(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 11 | 担当者 | 金子祐子 |
カテゴリー | MTX以外のcsDMARD(従来型抗リウマチ薬) 3 | ||
CQ | RA患者に対してサラゾスルファピリジン投与は非投与に比較して有用か? | ||
推奨文 | RA患者の疾患活動性改善を目的としてサラゾスルファピリジン投与を推奨する。 | 推奨の強さ | 強い | 同意度 | 4.50 |
解説 | RA患者におけるサラゾスルファピリジンは,欧米を中心としたエビデンスが豊富で,臨床症状改善および画像的関節破壊抑制効果において有効性が認められている。日本における使用量1,000mgでのエビデンスは乏しいものの,強い推奨とした。有害事象としては消化管障害と皮膚粘膜障害が多く,プラセボと比較して2〜3倍認められ,注意が必要である。今後は1,000mg使用による重要アウトカムの有効性について,エビデンスの蓄積が求められる。 | ||
Q | RAにおけるサラゾスルファピリジン投与は有効かつ安全か? | ||
A | RAに対するサラゾスルファピリジン投与は,疾患活動性改善および画像的関節破壊抑制効果に対して有効で安全である。 |
エビデンスサマリー
1997年に発表され2010年に更新されたコクランレビューでは,1997年までに報告されたRA患者におけるサラゾスルファピリジン(SASP)に関するRCTおよびCCTから,6文献のRCTが採択された。すべてlow risk of biasで,プラセボを対照として,SASPは6つのうち5つが2g/日,1つは3g/日で介入された。アウトカムは圧痛関節数,腫脹関節数,疼痛評価,医師全般評価,患者全般評価,ESR,画像スコア,びらんのある患者であった。
SASP群はプラセボ群と比して,圧痛関節数低下(effect size: -2.45(95%CI -4.15〜-0.74)), 腫脹関節数低下(-2.38(-3.73〜-1.03)), 疼痛軽減(-8.71(-14.80〜-2.62)),ESR低下(-17.58(-21.93〜-13.23))を認めた。医師全般評価(-0.16(-0.37〜0.06)),患者全般評価(-0.23 (-0.46〜0.00)), 画像的スコアの進行抑制(-3.60(-11.13〜3.93)),びらんのある患者比の低下(0.59(0.11〜3.21))は有意ではなかった。効果不十分による脱落はSASP群で有意に低かった(0.23(0.14〜0.37))。安全性については,有害事象による脱落はSASP群で有意に高く(3.01(0.82〜4.99)),特に消化管障害(2.44(1.12〜5.32)),皮膚粘膜障害(3.43(1.30〜9.09))で多かった。腎障害(0.10(0.00〜5.01)),肝障害(3.63(0.72〜18.23)),血液障害(2.84(0.48〜16.75))では差を認めなかった。
その後の2012年7月までに発表された文献について,PubMedを検索した。103文献から,日本では使用できないhydroxychloroquineを含まない試験を抽出し,他のDMARDを対照とする試験を含み,臨床効果と関節破壊に関するアウトカムを検討した6文献について構造化抄録を作成した。
SASP(2g/日),MTX(7.5mg/週),両者併用を検討した試験(Dougadous M, et al. Ann Rheum Dis. 1999;58:220-225)は,low risk of biasで,54週時に臨床症状改善(EULAR good reponse:34 vs 38 vs 38%),ESR低下(-30 vs -24 vs -25), 画像的関節破壊進行(4.64 vs 4.50 vs 3.46)に関して3群で差を認めなかった。欧州におけるレフルノミド(LEF)とプラセボとを比較した試験(Smolen JS, et al. Lancet. 1999;353:259-266)は,low risk of biasで,24週後LEFと同等の腫脹関節数低下(-6.2 vs -7.2 vs -3.4),ESR低下(-16.6 vs -7.4 vs 3.4)効果と,プラセボと比して有意なLarsenスコアによる画像的関節破壊抑制効果(0.01 vs 0.01 vs 0.05)が認められた。本試験ではその後Sharpスコアによって画像的関節破壊が評価され(Sharp JT, et al. Arthiritis Rheum. 2000;43:495-505),3 以上の進行割合で有意に抑制効果を認めた( 6 vs 3 vs 29%)。欧州でのジクロフェナクと比較した試験(Choy EH, et al. Cin Exp Rheumatol. 2002;20:351-358) は,moderate risk of biasで,12週後の有意な臨床効果(DAS: -1.3 vs -0.9)と画像的関節破壊抑制効果(新規びらん:2.0 vs 7.5)が認められた。英国におけるSASP(4g/日),MTX(25mg/週),両者併用を検討した中程度のrisk of biasの試験(Capell HA, et al. Ann Rheum Dis. 2007;66:235-241)は,low risk of biasで,1年後単剤群同士は差がなく,併用群が単剤群よりもDAS低下(-0.26 vs -0.3 vs -0.67)を認めた。日本におけるSASP 1g/日とBUC 200mg/日を比較した試験(Nakajima M, et al. Mod Rheumatol. 2009;19:384-389)では,12ヵ月後両者同様にDAS28低下(-1.9 vs -0.8),腫脹関節数減少(-4.1 vs -3.4),ESR低下(-30 vs -17),CRP低下(-1.4 vs -1.8)と改善し,両者に差を認めなかった。SASP量について有効性・安全性を比較した報告はなかった。
同様に医学中央雑誌も検索したが,該当する論文はなかった。
以上から,日本での使用量である1gでのエビデンスは乏しいものの,欧米を中心に臨床症状改善および画像的関節破壊抑制効果を認めた。今後は1g使用による重要アウトカムの有効性についてエビデンスの蓄積が求められる。
SASP群はプラセボ群と比して,圧痛関節数低下(effect size: -2.45(95%CI -4.15〜-0.74)), 腫脹関節数低下(-2.38(-3.73〜-1.03)), 疼痛軽減(-8.71(-14.80〜-2.62)),ESR低下(-17.58(-21.93〜-13.23))を認めた。医師全般評価(-0.16(-0.37〜0.06)),患者全般評価(-0.23 (-0.46〜0.00)), 画像的スコアの進行抑制(-3.60(-11.13〜3.93)),びらんのある患者比の低下(0.59(0.11〜3.21))は有意ではなかった。効果不十分による脱落はSASP群で有意に低かった(0.23(0.14〜0.37))。安全性については,有害事象による脱落はSASP群で有意に高く(3.01(0.82〜4.99)),特に消化管障害(2.44(1.12〜5.32)),皮膚粘膜障害(3.43(1.30〜9.09))で多かった。腎障害(0.10(0.00〜5.01)),肝障害(3.63(0.72〜18.23)),血液障害(2.84(0.48〜16.75))では差を認めなかった。
その後の2012年7月までに発表された文献について,PubMedを検索した。103文献から,日本では使用できないhydroxychloroquineを含まない試験を抽出し,他のDMARDを対照とする試験を含み,臨床効果と関節破壊に関するアウトカムを検討した6文献について構造化抄録を作成した。
SASP(2g/日),MTX(7.5mg/週),両者併用を検討した試験(Dougadous M, et al. Ann Rheum Dis. 1999;58:220-225)は,low risk of biasで,54週時に臨床症状改善(EULAR good reponse:34 vs 38 vs 38%),ESR低下(-30 vs -24 vs -25), 画像的関節破壊進行(4.64 vs 4.50 vs 3.46)に関して3群で差を認めなかった。欧州におけるレフルノミド(LEF)とプラセボとを比較した試験(Smolen JS, et al. Lancet. 1999;353:259-266)は,low risk of biasで,24週後LEFと同等の腫脹関節数低下(-6.2 vs -7.2 vs -3.4),ESR低下(-16.6 vs -7.4 vs 3.4)効果と,プラセボと比して有意なLarsenスコアによる画像的関節破壊抑制効果(0.01 vs 0.01 vs 0.05)が認められた。本試験ではその後Sharpスコアによって画像的関節破壊が評価され(Sharp JT, et al. Arthiritis Rheum. 2000;43:495-505),3 以上の進行割合で有意に抑制効果を認めた( 6 vs 3 vs 29%)。欧州でのジクロフェナクと比較した試験(Choy EH, et al. Cin Exp Rheumatol. 2002;20:351-358) は,moderate risk of biasで,12週後の有意な臨床効果(DAS: -1.3 vs -0.9)と画像的関節破壊抑制効果(新規びらん:2.0 vs 7.5)が認められた。英国におけるSASP(4g/日),MTX(25mg/週),両者併用を検討した中程度のrisk of biasの試験(Capell HA, et al. Ann Rheum Dis. 2007;66:235-241)は,low risk of biasで,1年後単剤群同士は差がなく,併用群が単剤群よりもDAS低下(-0.26 vs -0.3 vs -0.67)を認めた。日本におけるSASP 1g/日とBUC 200mg/日を比較した試験(Nakajima M, et al. Mod Rheumatol. 2009;19:384-389)では,12ヵ月後両者同様にDAS28低下(-1.9 vs -0.8),腫脹関節数減少(-4.1 vs -3.4),ESR低下(-30 vs -17),CRP低下(-1.4 vs -1.8)と改善し,両者に差を認めなかった。SASP量について有効性・安全性を比較した報告はなかった。
同様に医学中央雑誌も検索したが,該当する論文はなかった。
以上から,日本での使用量である1gでのエビデンスは乏しいものの,欧米を中心に臨床症状改善および画像的関節破壊抑制効果を認めた。今後は1g使用による重要アウトカムの有効性についてエビデンスの蓄積が求められる。
エビデンスの質 (GRADE) |
high |
該当するコクランレビュー | あり |
書誌情報 | Suarez-Almazor ME, Belseck E, Shea B, Tugwell P, Wells GA. Sulfasalazine for treating rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010, Issue 7 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD000958 |