(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 74 | 担当者 | 伊藤 宣 |
カテゴリー | 手術8 | ||
CQ | 人工足関節全置換術はRA治療において足関節固定術より有用か? | ||
推奨文 | RA患者の足関節障害に対する人工足関節全置換術,足関節固定術をいずれも推奨する。 | 推奨の強さ | 弱い | 同意度 | 4.21 |
解説 | 人工足関節全置換術(total ankle arthroplasty;TAA)は,欧米では20年以上前から,わが国においても近年かなり積極的に行われるようになった。一方,TAAの中~長期成績に対する危惧はいまだに大きく,また学会や論文での報告も少ない。また,足関節固定術が長期的に安定した成績が得られよく行われていることから,この2つの手術は優劣があるのか,あるいは適応はどうかという点について,十分わかっていない。このような現状から,今回リウマチ専門医の間で関心が高い項目として,このCQに対してエビデンスを抽出した。その結果,変形性関節症に対する手術法の比較に関しては一定数の論文が報告されており,①術後機能はTAAがよいか同等である,②手術関連の合併症はTAAが多い,との結果が得られた。RAに対してそれぞれの手術の中~長期成績があり,以上の結果を裏付けるものであった。この結果をそのままRAにあてはめるのには留保を要するが,治療薬の進歩によって,RAにおける関節変形が変形性関節症化しつつある現状では,将来的にRAと変形性関節症の治療方針が似通ったものになっていく可能性があり,今回の結果は一定の意義があると考えられる。一方,RAは多関節障害が特徴であり,隣接関節である距骨下関節,距舟関節,足趾関節の変形が重度である傾向が強く,また経年的悪化の可能性も高いことから,これらの結果すべてが単純にRAにあてはまるとはいえない。足関節固定術の方法についても,変形性足関節症では通常距腿関節のみの固定であるが,RAでは距骨下関節などを含めることもしばしばあり,比較には相当の注意を要する。どのようなときにどちらの術式を選択すべきかについては,今後の手術法やインプラントの進歩も待ちながら,エビデンスを積み重ねていく必要がある。 | ||
Q | RAの足関節障害に対する手術において,人工足関節全置換術は足関節固定術と比較して臨床成績,生存率が低く,合併症が多いか? | ||
A | RAの足関節障害に対し,人工足関節全置換術は足関節固定術と臨床成績,生存率とも同等ないしそれ以上の結果を示すが,合併症が多い。 |
エビデンスサマリー
TAAおよび足関節固定術についてのコクランレビューはない。また本ガイドラインは原則的に1998~2012年8月までの文献からエビデンスを抽出しているが,TAAと足関節固定術の比較論文が少ないため,1990~2013年までの論文を渉猟することとした。さらにRAに限ると直接比較論文は皆無であり,変形性関節症を含めることとした。その結果得られた論文(158論文)に重要と思われる論文(1論文)を追加し,① TAAと足関節固定術の直接比較論文,②TAAと足関節固定術を比較したシステマティックレビューあるいはメタ解析(直接比較でないものも含む),③RAにおけるTAAおよび足関節固定術それぞれの中~長期成績(7年以上)を選択し,21論文の構造化抄録を作成した。医学中央雑誌検索では126論文を渉猟した。
その結果,①変形性足関節症においては,足関節機能や日常生活機能は,両者で同等かTAAのほうがよい(Saltzman CL, et al. 2010, Slobogean GP, et al. 2010, Esparragoza L, et al. 2011, Krause FG, et al. 2011, Kwon DG, et al. 2011, Schuh R, et al. 2012),② TAAのほうが,術後合併症が多い(Saltzman CL, et al. 2010, Krause FG, et al. 2011),③ TAAのほうが,cost effectiveである(Courville XF, et al. 2011),④ 5年以上のフォローで,再手術率は同等か足関節固定術のほうが低いが,固定術は隣接関節への影響が多い(Kofoed H, et al. 1998, Haddad SL, et al. 2007, SooHoo NF, et al. 2007),⑤ RAに対する7~10年の成績で,再手術率は足関節固定術が0~10%(Takenouchi K, et al. 2009, Voutilainen N, et al. 2001, Belt EA, et al. 2001), TAA が6.6~24.5%(Kofoed H, et al. 1998, Skytta ET, et al. 2010, Jensen NC, et al. 2009),との結果を得た。直接比較論文については変形性関節症に対する結果であるものの,TAAのほうが機能評価は同等かよい傾向がある一方,合併症は多く,再手術率も高いといえる。
ただしRAでは他関節の影響が強く,特に隣接関節である距骨下関節,距舟関節,足趾関節の変形が重度である傾向が強く,また経年的悪化の可能性も高いことから,これらの結果すべてが単純にRAにあてはまるとはいえない。足関節固定術の方法についても,変形性足関節症では通常距腿関節のみの固定であるが,RAでは距骨下関節などを含めることもしばしばあり,比較には相当の注意を要する。またそれぞれの手術の手術適応やバックグラウンドの違いなどによるバイアスも無視できない。
その結果,①変形性足関節症においては,足関節機能や日常生活機能は,両者で同等かTAAのほうがよい(Saltzman CL, et al. 2010, Slobogean GP, et al. 2010, Esparragoza L, et al. 2011, Krause FG, et al. 2011, Kwon DG, et al. 2011, Schuh R, et al. 2012),② TAAのほうが,術後合併症が多い(Saltzman CL, et al. 2010, Krause FG, et al. 2011),③ TAAのほうが,cost effectiveである(Courville XF, et al. 2011),④ 5年以上のフォローで,再手術率は同等か足関節固定術のほうが低いが,固定術は隣接関節への影響が多い(Kofoed H, et al. 1998, Haddad SL, et al. 2007, SooHoo NF, et al. 2007),⑤ RAに対する7~10年の成績で,再手術率は足関節固定術が0~10%(Takenouchi K, et al. 2009, Voutilainen N, et al. 2001, Belt EA, et al. 2001), TAA が6.6~24.5%(Kofoed H, et al. 1998, Skytta ET, et al. 2010, Jensen NC, et al. 2009),との結果を得た。直接比較論文については変形性関節症に対する結果であるものの,TAAのほうが機能評価は同等かよい傾向がある一方,合併症は多く,再手術率も高いといえる。
ただしRAでは他関節の影響が強く,特に隣接関節である距骨下関節,距舟関節,足趾関節の変形が重度である傾向が強く,また経年的悪化の可能性も高いことから,これらの結果すべてが単純にRAにあてはまるとはいえない。足関節固定術の方法についても,変形性足関節症では通常距腿関節のみの固定であるが,RAでは距骨下関節などを含めることもしばしばあり,比較には相当の注意を要する。またそれぞれの手術の手術適応やバックグラウンドの違いなどによるバイアスも無視できない。
エビデンスの質 (GRADE) |
very low |
該当するコクランレビュー | なし |
書誌情報 | |
DOI |