(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 8 担当者 西田圭一郎
カテゴリー MTX 5
CQ 整形外科手術の周術期においてMTXの休薬は必要か?
推奨文 整形外科手術の周術期にはMTXの休薬を推奨しない。
推奨の強さ 弱い 同意度 4.78
解説  RA治療の標準薬としてのMTXの普及によって,MTX使用中の患者に対する整形外科手術の頻度も増えている。また,MTXの使用量も近年増加している。留意すべきMTXの副作用の1つに感染症があり,特に手術部位感染(SSI)について懸念されてきた。報告により頻度は異なるが,SSI,創傷治癒遅延,その他の術後合併症に関して,MTX休薬群と継続群の間に差がないとする報告と,継続投与により術後感染症が多いとする報告がある。本ガイドラインでは,Lozaら(Loza E, et al. Clin Exp Rheumatol. 2009;27:856-862)のシステマティックレビューを中心に検討を行った。「関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2011年版」(JCR)でも,整形外科予定手術の場合,特に低用量MTX(12.5mg/週以下)の場合はMTX投与の継続が可能であり,術後感染症,術後創傷治癒遅延には影響しない(ただし術後感染症の合併に注意する)としている。12.5〜16mg/週使用中の患者においては個々の合併症を慎重に考慮し,投与の継続・一時中断・再開を判断する。また,整形外科予定手術以外の手術の場合は低用量でも個々の症例に応じて投与の継続・中断・再開を慎重に判断するとしている。
 MTXは腎排泄型の薬剤であり,一般に腎機能低下例には慎重投与ないし禁忌である。出血量が比較的多い手術(股・膝の人工関節全置換術など)で一時的に急激な体液量の変動をきたすような手術前後(手術当週)は休薬も考慮する。その他のMTX使用注意に該当する合併症を有する患者でも 注意が必要である。
Q 整形外科手術の周術期においてMTXの休薬は必要か?
A 整形外科手術の周術期にはMTXの休薬を推奨しない。


  エビデンスサマリー
Carpenterら(Carpenter MT, et al. Orthopedics.1996;19:207-210)は関節形成術前のMTX休薬は術後感染のリスクを低くするとした。一方,Sanyら(Sany J, et al. J Rheumatol. 1993;20:1129-1132)は整形外科予定手術においてはMTXの休薬は不要とし,Murataら(Murata K, et al. Mod Rheumatol. 2006;16:14-19)も低用量MTXの継続は術後合併症のリスクを高めるとはいえず,重症RAにおいてはMTXの継続は疾患の再燃を抑制するとした。最も大規模な前方視的ランダム化試験はGrennanら(Grennan DM, et al. Ann Rheum Dis.2001;60:214-217)によって報告された。388例のRA患者を対象とし,MTX投与中の患者をgroup A:MTX休薬なし,group B:術前後2週間のMTX休薬にランダムに割り付け,group C:MTXを投与されていない228例のRA患者とした。3つのグループ間で術後1年間に生じた感染症,術後合併症の割合を比較した。感染徴候,術後合併症はgroup Aで88例(2 %),group Bで72手術中11例(15%),group Cで228手術中24例(10.5%)であり,groupAはgroupB(p<0.003)およびgroup C(p=0.026)より感染,術後合併症が少なかった。また,術後6週でのRAの再燃はgroup Aはなし,group Bは6例( 8 %),groupC は6例(2.6%)であった。ロジスティック回帰分析ではMTXが感染,術後合併症の発症を増加させることはなく,休薬はすべきでないと結論している。
エビデンスの質
(GRADE)
moderate
該当するコクランレビュー なし
書誌情報
DOI

 
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