(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 68 | 担当者 | 松下 功 |
カテゴリー | 手術2 | ||
CQ | RAの肩関節障害に対する人工肩関節全置換術は,上腕骨人工骨頭置換術よりも臨床成績が優れているか? | ||
推奨文 | RA患者の肩関節障害に対する人工肩関節全置換術,上腕骨人工骨頭置換術をともに推奨する。 | 推奨の強さ | 弱い | 同意度 | 4.39 |
解説 | RAの肩関節障害に対する人工肩関節全置換術(total shoulder arthroplasty;TSA)と上腕骨人工骨頭置換術を比較したエビデンスは限られており,RAにおけるTSAの臨床成績が上腕骨人工骨頭置換術の成績より優れているというエビデンスはない。RAの肩関節障害に対しTSAと上腕骨人工骨頭置換術はともに優れた除痛効果が報告されており,機能および可動域の改善においても2つの手術方法に大きな差はない。TSAにおける肩甲骨コンポーネントのゆるみの発生は少なくはないが,上腕骨人工骨頭置換術においては骨頭の中心性移動の問題がある。
腱板の状態が手術後の機能に大きく影響し,腱板の温存されているRA肩関節障害の場合にTSAの臨床成績は良好であり,また再置換率は低いと報告されている。軟部組織の状態にも注意しながら手術治療を検討したい。近年,人工肩関節および人工骨頭の機能・品質が向上していることから,RA肩関節障害に対し習熟した技術をもってTSAまたは上腕骨人工骨頭置換術を施行することにより,より良好な成績を期待することができると考えられる。 |
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Q | RAの肩関節障害に対する人工肩関節全置換術は,上腕骨人工骨頭置換術よりも臨床成績が優れているか? | ||
A | RAの肩関節障害に対する人工肩関節全置換術と上腕骨人工骨頭置換術の臨床成績は同等である。 |
エビデンスサマリー
検索した文献のなかから,対象症例の50% 以上がRAで平均経過観察期間が7年以上(邦文は5年以上)もしくは関節数が50関節以上の論文を基準に,タイトルおよびアブストラクトを参考にしてコクランレビュー1編を含む12文献を抽出した。
Sperlingら(Sperling JW, et al. J Shoulder Elbow Surg. 2007;16:683-690)はTSA187関節と人工骨頭置換術(HA)95関節での術後成績を比較したが,臨床成績と再置換率(TSA 8 %,HA 9 %)において差はないと述べている。一方,腱板が温存されている症例においてTSAの臨床成績がより優れており,腱板温存時の生存率がTSAで高いこと(10年生存率 TSA 97%,HA 80%)も報告した。TSAとHAの臨床成績を同時に検討しているWakitaniら (Wakitani S, et al. J Rheumatol. 1999;26:41-46),Trailら(Trail IA, et al. J Bone Joint Surg Br.2002;84:1121-1125)の報告でも,機能改善においてTSAとHAに有意な差はなかったと述べている。
TSAのケースシリーズにおいて,肩甲骨コンポーネントのゆるみが比較的高率(0〜40%前後)に確認される。そのなかでStewartら(Stewart MP, et al. J Bone Joint Surg Br. 1997;79:68-72)は腱板断裂がゆるみに大きな影響を及ぼすことを述べている。一方,HAにおいては骨頭の中心性移動が問題となるが,Trailらは2mm超の骨頭の中心性移動を16%に認めたと報告した。
TSAおよびHAともゆるみや移動の問題が報告されるが,再置換術をエンドポイントとした5〜10年の生存率はおおむね90%以上である。
Sperlingら(Sperling JW, et al. J Shoulder Elbow Surg. 2007;16:683-690)はTSA187関節と人工骨頭置換術(HA)95関節での術後成績を比較したが,臨床成績と再置換率(TSA 8 %,HA 9 %)において差はないと述べている。一方,腱板が温存されている症例においてTSAの臨床成績がより優れており,腱板温存時の生存率がTSAで高いこと(10年生存率 TSA 97%,HA 80%)も報告した。TSAとHAの臨床成績を同時に検討しているWakitaniら (Wakitani S, et al. J Rheumatol. 1999;26:41-46),Trailら(Trail IA, et al. J Bone Joint Surg Br.2002;84:1121-1125)の報告でも,機能改善においてTSAとHAに有意な差はなかったと述べている。
TSAのケースシリーズにおいて,肩甲骨コンポーネントのゆるみが比較的高率(0〜40%前後)に確認される。そのなかでStewartら(Stewart MP, et al. J Bone Joint Surg Br. 1997;79:68-72)は腱板断裂がゆるみに大きな影響を及ぼすことを述べている。一方,HAにおいては骨頭の中心性移動が問題となるが,Trailらは2mm超の骨頭の中心性移動を16%に認めたと報告した。
TSAおよびHAともゆるみや移動の問題が報告されるが,再置換術をエンドポイントとした5〜10年の生存率はおおむね90%以上である。
エビデンスの質 (GRADE) |
low |
該当するコクランレビュー | あり |
書誌情報 | Christie A, Dagfinrud H, Engen Matre K, Flaatten HI, Ringen Osnes H, Hagen KB. Surgical interventions for the rheumatoid shoulder. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010, Issue 1 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD006188. pub 2 |