(旧版)糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン
「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2008」の発刊によせて
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
理事長 山田了
2000年の糖尿病患者数は世界人口の2.8%(1億7,100万人)に達し,糖尿病は世界で290万人の過剰死亡(全死亡の5.2%)を引き起こしたと推定されている。わが国では,厚生労働省の平成14年糖尿病実態調査から糖尿病が強く疑われる人が740万人であり,糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると1,620万人にのぼることが明らかとなった。このように糖尿病は日本においても罹患度の高い疾患であり,われわれ歯科医師は日常の歯科診療において患者本人の認識も無いまま糖尿病患者を治療している可能性が高い。
2型糖尿病はインスリン分泌低下もしくはインスリン抵抗性を発症基盤とした相対的インスリン作用の不足を原因とするもので,全糖尿病患者中の90%以上を占める。現在日本人で激増している生活習慣病としての糖尿病はこの2型糖尿病であり,もともとインスリン分泌が低いという遺伝的背景に加えて高脂肪食の過剰摂取や運動不足による肥満にともなうインスリン抵抗性が原因となって高血糖をきたす。近年,「網膜症」,「神経障害」,「腎症」,「大血管障害」,「細小血管障害」に次いで,「歯周病」が6番目の合併症としてとらえられるようになった。すなわち,糖尿病患者には歯周病患者が多いことが示され,歯周病がインスリン抵抗性を増強させることもわかってきた。歯周炎の炎症部位から放出される内毒素がTNF-αなどインスリン抵抗性を惹起させるサイトカインを増加させることや,実際に,歯周病治療で血糖コントロールが改善されたことが示されている。
このような医療の現状をふまえて日本歯科医学会からNPO法人日本歯周病学会は「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン」作成の依頼を受けた。そこで,日本歯周病学会では,本来,「診療ガイドライン」が特定の臨床状況のもとで臨床医と患者が適切な医療について決断が行えるよう支援する目的で体系的に作成された文書であることをふまえ,「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2008」は糖尿病患者の歯周治療に関わる医療関係者を主たる対象として,臨床現場で遭遇する特定の問題に対してできる限り客観的なエビデンスに基づいて,検査・診断・治療に関する一定の方向性(推奨)を示し,現場の判断を支援することを意図して作成した。
本ガイドラインが,日本における多くの糖尿病患者で歯周病治療を行ううえでの一助となり,これを活用して適切な歯周病治療が糖尿病患者で円滑に行われ,国民の口腔保健の向上のみならず全身の健康の維持増進に寄与することを期待して止まない。
2型糖尿病はインスリン分泌低下もしくはインスリン抵抗性を発症基盤とした相対的インスリン作用の不足を原因とするもので,全糖尿病患者中の90%以上を占める。現在日本人で激増している生活習慣病としての糖尿病はこの2型糖尿病であり,もともとインスリン分泌が低いという遺伝的背景に加えて高脂肪食の過剰摂取や運動不足による肥満にともなうインスリン抵抗性が原因となって高血糖をきたす。近年,「網膜症」,「神経障害」,「腎症」,「大血管障害」,「細小血管障害」に次いで,「歯周病」が6番目の合併症としてとらえられるようになった。すなわち,糖尿病患者には歯周病患者が多いことが示され,歯周病がインスリン抵抗性を増強させることもわかってきた。歯周炎の炎症部位から放出される内毒素がTNF-αなどインスリン抵抗性を惹起させるサイトカインを増加させることや,実際に,歯周病治療で血糖コントロールが改善されたことが示されている。
このような医療の現状をふまえて日本歯科医学会からNPO法人日本歯周病学会は「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン」作成の依頼を受けた。そこで,日本歯周病学会では,本来,「診療ガイドライン」が特定の臨床状況のもとで臨床医と患者が適切な医療について決断が行えるよう支援する目的で体系的に作成された文書であることをふまえ,「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2008」は糖尿病患者の歯周治療に関わる医療関係者を主たる対象として,臨床現場で遭遇する特定の問題に対してできる限り客観的なエビデンスに基づいて,検査・診断・治療に関する一定の方向性(推奨)を示し,現場の判断を支援することを意図して作成した。
本ガイドラインが,日本における多くの糖尿病患者で歯周病治療を行ううえでの一助となり,これを活用して適切な歯周病治療が糖尿病患者で円滑に行われ,国民の口腔保健の向上のみならず全身の健康の維持増進に寄与することを期待して止まない。
平成21年3月