periodontal therapy in type 1 diabetes. J Clin Periodontol. 1997;24(7):505-10.
2) Nishimura F, Kono T, Fujimoto C, Iwamoto Y, Murayama Y. Negative effects of chronic inflammatory periodontal disease on diabetes mellitus. J Int Acad Periodontol. 2000;2(2):49-55.
3) Nelson RG, Shlossman M, Budding LM, Pettitt DJ, Saad MF, Genco RJ, Knowler WC. Periodontal disease and NIDDM in Pima Indians. Diabetes Care. 1990;13(8):836-40.

関係論文の構造化抄録
1)Tervonen T, Karjalainen K.
Periodontal disease related to diabetic status. A pilot study of the responseto periodontal therapy in type 1 diabetes.
J Clin Periodontol. 1997;24(7):505-10.
1型糖尿病患者における歯周基本治療後の歯周病の再発を健常者と比較する。
ザイン コントロールを伴うコホート研究。
フィンランドの大学病院。
1型糖尿病を有する歯周炎患者36名と糖尿病を有さない歯周炎患者10名。糖尿病群はその重症度によって3群に分けられた。
  • D1群(13名):糖尿病の合併症がなく,HbA1cが8.5%以下にコントロールされている群。
  • D2群(15名):糖尿病のコントロールが不十分で網膜症ありとなし群。
  • D3群(8名:コントロール不良群で合併症あり群。
口腔衛生指導,スケーリング・ルートプレーニング。
主要評価項目 治療前および治療後(1ヶ月,6ヶ月,12ヶ月)のプロービングポケットデプス,アタッチメントレベル。
4mm以上の歯周ポケットの割合は,歯周基本治療後6ヶ月までは各群間で差が認められなかったが,歯周基本治療後12ヶ月では,D3群において4mm以上の歯周ポケットの割合が他群に比べ有意に高かった。
重度の1型糖尿病患者では,歯周基本治療後の再発が生じやすい。
(レベル3)

2)Nishimura F, Kono T, Fujimoto C, Iwamoto Y, Murayama Y.
Negative effects of chronic inflammatory periodontal disease on diabetes mellitus.
J Int Acad Periodontol. 2000;2(2):49-55.
1.1型糖尿病患者群と健常者群の歯周病罹患率を比較する。
2.2型糖尿病患者群と健常者群の歯周病罹患率を比較する。
ザイン 症例対照研究。
岡山大学病院歯科。
1.1型糖尿病患者43名,健常者99名。
2.2型糖尿病患者81名,健常者120名。
糖尿病。
主要評価項目 1.アタッチメントレベル,骨吸収。
2.CPITN。
1型,2型ともに糖尿病患者は健常者と比較して歯周病の罹患率が有意に高かった。
糖尿病は歯周病罹患率を増加させる。
(レベル4)

3)Nelson RG, Shlossman M, Budding LM, Pettitt DJ, Saad MF, Genco RJ, Knowler WC.
Periodontal disease and NIDDM in Pima Indians.
Diabetes Care. 1990;13(8):836-40.
2型糖尿病患者群と非糖尿病患者群の歯周病の発症率を比較する。
ザイン 症例対照研究。
アメリカの大学病院。
アメリカのピマインディアン2,273名。
2型糖尿病患者720名。
非糖尿病患者1,553名。
糖尿病。
主要評価項目 喪失歯数,エックス線での骨吸収率。
2型糖尿病患者は非糖尿病患者に比べ,歯周病発症率は2.6倍高い。
糖尿病と歯周病は関係がある。
(レベル4)


 
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