(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 15 | 担当者 | 金子祐子 |
カテゴリー | NSAID 1 | ||
CQ | RA患者に対してNSAID投与は非投与に比較して有用か? | ||
推奨文 | RA患者の臨床症状改善を目的としてNSAID投与を推奨する。 | 推奨の強さ | 強い | 同意度 | 4.83 |
解説 | RA患者に対するNSAID投与は,疼痛を中心とする臨床症状改善には有効であり,強い推奨とした。画像的関節破壊抑制効果に関するエビデンスはなく,RAの治療としてはDMARDを使用すべきである。 DMARDの中心的薬剤である少量MTXとの併用でも有害事象の増加は認められなかった。セレコキシブについては非選択性NSAIDと同様の鎮痛効果と,消化管障害軽減が認められた。鎮痛薬併用については,他のNSAID,オピオイド,麻酔薬などについて,いずれもNSAID単剤を併用療法が上回るエビデンスは認められなかった。アセトアミノフェン(パラセタモール)における有効性は不明である。 現在の薬物療法の進歩により,長期的なNSAID使用は減少傾向にあるが,疾患活動性がコントロールされるまでに,あるいはコントロール後も関節構造の破壊に伴う痛みについては,依然として鎮痛薬の必要性は高い。NSAID以外にもさまざまな作用の鎮痛薬が開発されており,それらのRAに対する有効性,最適な使用法については,今後の確立が必要である。 |
||
Q | RAにおけるNSAID投与は有効かつ安全か? | ||
A | RAに対するNSAID投与は,鎮痛を中心とする臨床症状改善には有効である。画像的関節破壊抑制効果に関するエビデンスはない。セレコキシブも同様の効果が認められる。鎮痛薬併用は奨められない。 |
エビデンスサマリー
関節炎に対するNSAIDの使用に関して4つのコクランレビューが作成されている。2004年に発表され2008年に更新されたNSAIDとアセトアミノフェン(APAP,パラセタモール)の比較,2011年に発表された少量MTX使用中炎症性関節炎患者のNSAID併用における安全性,2002年に発表されたセレコキシブ(CXB)の有用性,2011年に発表された鎮痛薬の多剤併用療法についてである。それぞれのrisk of biasは,順にhigh,moderate,low,highであった。
RAに対するNSAIDとAPAPの比較は4つのクロスオーバーデザインのRCTが採択された。いずれも30年以上前で,割り付けに関する情報がなく,盲検化も不十分な可能性があり,少人数,短期間の試験である。Carry-over effectなどについても考慮されておらず,これまでの試験結果からは,NSAIDとAPAPの比較は困難であった。少量MTX使用中炎症性関節炎患者のNSAID併用における安全性についてはRAを対象として17論文が選択され,RCT3 ,観察研究14で,risk of biasはlow 5 ,moderate 2 ,high 2 ,unclear 8であった。RCTはいずれも副次的評価の結果であり,観察研究は少人数で記述的なものが多く,十分な評価は困難であった。いずれの論文においてもNSAID併用は,MTX肺炎(67 vs 46%),肝障害(19.9 vs 5.3%),腎障害(GFR 減少 22 vs 11mL/分)とされているが,有意な増加やMTX中止の増加を認めなかった。抗炎症作用量のアスピリン(約2g/日)では肝障害,可逆的腎障害を認めた。CXBに関する検討では,OA,RA含めて計5RCTが選択された。いずれもlow risk of biasで,比較対照はプラセボ,ナプロキセン,ジクロフェナク,イブプロフェンである。CXBはプラセボを除くこれら薬剤とほぼ同等にRAの症状をコントロールできた。ACR20達成率については,CXB 400mg/日,800mg/日群で42/82(51%),43/82(52%)と,プラセボ群25/85(29%)に対して明らかな差異を示した。この6ヵ月間でのCXBの試験は,上部消化管障害の低減を示せたが,その長期間でのエビデンスと,心疾患予防目的に低用量アスピリン内服中の患者における付加的な有用性を示すことはできなかった。内視鏡での3mm以上の潰瘍についてのCXB群とプラセボ群との比較は,100mg/日,200mg/日,400mg/日において有意な差を認めず(effect size:RR 1.51(95% CI 0.48~4.75), 1.02(0.30~3.54),1.52(0.47~4.91)),ナプロキセン(0.22(0.15~0.32)),ジクロフェナク(0.21(0.13~0.34))においてはCXBが有意に低リスクであった。鎮痛薬併用に関しては,計23のRCTとCCT(全912名)が選ばれた。すべての試験のrisk of biasはhighで,鎮痛薬の単独療法が併用療法を上回る有用性のエビデンスは不十分であった。併用薬の種類はanalgesic,neuromodulator,他のNSAID,オピオイドなどで,23試験のうち18試験(78%)はどちらかが有用であるものであったが,NSAID単独療法と併用療法の有用性を示すものではなく,残る5試験(22%)にも疾患活動性が抑制されている際に残存する痛みに対する鎮痛薬の併用療法の有用性を示唆する試験はなかった。効果不十分や安全性による中断についての報告は不十分なエビデンスであったが,全体として単独療法と併用療法との差は存在しなかった。
その後の2012年7月までに発表された文献についてPubMed検索をした。比較的新しく,日本で汎用されるNSAIDに関するRCT1件について構造化抄録を作成した。米国における多施設第Ⅲ相二重盲検化ランダム化割り付け12週試験(Furst DE, et al. J Rheumatol. 2002;29:436-446)は,low risk of bias で,メロキシカム15mg/日,22.5mg/日群,ジクロフェナク150mg/日群で患者全般評価,圧痛関節数,腫脹関節数などが有意に改善したが, CRP,ESRには改善がなかった。
同様に医学中央雑誌を検索し,日本でのみ使用され,かつ汎用されているロキソプロフェンに関するRCT 1件について構造化抄録を作成した。日本の45施設におけるロキソプロフェンとインドメタシンの6週比較試験(五十嵐三都男,他.リウマチ.1985;25:61-72)では, risk of biasはmoderateで,有効性に差はなく安全性はロキソプロフェンが高かった。NSAIDの関節破壊抑制効果に関するエビデンスは認めなかった。
RAに対するNSAIDとAPAPの比較は4つのクロスオーバーデザインのRCTが採択された。いずれも30年以上前で,割り付けに関する情報がなく,盲検化も不十分な可能性があり,少人数,短期間の試験である。Carry-over effectなどについても考慮されておらず,これまでの試験結果からは,NSAIDとAPAPの比較は困難であった。少量MTX使用中炎症性関節炎患者のNSAID併用における安全性についてはRAを対象として17論文が選択され,RCT3 ,観察研究14で,risk of biasはlow 5 ,moderate 2 ,high 2 ,unclear 8であった。RCTはいずれも副次的評価の結果であり,観察研究は少人数で記述的なものが多く,十分な評価は困難であった。いずれの論文においてもNSAID併用は,MTX肺炎(67 vs 46%),肝障害(19.9 vs 5.3%),腎障害(GFR 減少 22 vs 11mL/分)とされているが,有意な増加やMTX中止の増加を認めなかった。抗炎症作用量のアスピリン(約2g/日)では肝障害,可逆的腎障害を認めた。CXBに関する検討では,OA,RA含めて計5RCTが選択された。いずれもlow risk of biasで,比較対照はプラセボ,ナプロキセン,ジクロフェナク,イブプロフェンである。CXBはプラセボを除くこれら薬剤とほぼ同等にRAの症状をコントロールできた。ACR20達成率については,CXB 400mg/日,800mg/日群で42/82(51%),43/82(52%)と,プラセボ群25/85(29%)に対して明らかな差異を示した。この6ヵ月間でのCXBの試験は,上部消化管障害の低減を示せたが,その長期間でのエビデンスと,心疾患予防目的に低用量アスピリン内服中の患者における付加的な有用性を示すことはできなかった。内視鏡での3mm以上の潰瘍についてのCXB群とプラセボ群との比較は,100mg/日,200mg/日,400mg/日において有意な差を認めず(effect size:RR 1.51(95% CI 0.48~4.75), 1.02(0.30~3.54),1.52(0.47~4.91)),ナプロキセン(0.22(0.15~0.32)),ジクロフェナク(0.21(0.13~0.34))においてはCXBが有意に低リスクであった。鎮痛薬併用に関しては,計23のRCTとCCT(全912名)が選ばれた。すべての試験のrisk of biasはhighで,鎮痛薬の単独療法が併用療法を上回る有用性のエビデンスは不十分であった。併用薬の種類はanalgesic,neuromodulator,他のNSAID,オピオイドなどで,23試験のうち18試験(78%)はどちらかが有用であるものであったが,NSAID単独療法と併用療法の有用性を示すものではなく,残る5試験(22%)にも疾患活動性が抑制されている際に残存する痛みに対する鎮痛薬の併用療法の有用性を示唆する試験はなかった。効果不十分や安全性による中断についての報告は不十分なエビデンスであったが,全体として単独療法と併用療法との差は存在しなかった。
その後の2012年7月までに発表された文献についてPubMed検索をした。比較的新しく,日本で汎用されるNSAIDに関するRCT1件について構造化抄録を作成した。米国における多施設第Ⅲ相二重盲検化ランダム化割り付け12週試験(Furst DE, et al. J Rheumatol. 2002;29:436-446)は,low risk of bias で,メロキシカム15mg/日,22.5mg/日群,ジクロフェナク150mg/日群で患者全般評価,圧痛関節数,腫脹関節数などが有意に改善したが, CRP,ESRには改善がなかった。
同様に医学中央雑誌を検索し,日本でのみ使用され,かつ汎用されているロキソプロフェンに関するRCT 1件について構造化抄録を作成した。日本の45施設におけるロキソプロフェンとインドメタシンの6週比較試験(五十嵐三都男,他.リウマチ.1985;25:61-72)では, risk of biasはmoderateで,有効性に差はなく安全性はロキソプロフェンが高かった。NSAIDの関節破壊抑制効果に関するエビデンスは認めなかった。
エビデンスの質 (GRADE) |
moderate |
該当するコクランレビュー | あり |
書誌情報1 | Wienecke T, Gotzsche PC. Paracetamol versus nonsteroidal anti-inflammatory drugs for rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2004, Issue 1 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD003789.pub 2 |
書誌情報2 | Colebatch AN, Marks JL, Edwards CJ. Safety of non-steroidal anti-inflammatory drugs, including aspirin and paracetamol(acetaminophen)in people receiving methotrexate for inflammatory arthritis(rheumatoid arthritis, ankylosing spondylitis, psoriatic arthritis, other spondyloarthritis). Cochrane Database of Systematic Reviews 2011, Issue 11. |
DOI | 10.1002/14651858.CD008872.pub 2 |
書誌情報3 | Garner SE, Fidan D, Frankish RR, Judd J, Shea B, Towheed T, Tugwell P, AWells GA. Celecoxib for rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2002, Issue 4 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD003831 |
書誌情報4 | Ramiro S, Radner H, van der Heijde D, van Tubergen A, Buchbinder R, Aletaha D, Landewe RBM. Combination therapy for pain management in inflammatory arthritis (rheumatoid arthritis, ankylosing spondylitis, psoriatic arthritis, other spondyloarthritis). Cochrane Database of Systematic Reviews 2011, Issue 10. |
DOI | 10.1002/14651858.CD008886.pub 2 |