(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 72 担当者 松下 功
カテゴリー 手術6
CQ RAの股関節障害に対するセメントレス人工股関節全置換術は,セメント人工股関節全置換術と同等の臨床成績・長期安定性が得られるか?
推奨文 RA患者の股関節障害に対するセメントおよびセメントレス人工股関節全置換術の成績は同等であり,ともに推奨する。
推奨の強さ 弱い 同意度 4.42
解説  RAの股関節障害に対するセメントレス人工股関節全置換術(total hip arthroplasty;THA)とセメントTHAを比較したエビデンスは限られており,またランダム化割り付け,盲検下での検討はないためエビデンスレベルは低い。しかし,ゆるみの発症率からみた臨床成績は,セメントレスTHAがセメントTHAより劣っているというエビデンスは認められない。したがって,RAに対するセメントレスTHAはセメントTHAと同様に推奨される治療法である。
 RAに対するセメントレスTHAのケースシリーズにおける臨床効果やX線学的評価の結果もおおむね良好である。しかし個々の症例においては,セメントレスTHAにおいて術中の大腿骨骨折と術後早期の沈み込みの報告が散見される。骨質が著しく脆弱なRA患者にセメントレスTHAを実施する場合は合併症の発生に注意を要する。セメントレスTHAとセメントTHAどちらにおいても,適切に手術を行うことで長期の良好な成績を獲得することが可能となる。
Q RAの股関節障害に対するセメントレス人工股関節全置換術は,セメント人工股関節全置換術と同等の臨床成績が得られるか?
A RAの股関節障害に対するセメントレス人工股関節全置換術は,セメント人工股関節全置換術と同等の臨床成績が得られる。


  エビデンスサマリー
検索した文献から,対象の80%以上がRAで平均経過観察期間が10年以上もしくは関節数が100以上を基準に,タイトルおよびアブストラクトを参考にして11文献を抽出した。
 Tangら(Tang WM, et al. Int Orthop. 2001;25:13-16)およびJanaら(Jana AK, et al. J Bone Joint Surg Br. 2001;83:686-690)は,RAに対するセメントレスTHAはセメントTHAに比して無菌性ゆるみの発生率および再置換率が少なく良好な成績であると報告している。一方Thomasonら(Thomason HC 3 rd, et al. J Arthroplasty. 2001;16:628-634)は,セメントレスTHAの成績が良好であることを述べたうえで,セメントレスステムが比較的高率(51関節中7関節)に沈み込みが生じることを報告した。Makelaら(Makela KT, et al. J Bone Joint Surg Am. 2011;93:178-186)によると,セメントレスTHA579関節,セメントTHA(loaded taper stem)1,535関節の検討において,無菌性ゆるみによる再置換をエンドポイントとした10年の生存率は,それぞれ96%(95%CI 94〜98),94%(95%CI 93〜96)で,セメントレスTHAはセメントTHAと同等の優れた臨床成績が確認された。その他のセメントレスTHAの報告で,無菌性ゆるみによる再置換をエンドポイントとした10年生存率が90%未満だった報告は,セメントレスステムでは認められず,セメントレスカップでは2編のみであった。Zwarteleら(Zwartele RE, et al. Arch Orthop Trauma Surg. 2012; 132:535-546)のシステマティックレビューでは,セメントカップに対するセメントレスカップのfailure RRは0.6(95%CI 0.14〜2.60),セメントステムに対するセメントレスステムのfailure RRは0.71(95%CI 0.06〜8.55)と報告されている。
エビデンスの質
(GRADE)
low
該当するコクランレビュー なし
書誌情報
DOI

 
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