(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 10 担当者 金子祐子
カテゴリー MTX以外のcsDMARD(従来型抗リウマチ薬) 2
CQ RA患者に対してブシラミン投与は非投与に比較して有用か?
推奨文 RA患者の疾患活動性改善を目的としてブシラミン投与を推奨する。
推奨の強さ 弱い 同意度 4.21
解説  RA患者におけるブシラミンの有効性に関するエビデンスは限定的で,現在の標準的指標や画像的関節破壊抑制効果を検討されたものは乏しい。欧米では使用されておらず,現在は他の薬物療法の進歩により使用頻度は減少したが,わが国では依然として使用されることも多く,リウマチ専門医による経験的評価もあることから,弱い推奨とした。
Q RAにおけるブシラミン投与は有効かつ安全か?
A RAに対するブシラミン投与は,疾患活動性改善には有効で安全な可能性があるが,エビデンスは乏しい。画像的関節破壊抑制効果についての報告はほとんどない。


  エビデンスサマリー
ブシラミン(BUC)に関するコクランレビューはなく,文献検索でエビデンスを検討した。
  PubMed検索では,関連する文献が107件抽出され,このうちRCT6件について構造化抄録を作成した。
 日本における単施設BUCとサラゾスルファピリジン(SASP)を12ヵ月間で比較した試験(Nakajima M, et al.Mod Rheumatol. 2009;19:384-389)では,両者同様に,DAS28低下(-1.9 vs -0.8), 腫脹関節数減少(-4.1 vs -3.4),疼痛関節数減少(-6.0 vs -3.2),ESR低下(-30 vs -17),CRP低下(-1.4 vs -1.8)と有意に改善し,両者に差を認めなかった。日本におけるBUC単剤,MTX単剤と両者併用の3群を24ヵ月比較した試験(Ichikawa Y, et al. Mod Rheumatol. 2005;15:323-328)では,併用群は単剤群と比して有意な効果を認めたが,BUC群とMTX群では差を認めなかった(ACR20:45.8 vs 43.5 vs 79.2,ACR50:37.5 vs 34.8 vs 58.3,効果不十分による中止率:41.7 vs 43.5 vs 8.3)。本試験ではSharpスコアで関節破壊についても評価しており,24ヵ月後のΔ TSS も同様の結果(27.6 vs 28.5 vs 12.6) であった。韓国における単施設BUCとD-ペニシラミンを16週間比較した試験(Kim HA, et al. Rheumatol Int. 1997;17: 5 - 9 )では,有効性に差はないが(腫脹関節数(-6.6 vs -7.9),疼痛関節数(-4.5 vs -3.3)),有害事象がBUC群で有意に低かった。日本における注射金製剤無効例に対してBUCまたはプラセボを追加併用する試験(Yasuda M, et al. J Rheumatol. 1994;21:44-50)では,BUC群が有意に腫脹関節数改善(-2.5 vs -2.3),疼痛関節数改善(-1.3 vs -3.3),ESR低下(-20 vs 7 ),CRP低下(-0.9 vs 0.6)を認めた。ただし,いずれもサンプルサイズが小さく,moderate〜high risk of biasの試験であった。
 医学中央雑誌での検討では,236件が抽出され,うち2文献について構造化抄録を作成した。日本におけるBUCとプラセボを比較した12週間試験(塩川優一,他.医のあゆみ.1985;135:1116-1133)では,BUC群で有意にESR低下(-19 vs - 6 )とLansbury指数改善(-15 vs - 9 )が認められた。日本におけるBUCとD-ペニシラミンを比較した16週間試験では,BUC群で有意に疼痛関節数減少(-5.5 vs -3.5),Lansbury 指数改善(-24 vs -18)が認められた(塩川優一.炎症.1986; 6:409-430)。ただし,これらの試験でのBUC量は300〜600mg/日まで使用可能で,現在の標準的な指標は評価されておらず,moderate risk of biasであった。
エビデンスの質
(GRADE)
moderate
該当するコクランレビュー なし
書誌情報
DOI

 
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