(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 38-44 | 担当者 | 平田信太郎 |
カテゴリー | bDMARD(生物学的製剤) 4 | ||
CQ | ゴリムマブはRA治療において有効かつ安全か? | ||
推奨文 | 疾患活動性を有するRA患者に対してゴリムマブ投与を推奨する。ただし個々の患者のリスクとベネフィットを勘案して適応を決めるべきである。 | 推奨の強さ | 強い | 同意度 | 4.84 |
解説 | ゴリムマブはわが国で4番目に発売されたTNF阻害薬であり,基本的には先行薬剤と同様のプロファイルを有すると考えられる。bDMARD(生物学的製剤)のなかでの製剤選択および症例選択はいまだ検討中の課題であり,また安全性に関するエビデンスレベルは有効性に関するエビデンスと比べいまだ十分とはいえず,個々の患者のリスクとベネフィットを勘案して適応を慎重に決定するべきであることを強調したい。 | ||
Q | ①ゴリムマブはRAの疾患活動性制御に有効か? ②ゴリムマブはRAの関節破壊制御に有効か? ③ゴリムマブはRAの機能障害制御に有効か? ④ゴリムマブはRA患者に使用した際,有害事象による薬剤中止を増加させるか? ⑤ゴリムマブはRA患者に使用した際,重篤な有害事象を増加させるか? ⑥ゴリムマブはRA患者に使用した際,感染症を増加させるか? ⑦ゴリムマブはRA患者に使用した際,死亡を増加させるか? | ||
A |
①有効である。 ②有効である。 ③有効である。 ④増加させるとはいえない。 ⑤増加させるとはいえない。 ⑥増加させるとはいえない。 ⑦増加させるとはいえない。 |
エビデンスサマリー
コクランレビューにおいては,ゴリムマブ(GLM)に関する4つのRCTが選ばれた。Risk of biasの評価では,いずれもlow risk of biasと判断された。
疾患活動性制御については,MTX併用でのGLM 50mgの臨床試験(GLM 50mg 4週ごと+MTX vs プラセボ div. + MTX)では,14~24週において4つのRCTで合計919例のACR20,50,70,good EULAR response,DAS remissionが検討されている。プラセボ群に対するGLM群のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれACR20で 1.53(1.23~1.91),ACR50で2.57(1.34~4.94),ACR70で2.80(1.31~5.98),good EULAR response で1.47(1.15~1.89),DAS remissionのリスク差(M-H,Random,95%CI)は0.10(0.06~0.14)であった。MTX併用でのGLM 100mgの 臨床試験(GLM 100mg 4 週ごと+MTX vs プラセボ div. +MTX)でも,14~24週において4つのRCTで合計918例のACR20,50,70,good EULAR response,DAS remissionが検討されている。プラセボ群に対するGLM群のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれACR20で1.56(1.22~2.01),ACR50で2.43(1.25~4.74),ACR70で2.41(0.81~7.15),good EULAR responseで1.42(1.11~1.82),DAS remissionで6.28(1.37~28.78)であった。
関節破壊制御については,コクランレビューにおいて選ばれたGLMの4つの臨床試験においては,関節破壊制御についての記述はいずれも含まれていない。コクランレビュー以降2010~2012年に発表された文献については,PubMedおよび医学中央雑誌を検索するとそれぞれ95,31の文献がヒットし,そのうちEmeryらの論文(Emery P,et al. Arthritis Rheum. 2011;63:1200-1210)においてGO-BEFORE試験,GO-FORWARD試験,Tanakaらの論文(Tanaka Y,et al. Ann Rheum Dis. 2012; 71:817-824)においてGO-FORTH試験の関節破壊制御の記述があり,いずれもGLM群で関節破壊進行が抑制され,GLMはRAの関節破壊制御に有効である可能性が示唆された。
機能障害制御については,MTX併用でのGLMの臨床試験(GLM 50 or 100 mg 4週ごと+MTX vs プラセボ div.+ MTX)で1つのRCTでHAQスコアが検討されている。GLM 50,100mgいずれも308例で14週におけるHAQスコアが検討され,プラセボ群に対するGLM群のMD(IV,Random,95%CI) は, 50mgでは-0.20( -0.25~-0.15),100mgでは-0.30(-0.36~-0.24)と,いずれも有意にGLM群で低値であった。
有害事象による薬剤中止については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,14~24週における全薬剤中止および14~16週における有害事象による薬剤中止が検討されている。全薬剤中止は4つのRCTで合計1,419例で検討され,プラセボ群と比較した際の全薬剤中止のRR (M-H,Random,95%CI)は0.57(0.40~0.82)とGLM群で少なかった。一方,有害事象による薬剤中止は3つのRCTで合計942例で検討され,RR(M-H,Random,95%CI)は0.54(0.28~1.07)であり,GLMが有害事象による薬剤中止を明らかに増加させる根拠はなかった。
全有害事象および重篤な有害事象については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4 週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,16~24週における全有害事象および重篤な有害事象が検討されている。いずれも4つのRCTで合計1,418例で検討され,プラセボ群と比較した際の全有害事象のRR(M-H,Random,95%CI)は1.04(0.97~1.12),重篤な有害事象のRR(M-H,Random,95%CI)は1.09(0.54~2.18)であり,GLMが全有害事象ならびに重篤な有害事象を明らかに増加させる根拠はなかった。
感染症については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4 週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,16~24週における全感染症および重篤な感染症が検討されている。いずれも4つのRCT で合計1,418例で検討され,プラセボ群と比較した際の全感染症のRR(M-H,Random,95%CI)は0.97(0.82~1.16),重篤な有害事象のRR(M-H,Random,95%CI) は1.31(0.57~2.97)であり,GLMが全感染症ならびに重篤な感染症を明らかに増加させる根拠はなかった。
死亡については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,24~52週における全死亡が検討されている。全死亡は4つのRCTで合計1,419例で検討され,プラセボ群と比較した際の全死亡のRR(M-H,Random,95%CI)は0.69(0.05~9.73)であり,GLM が全死亡を明らかに増加させる根拠はなかった。
以上より,コクランレビューにおいて,GLMはMTX併用療法において,プラセボ群と比較し疾患活動性制御,関節破壊制御,機能障害制御のいずれに対しても明らかに良好な効果をもたらすことが示され,一方,有害事象による薬剤中止,全有害事象および重篤な有害事象,感染症,死亡のいずれも明らかに増加させるとはいえないことが示唆された。
さらに,コクランレビュー以降2010~2012年に発表された文献についても PubMedおよび医学中央雑誌を検索しそれぞれ101,31の文献がヒットしたが,関節破壊制御に関する上記検討を除き,いずれもコクランレビューで選択された文献のサブ解析または同様の結果を示す研究であり,上記結論は不変であった。
疾患活動性制御については,MTX併用でのGLM 50mgの臨床試験(GLM 50mg 4週ごと+MTX vs プラセボ div. + MTX)では,14~24週において4つのRCTで合計919例のACR20,50,70,good EULAR response,DAS remissionが検討されている。プラセボ群に対するGLM群のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれACR20で 1.53(1.23~1.91),ACR50で2.57(1.34~4.94),ACR70で2.80(1.31~5.98),good EULAR response で1.47(1.15~1.89),DAS remissionのリスク差(M-H,Random,95%CI)は0.10(0.06~0.14)であった。MTX併用でのGLM 100mgの 臨床試験(GLM 100mg 4 週ごと+MTX vs プラセボ div. +MTX)でも,14~24週において4つのRCTで合計918例のACR20,50,70,good EULAR response,DAS remissionが検討されている。プラセボ群に対するGLM群のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれACR20で1.56(1.22~2.01),ACR50で2.43(1.25~4.74),ACR70で2.41(0.81~7.15),good EULAR responseで1.42(1.11~1.82),DAS remissionで6.28(1.37~28.78)であった。
関節破壊制御については,コクランレビューにおいて選ばれたGLMの4つの臨床試験においては,関節破壊制御についての記述はいずれも含まれていない。コクランレビュー以降2010~2012年に発表された文献については,PubMedおよび医学中央雑誌を検索するとそれぞれ95,31の文献がヒットし,そのうちEmeryらの論文(Emery P,et al. Arthritis Rheum. 2011;63:1200-1210)においてGO-BEFORE試験,GO-FORWARD試験,Tanakaらの論文(Tanaka Y,et al. Ann Rheum Dis. 2012; 71:817-824)においてGO-FORTH試験の関節破壊制御の記述があり,いずれもGLM群で関節破壊進行が抑制され,GLMはRAの関節破壊制御に有効である可能性が示唆された。
機能障害制御については,MTX併用でのGLMの臨床試験(GLM 50 or 100 mg 4週ごと+MTX vs プラセボ div.+ MTX)で1つのRCTでHAQスコアが検討されている。GLM 50,100mgいずれも308例で14週におけるHAQスコアが検討され,プラセボ群に対するGLM群のMD(IV,Random,95%CI) は, 50mgでは-0.20( -0.25~-0.15),100mgでは-0.30(-0.36~-0.24)と,いずれも有意にGLM群で低値であった。
有害事象による薬剤中止については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,14~24週における全薬剤中止および14~16週における有害事象による薬剤中止が検討されている。全薬剤中止は4つのRCTで合計1,419例で検討され,プラセボ群と比較した際の全薬剤中止のRR (M-H,Random,95%CI)は0.57(0.40~0.82)とGLM群で少なかった。一方,有害事象による薬剤中止は3つのRCTで合計942例で検討され,RR(M-H,Random,95%CI)は0.54(0.28~1.07)であり,GLMが有害事象による薬剤中止を明らかに増加させる根拠はなかった。
全有害事象および重篤な有害事象については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4 週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,16~24週における全有害事象および重篤な有害事象が検討されている。いずれも4つのRCTで合計1,418例で検討され,プラセボ群と比較した際の全有害事象のRR(M-H,Random,95%CI)は1.04(0.97~1.12),重篤な有害事象のRR(M-H,Random,95%CI)は1.09(0.54~2.18)であり,GLMが全有害事象ならびに重篤な有害事象を明らかに増加させる根拠はなかった。
感染症については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4 週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,16~24週における全感染症および重篤な感染症が検討されている。いずれも4つのRCT で合計1,418例で検討され,プラセボ群と比較した際の全感染症のRR(M-H,Random,95%CI)は0.97(0.82~1.16),重篤な有害事象のRR(M-H,Random,95%CI) は1.31(0.57~2.97)であり,GLMが全感染症ならびに重篤な感染症を明らかに増加させる根拠はなかった。
死亡については,MTX併用でのGLMの4つのRCT(GLM 50 or 100 mg 2 or 4週ごと+MTX vs プラセボ div.+MTX)で,24~52週における全死亡が検討されている。全死亡は4つのRCTで合計1,419例で検討され,プラセボ群と比較した際の全死亡のRR(M-H,Random,95%CI)は0.69(0.05~9.73)であり,GLM が全死亡を明らかに増加させる根拠はなかった。
以上より,コクランレビューにおいて,GLMはMTX併用療法において,プラセボ群と比較し疾患活動性制御,関節破壊制御,機能障害制御のいずれに対しても明らかに良好な効果をもたらすことが示され,一方,有害事象による薬剤中止,全有害事象および重篤な有害事象,感染症,死亡のいずれも明らかに増加させるとはいえないことが示唆された。
さらに,コクランレビュー以降2010~2012年に発表された文献についても PubMedおよび医学中央雑誌を検索しそれぞれ101,31の文献がヒットしたが,関節破壊制御に関する上記検討を除き,いずれもコクランレビューで選択された文献のサブ解析または同様の結果を示す研究であり,上記結論は不変であった。
エビデンスの質 (GRADE) |
high |
該当するコクランレビュー | あり |
書誌情報 | Singh JA,Noorbaloochi S,Singh G. Golimumab for rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010,Issue 1 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD008341 |