(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 81 担当者 遠藤平仁
カテゴリー 合併症・妊娠・授乳1
CQ 呼吸器疾患を合併したRA患者においてcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)の投与は有効かつ安全か?
推奨文 合併症を有するRA患者に対するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)の投与は,リスクとベネフィットを考慮することを推奨する。
推奨の強さ 強い 同意度 4.72
解説  RAの呼吸器合併症のなかで間質性肺炎(interstitial pneumonia;IP)が主に評価されている。RAの約7%にIPを合併する。しかし,他の呼吸器合併症(気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患など)について検討された研究は僅少である。また多くの臨床試験は呼吸器合併症を組み入れたときに除外している。したがって,リスクのある例に対する治療介入比較試験はなく,IP発症を予知する方法や頻度は解明されていない。また添付文書に,すべてのcsDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤)はIPを誘導する可能性があり,危険性より有益性が勝る場合投与すると記載されている。IPを合併したRAに対するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)を投与した症例報告を集積し解析した報告において,MTXとレフルノミドによる薬剤誘発IPは既存の肺病変の存在が危険因子であり,同様にTNF阻害薬による薬剤誘発IPの41.9%にRAに関連した既存のIPが存在していた。わが国の市販後調査におけるIPの合併率はインフリキシマブ(0.5%),エタネルセプト(0.6%),アダリムマブ(0.6%)と同等であった。しかしMTX併用に伴う例も含まれ,IPとTNF阻害薬との関連は不明である。IPの病型,病理組織型,呼吸機能との関連にて薬剤投与に関する比較対照をおいた多数例の比較試験はない。以上より,IPを含めた呼吸器合併症を有する例に,有効かつ安全なcsDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤)の開発や投与に際してリスクとベネフィットを十分検討する必要がある。
Q 呼吸器疾患を合併したRA患者においてcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)の投与は有効かつ安全か?
A 呼吸器疾患を合併したRA患者に対するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)の投与はリスクとベネフィットを考慮することを推奨する。


  エビデンスサマリー
エビデンスとして引用可能なコクランレビューはない。
 1980〜2012年までのPubMed,医学中央雑誌の検索結果は,検索式から得られた論文PubMed122件,医学中央雑誌134件,タイトルとアブストラクトから採用した論文PubMed6件,医学中央雑誌1件を選択した。このうち構造化抄録を作成した論文数はPubMed6件である。
 呼吸器合併症を有するRA患者はcsDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤)の臨床治験の組み入れ基準において除外項目になっており,特にbDMARD(生物学的製剤)の有効性を評価できるエビデンスはない。呼吸器合併症に関して,IPを合併したRA患者の生命予後についてbDMARD(生物学的製剤)の投与に伴う変化を検討する観察研究はあるが,bDMARD(生 物学的製剤),特にTNF阻害薬の有効性と安全性についてともに検討した観察研究はない。エタネルセプトは肺線維症合併RA症例にRCTで投与し有効かつ安全であるとの報告があるが,予後を主要評価項目として評価しておりエビデンスの有用性は低い(Weismon MH, et al. Rheumatology (Oxford). 2007;46:1122-1125,エビデンスレベル:very low)。逆に,IPを合併したRAにbDMARD(生物学的製剤)を投与することはIPの増加を引き起こさないが予後は悪化するという英国の疫学調査がある(Dixon WG, et al. Ann Rheum Dis. 2010;69:1086-1091,エビデンスレベル:very low)。しかし組み入れにバイアスがあり,また日本では症例報告のみで観察研究などもない。
 呼吸器合併症,特にIPを有するRAにおいてTNF阻害薬が安全であるエビデンスはない。特にMTXは既存のIPを増悪する可能性があり併用できない(Alarcon GS, et al. Ann Intern Med. 1997;127:356-364, エビデンスレベル:very low)。したがってIPを副作用として高率に合併する薬剤は既存の肺病変,特にIP病変を有する症例に投与することは避けるべきである。レフルノミドも重篤なIP病変を合併することがあり,既存の肺病変を有する症例において投与は避けるべきである。症例報告を集積したメタ解析(Roubille C, et al. Semin Arthritis Rheum.2014;43:613-626)において,既存の肺病変の存在は薬剤誘発IPの危険因子と報告されている。TNF阻害薬と関連したIP症例報告の41.9%はRAに関連した既存IP病変が存在した。しかしIP病変の病型病理組織,呼吸機能に基づき検討した報告,また合併した他の呼吸器疾患について検討した報告もない。したがって,呼吸器合併症,特にIPを有するRAにおいてはリスクを十分に考慮し治療法を検討すべきである。医学中央雑誌においてIP合併RAの治療介入はIPに対する免疫抑制薬効果について検討したものであり,ほかは症例報告のみでエビデンスとして採用できるものはない。IPはすべての治療薬において薬剤誘発性IPの報告がある。IPを有するRA診療は呼吸器内科専門医と連携しリスクとベネフィットを考慮し慎重に行うべきである。
エビデンスの質
(GRADE)
very low
該当するコクランレビュー なし
書誌情報
DOI

 
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