(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 31-37 担当者 平田信太郎
カテゴリー bDMARD(生物学的製剤) 3
CQ アダリムマブはRA治療において有効かつ安全か?
推奨文 疾患活動性を有するRA患者に対してアダリムマブ投与を推奨する。ただし個々の患者のリスクとベネフィットを勘案して適応を決めるべきである。
推奨の強さ 強い 同意度 4.95
解説  アダリムマブは2008年にわが国で3番目に発売されたTNF阻害薬であり,2013年時点で世界的にすべての薬剤のなかで最も売上高の高い製剤となっている。しかしbDMARD(生物学的製剤)のなかでの製剤選択および症例選択はいまだ検討中の課題であり,また安全性に関するエビデンスレベルは有効性に関するエビデンスと比べいまだ十分とはいえず,個々の患者のリスクとベネフィットを勘案して適応を慎重に決定するべきであることを強調したい。
Q ①アダリムマブはRAの疾患活動性制御に有効か?
②アダリムマブはRAの関節破壊制御に有効か?
③アダリムマブはRAの機能障害制御に有効か?
④アダリムマブはRA患者に使用した際,有害事象による薬剤中止を増加させるか?
⑤アダリムマブはRA患者に使用した際,重篤な有害事象を増加させるか?
⑥アダリムマブはRA患者に使用した際,感染症を増加させるか?
⑦アダリムマブはRA患者に使用した際,死亡を増加させるか?
A ①有効である。
②有効である。
③有効である。
④増加させるとはいえない。
⑤増加させるとはいえない。
⑥増加させるとはいえない。
⑦未検討


  エビデンスサマリー
コクランレビューにおいては,アダリムマブ(ADA)に関するRCTは全部で6つ選ばれ,うち4つではMTX(or DMARD)併用療法が, 3つではMTX(or DMARD)非併用(単剤)療法が対象とされた。コクランレビューではこれら2つに分けて解析されている。Risk of biasの評価では, 2つがlow risk of bias,4つがmoderate risk of biasと判断された。

 疾患活動性制御については,MTX(or DMARD)併用療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c.+MTX(or DMARD)vs プラセボ s.c.+MTX(or DMARD))では,4つのRCTでACR20,50が,3つのRCTでACR70が検討されている。ACR20は4週(文献数1 ),16週( 1 ),24週( 3 ),52週( 1 ),ACR50は4週( 1 ),24週( 3 ),52週( 1 ),ACR70は24週( 3 ),52週( 1 )において,またADAの用法・用量は20mg 毎週,20,40,80mg 隔週と文献によりさまざまであるが,最も多く検討されている24週の40mg 隔週投与は3つの文献で合計1,067例が検討され,ACR20のRR(M-H,Random,95%CI)は2.24(1.43~ 3.52),ACR50では3.73(2.21~6.29),ACR70では5.14(2.14~8.41)といずれもプラセボ群に比べADA群で優れていた。また,MTX(or DMARD)非併用(単剤)療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c. 単剤 vs プラセボs.c.)では,3つのRCTでACR20,50,70が,1つのRCTでDAS28が検討された。ACR20,50,70は2 週(文献数2),12週( 1 ),24/26週( 2 ),DAS28は2 週( 1 ),12週( 1 ),26週( 1 )において,またADAの用法・用量は20,40,80mg 毎週,20,40mg隔週と文献によりさまざまであるが,24/26週の40mg隔週投与は2つの文献で合計328例が検討され,ACR20のRR(M-H,Random,95%CI)は1.91(1.17~ 3.10),ACR50では2.84(1.58~5.12),ACR70では7.33(2.25~23.90)といずれもプラセボ群に比べADA群で優れていた。またDAS28は1文献223例が検討され,26週の40mg 隔週投与におけるプラセボ群に対するADA群のMD(IV,Random,95%CI)は-1.0(-1.38~-0.62)と有意にADA群で低値であった。

   関節破壊制御については,MTX(or DMARD)併用療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c.+MTX(or DMARD)vs プラセボ s.c.+MTX(or DMARD))では,1つのRCTで52週のmodified Sharpスコアが検討されている。ADAの用法・用量は20mg 毎週,40mg隔週が検討された。52週の40mg隔週投与は355例が検討され,プラセボ群に対するADA群のmodified SharpスコアのMD(IV,Random,95%CI)は-1.6(-2.37~-0.83)で,プラセボ群に比べADA群で優れていた。また,MTX(or DMARD)非併用(単剤)療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c. 単剤 vs プラセボs.c.)では,X線画像による関節破壊に対する効果をアウトカムとして設定されたRCTはなかった。

   機能障害制御については,MTX(or DMARD)併用療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c.+MTX(or DMARD)vs プラセボ s.c.+MTX(or DMARD))では,2つのRCTで24,52週のHAQ-DIが検討されている。ADAの用法・用量は20mg毎週,20,40,80mg 隔週が検討された。24週の40mg 隔週投与は2つのRCTで合計536例が検討され,プラセボ群に対するADA群のHAQのMD(IV,Random,95%CI)は-0.33(-0.42~-0.23)で,プラセボ群に比べADA群で有意に低値であった。また,MTX(or DMARD)非併用(単剤)療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c. 単剤 vs プラセボ s.c.)では, 2つのRCTで2,12,26週のHAQ-DIが検討されている。ADAの用法・用量は20,40,80mg 毎週,20,40mg 隔週が検討された。26週の40mg隔週投与は1つのRCTで223例が検討され,プラセボ群に対するADA群のHAQのMD(IV,Random,95%CI)は-0.31(-0.45~-0.17)で,プラセボ群に比べADA群で有意に低値であった。

   有害事象による薬剤中止については,MTX(or DMARD)併用療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c.+MTX (or DMARD)vs プラセボs.c.+MTX(or DMARD))では,3つのRCTで全有害事象が,2つのRCTで薬剤中止が,4つのRCTで有害事象による薬剤中止が検討されている。全有害事象で合計1,186例が検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は1.04(0.99~1.08),薬剤中止は合計1,163例で検討され0.94(0.74~1.19),有害事象による薬剤中止は合計1,457例で検討され1.37(0.83~2.25)といずれもプラセボ群と比べADA群で明らかな増加はみられなかった。また,MTX(or DMARD)非併用(単剤)療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c. 単剤 vs プラセボs.c.)では,2つのRCTで全有害事象が,2つのRCTで薬剤中止が,3つのRCTで有害事象による薬剤中止が検討されている。全有害事象は合計676例で検討されたが,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)はFurstらの試験(Furst DE,et al. J Rheumatol. 2003;30:2563-2571)では合計132例で1.68 (1.29~2.20),van de Putteらの試験(van de Putte LB, et al. Ann Rheum Dis. 2004;63:508-516)では合計544例で1.04(0.99~1.08)であり, 2つのRCTに重大な乖離がみられたためメタ解析は実施されていない。薬剤中止は合計838例で検討され0.47(0.38~0.57)とADA群で明らかに中止が少なかった。有害事象による薬剤中止は合計933例で検討され2.34(0.67~8.10)とプラセボ群とADA群で明らかな差はみられなかった。

   重篤な有害事象については,MTX(or DMARD)併用療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c.+MTX(or DMARD)vs プラセボs.c.+MTX(or DMARD))では,2つのRCTで重篤な有害事象が検討されている。合計567例が検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は0.74(0.39~1.40)と,プラセボ群と比べADA群で明らかな増加はみられなかった。また,MTX(or DMARD)非併用(単剤)療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c. 単剤 vs プラセボs.c.)では,3つのRCTで重篤な有害事象が検討されている。合計933例が検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は0.84(0.54~1.28)と,プラセボ群と比べADA群で明らかな増加はみられなかった。

   感染症については,MTX(or DMARD)併用療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c.+MTX(or DMARD)vs プラセボs.c.+MTX(or DMARD))では,1つのRCTで全感染症が,3つのRCTで重篤な感染症が検討されている。全感染症については合計531例が検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は1.02(0.87~1.20)と,プラセボ群と比べADA群で明らかな増加はみられなかった。重篤な感染症については,Furstらの試験では531例の検討で0.69(0.20~2.42),Keystoneらの試験(Keystone EC,et al. Arthritis Rheum. 2004;50: 1400-1411)では619例の検討で7.64(1.02~57.18),Rauらの試験(Rau R,et al. Scand J Rheumatol. 2004;33:145-153)では36例の検討で0.0(0.0~0.0)と重大な乖離がみられたためメタ解析は行われていない。また,MTX(or DMARD)非併用(単剤)療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c. 単剤 vs プラセボs.c.)では, 1つのRCTで全感染症が,3つのRCTで重篤な感染症が検討されている。全感染症については合計105例が検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は1.39(0.87~2.21)であった。重篤な感染症については合計933例が検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は4.02(0.53~30.59)であった。いずれもプラセボ群と比べADA群で明らかな増加はみられなかった。

   死亡については,MTX(or DMARD)併用療法についてのADAの臨床試験(ADA s.c.+MTX(or DMARD)vs プラセボs.c.+MTX(or DMARD))およびMTX(or DMARD)非併用(単剤)療法のいずれにおいても,死亡に関する検討は行われなかったため結論は出ていない。

   以上より,コクランレビューにおいて,ADAはMTX(or DMARD)療法およびMTX(or DMARD)非併用(単剤)療法のいずれにおいても,プラセボ群と比較し疾患活動性制御,関節破壊制御,機能障害制御に対し明らかに良好な効果をもたらすことが示され,一方,有害事象による薬剤中止,重篤な有害事象,感染症を明らかに増加させるとはいえないことが示唆された。死亡については未検討であり,今後明らかにされることが期待される。

   さらに,コクランレビュー以降,2009~2012年に発表された文献についても PubMedおよび医学中央雑誌を検索しそれぞれ26,38のRCTがヒットした。これらを追加でレビューしたが,いずれもコクランレビューで選択された文献のサブ解析または同様の結果を示す研究であり,上記結論は不変であった。
エビデンスの質
(GRADE)
high
該当するコクランレビュー あり
書誌情報 Navarro-Sarabia F,Ariza-Ariza R,Hernandez-Cruz B,Villanueva I. Adalimumab for treating rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2005,Issue 3 .
DOI 10.1002/14651858.CD005113. pub 2

 
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