(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 66 担当者 西田圭一郎
カテゴリー bDMARD(生物学的製剤) 8
CQ bDMARD(生物学的製剤)を休薬して手術を行ったほうが,bDMARD(生物学的製剤)を休薬しないで行うよりも,有害事象(SSI,フレアアップ)の発生は少ないか?
推奨文 整形外科手術の周術期にはbDMARD(生物学的製剤)の休薬を推奨する。
推奨の強さ 弱い 同意度 4.59
解説  周術期のbDMARD(生物学的製剤)の継続は手術部位感染(SSI),創傷治癒遅延などの合併症のリスクを上げる可能性がある。また,休薬によりRAの再燃が生じるおそれがあり,世界各国のガイドラインでは半減期を考慮した休薬を推奨している。TNF阻害薬以外のbDMARD(生物学的製剤)に周術期の休薬の要否に関する明確なエビデンスはない。本ガイドラインでは整形外科手術の周術期にbDMARD(生物学的製剤)を休薬した群と継続した群を比較した試験に絞り込んだが,いずれも後方視的試験であり,推奨の強さは弱いとなった。CQ75,76も参照されたい。
Q 整形外科手術の周術期にbDMARD(生物学的製剤)の休薬は必要か?
A 整形外科手術の周術期にはbDMARD(生物学的製剤)の休薬を推奨する。


  エビデンスサマリー
1995〜2012年8月の検索で94論文がヒットした。さらに臨床研究に絞り込み,ケースレポート11編(手術関連3編,うち1編は眼科領域),レビュー7 編,レター4編を除く11編の論文+周術期関連のケースレポート1編を精査した。エビデンスはTNF阻害薬にのみ存在し,アバタセプト,トシリズマブを含むその他のbDMARD(生物学的製剤)では報告はなかった。さらに,TNF阻害薬の休薬群と継続群を比較した論文は2編のみであった。
 Wendlingら(Wendling D, et al. Ann Rheum Dis. 2005;64:1378-1379)は39件の整形外科手術を含むRA30例50件の手術を後ろ向きに調査し,TNF阻害薬の周術期使用については休薬・継続にかかわらずリスクを上昇させないが,休薬はむしろ疾患の再燃に関連するとし,休薬が感染リスクを軽減させるという明確なエビデンスはないとしている。
   唯一の前向き研究はden Broederら(den Broeder AA, et al. J Rheumatol. 2007;34:689-695)の論文である。1,219件の手術のうちTNF阻害薬を使用していない1,023件と,休薬群104件,継続群92件を比較検討した。周術期にもTNF阻害薬を継続した患者は,術前に一時中止した患者に比べてSSIの粗発生率が50%高く,また創傷離開と出血が有意に高頻度で生じた。肘関節手術(OR 4.1,95%CI 1.6〜10.1),足部/足関節手術(OR 3.2,95%CI 1.6〜6.5),皮膚および創傷感染の既往(OR 13.8,95%CI 5.2〜 36.7)はSSIの危険因子であった。周術期のTNF阻害薬の使用はSSIの危険性を高めないと結論しているが,本研究では各コホートにおけるSSIの数は少なく,検出力が欠けていた可能性がある。
エビデンスの質
(GRADE)
moderate
該当するコクランレビュー なし
書誌情報
DOI

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す