(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 77 | 担当者 | 小嶋俊久 |
カテゴリー | リハビリ1 | ||
CQ | 運動療法はRA治療において有用か? | ||
推奨文 | RA患者に対する運動療法を推奨する。 | 推奨の強さ | 強い | 同意度 | 4.95 |
解説 | RA患者における運動療法の有用性に関するエビデンスは限られるが,筋力および心肺機能を指標とした身体機能の向上,日常生活動作障害の改善については一貫して効果がみられた。また,運動負荷による関節破壊の進行や痛み,疾患活動性の増加などの有害性は認められなかった。さらに,患者の価値観に関するアンケート調査およびフォーカスグループでは,リハビリ治療に対する強い患者のニーズが明らかになった。
現在は薬物療法の進歩により疾患活動性の徹底したコントロールが可能であり,より積極的に運動療法に取り組む環境が整っている。身体機能の向上は,多くのRA患者が直面している加齢,生活習慣病,変形性関節症への対策にも有用と考えられ,RA患者に対する運動療法を強く推奨することとした。 今後,わが国の日常診療上,指導可能な運動療法について,方法,強度,頻度,それが適応される患者背景(既存の関節機能障害,残存する炎症の程度など)など,特殊な設備を要せず自宅で実行できるものも含め,具体的なプログラムの確立が必要である。 |
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Q | 運動療法はRA治療において有用か? | ||
A | RA患者に対する運動療法は有用である。 |
エビデンスサマリー
2009年に発表されたコクランレビューにおいては,1997〜2008年12月に報告されたRA患者における運動療法の効果に関するRCTから,介入方法,アウトカムに関する基準により8文献が選ばれた。介入方法は,指導者のもとでの週2回以上,20分以上, 6週間以上,最大心拍の55%以上の有酸素運動もしくは最大反復回数30〜50%の筋力トレーニングによる運動療法とした。アウトカムについては機能評価,有酸素能力,筋力,疼痛評価,疾患活動性,画像評価のうち1つ以上を含むものとした。Risk of biasの評価は1つはlow,残りの7つはmoderateであった。
短期(3ヵ月未満)の有酸素運動は有酸素能力向上効果(effect size:0.99(95%CI 0.29〜1.68))が,短期の有酸素運動と筋力トレーニングは有酸素能力と筋力の向上効果(0.47(0.01〜0.93))と痛みの軽減効果(-0.53(-1.9〜0.04))が,いずれもmoderateなエビデンスレベルで認められた。短期の水中エアロビクスの機能評価と有酸素能力向上への効果は限定的であった。長期の有酸素運動と筋力トレーニングについてもmoderateなエビデンスレベルで有酸素能力向上効果(0.46(0.22〜0.70))と筋力向上効果(0.49(-0.06〜1.04))が認められた。安全性に関しては,いずれの研究でも運動療法による疾患活動性や痛みの増悪,関節破壊の進行などの有害性は認められなかった。
その後の2012年7月31日までに発表された文献についてPubMedを検索した。299論文からタイトル,アブストラクトにより8論文を選び本文を精査し,そのうちコクランレビューで選定されたアウトカムのいずれかを評価していた4論文について構造化抄録を作成した。
抵抗運動に関する10RCTのメタ解析において(Baillet A, et al. Rheumatology(Oxford). 2012;51:519-527),抵抗運動による有意な筋力およびHAQの改善がmoderateなエビデンスレベルで認められた。バランス運動に関するシステマティックレビューでは(Silva KN, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2010;( 5 ):CD007648),該当文献なしと報告された。残り2文献は中等度〜低疾患活動性の患者群を対象に行われた小規模なRCTで(Breedland I, et al. Phys Ther.2011;91:879-893, Strasser B, et al. Clin Rheumatol. 2011;30:623-632),risk of biasの評価はいずれもhighであった。教育プログラムと並行して進める8週間の集団運動療法は有酸素能力の向上に効果があっ たが,重要アウトカムの改善はみられなかった。6ヵ月間の筋力・持久力トレーニングに関するRCTでは,疾患活動性,痛み,身体機能の改善を認めた。いずれのRCTにおいても介入による有害性はみられなかった。
同様に医学中央雑誌も検索したが,該当する論文はなかった。
以上より,RA患者における運動療法の有用性に関するエビデンスは限られているが,筋力および心肺機能を指標とした身体機能の向上,日常生活動作障害の改善効果については一貫性があり,またいずれの研究でも介入による有害性は認められなかった。重要アウトカムの改善に最も効果的な運動の種類,強度,頻度,期間および対象の特性についてさらなるエビデンスの蓄積が求められる。
短期(3ヵ月未満)の有酸素運動は有酸素能力向上効果(effect size:0.99(95%CI 0.29〜1.68))が,短期の有酸素運動と筋力トレーニングは有酸素能力と筋力の向上効果(0.47(0.01〜0.93))と痛みの軽減効果(-0.53(-1.9〜0.04))が,いずれもmoderateなエビデンスレベルで認められた。短期の水中エアロビクスの機能評価と有酸素能力向上への効果は限定的であった。長期の有酸素運動と筋力トレーニングについてもmoderateなエビデンスレベルで有酸素能力向上効果(0.46(0.22〜0.70))と筋力向上効果(0.49(-0.06〜1.04))が認められた。安全性に関しては,いずれの研究でも運動療法による疾患活動性や痛みの増悪,関節破壊の進行などの有害性は認められなかった。
その後の2012年7月31日までに発表された文献についてPubMedを検索した。299論文からタイトル,アブストラクトにより8論文を選び本文を精査し,そのうちコクランレビューで選定されたアウトカムのいずれかを評価していた4論文について構造化抄録を作成した。
抵抗運動に関する10RCTのメタ解析において(Baillet A, et al. Rheumatology(Oxford). 2012;51:519-527),抵抗運動による有意な筋力およびHAQの改善がmoderateなエビデンスレベルで認められた。バランス運動に関するシステマティックレビューでは(Silva KN, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2010;( 5 ):CD007648),該当文献なしと報告された。残り2文献は中等度〜低疾患活動性の患者群を対象に行われた小規模なRCTで(Breedland I, et al. Phys Ther.2011;91:879-893, Strasser B, et al. Clin Rheumatol. 2011;30:623-632),risk of biasの評価はいずれもhighであった。教育プログラムと並行して進める8週間の集団運動療法は有酸素能力の向上に効果があっ たが,重要アウトカムの改善はみられなかった。6ヵ月間の筋力・持久力トレーニングに関するRCTでは,疾患活動性,痛み,身体機能の改善を認めた。いずれのRCTにおいても介入による有害性はみられなかった。
同様に医学中央雑誌も検索したが,該当する論文はなかった。
以上より,RA患者における運動療法の有用性に関するエビデンスは限られているが,筋力および心肺機能を指標とした身体機能の向上,日常生活動作障害の改善効果については一貫性があり,またいずれの研究でも介入による有害性は認められなかった。重要アウトカムの改善に最も効果的な運動の種類,強度,頻度,期間および対象の特性についてさらなるエビデンスの蓄積が求められる。
エビデンスの質 (GRADE) |
moderate |
該当するコクランレビュー | あり |
書誌情報 | Hurkmans E, van der Giesen FJ, Vliet Vlieland TPM, Schoones J, Van den Ende ECHM. Dynamic exercise programs (aerobic capacity and/or muscle strength training) in patients with rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2009, Issue 4 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD006853.pub 2 |