(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 7 担当者 川人 豊
カテゴリー MTX 4
CQ RA患者において,MTX内服時の葉酸と活性型葉酸の投与はMTXの治療効果を減弱させるか?
推奨文 MTX投与時には葉酸併用を推奨する。
推奨の強さ 弱い 同意度 4.89
解説  葉酸の併用によって,MTXの副作用を抑制できるが,効果減弱についてはさまざまな意見がある。コクランレビューのメタ解析のエビデンスによると,日常臨床で使用する1週間で7mg以下の低用量の葉酸の併用によって,葉酸と活性型葉酸双方ともMTXの有効性を減弱させないことが示されている。また葉酸の併用により,MTXの増量が可能となる。すべてのMTX使用者へ葉酸を併用すべきかについては明確にされていないが,他国のほとんどのガイドラインで推奨されている(0.5~2mg/日)。葉酸と活性型葉酸双方とも,MTXの副作用抑制効果が存在しMTXの効果減弱もないため,どちらを使用するのがよいかについての検討は十分なされておらず有用性に差はないが,コスト的には葉酸がよい。
Q 葉酸と活性型葉酸の投与はMTXの治療効果を減弱させるか?
A 葉酸と活性型葉酸の投与はMTXの治療効果を減弱させない。


  エビデンスサマリー
コクランレビューでは,7RCT,307名のMTX使用RA患者が選ばれ,このうち147名が葉酸を併用していた。葉酸の使用によって粘膜障害,消化管障害が79%減少したが,活性型葉酸では,43%の減少であった(有意差なし)。葉酸と活性型葉酸の低用量群と高用量群の比較では,副作用の抑制効果に大きな差はなく,血球減少の抑制効果に関しての十分なエビデンスはない。葉酸併用群とプラセボ群を比較すると,RAの活動性に影響を与えなかったが,活性型葉酸の高用量(5mg/週)使用患者では腫脹関節数に影響はなく,圧痛関節数のみ悪化した。要約すると,葉酸・活性型葉酸の併用で,MTX/葉酸の用量比にかかわらず,MTXの治療効果を減弱させることはない。ただし,葉酸使用でMTX使用量や継続率は増加するとされている。2013年の新しいコクランレビューでも,上記とほぼ同様の結論で,6RCT,624名のMTX使用RA患者が選ばれ,葉酸投与によるMTXの効果に及ぼす有意な影響(減弱)を認める結論には至っていない。
 1999年以降でMEDLINE,医学中央雑誌を再検索した結果,128件中構造化抄録を作成した有用論文は3件であった。2000年の英国1施設における二重盲検ランダム化割り付け試験(Griffith SM, et al. Rheumatology(Oxford).2000;39:1102-1109)では,MTX20mg/週,葉酸5mg/日投与患者において一度葉酸を中止し,葉酸5mg/日またはプラセボ群の2群にランダムに割り付けた。1年後の効果として,6,12ヵ月の患者VASがプラセボ群で有意に低下したが,全体の疾患活動性には両群で差が認められなかった。2001年のオランダの多施設二重盲検ランダム化割り付け試験(van Ede AE, et al. Arthritis Rheum. 2001;44:1515-1524)では,MTXを初期投与量7.5mg/週で最大25mg/週まで増量し,プラセボ群(n=137),葉酸1mg/日群(n=133),活性型葉酸2.5mg/週群(n=141)の3群に分け,MTXの投与量が15mg/週に達した時点で,葉酸投与量は2倍としている。やはり,各群間で副作用やMTXの効果に差は認められなかったが,MTXの最終投与量はプラセボ群14.5mg/週,葉酸群18.0mg/週,活性型葉酸群16.4mg/週であり,プラセボ群で有意に少ないことが示されている。一方,2005年のMTXを対照薬とした2つのレフルノミドのphase Ⅲ試験(ランダム化比較試験)における葉酸投与によるMTXの効果の事後検定(post-hoc analysis)では,ACR20改善率は葉酸未使用者が葉酸使用者に比較し平均17%(15~21%)高い結果であった。本試験では,propensity score により患者をマッチさせているが,事後検定であるため,エビデンスレベルは高いといえない。
エビデンスの質
(GRADE)
moderate
該当するコクランレビュー あり
書誌情報1 Ortiz Z, Shea B, Suarez-Almazor ME, Moher D, Wells GA, Tugwell P. Folic acid and folinic acid for reducing side effects inpatients receiving methotrexate for rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 1999, Issue 4 .
DOI 10.1002/14651858.CD000951
書誌情報2 Shea B, Swinden MV, Ghogomu ET, Ortiz Z, Katchamart W, Rader T, Bombardier C, Wells GA, Tugwell P. Folic acid and folinic acid for reducing side effects in patients receiving methotrexate for rheumatoid arthritis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2013, Issue 5 .
DOI 10.1002/14651858.CD000951. pub 2

 
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