(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 17-23 | 担当者 | 平田信太郎 |
カテゴリー | bDMARD(生物学的製剤) 1 | ||
CQ | インフリキシマブはRA治療において有効かつ安全か? | ||
推奨文 | 疾患活動性を有するRA患者に対してインフリキシマブ投与を推奨する。ただし個々の患者のリスクとベネフィットを勘案して適応を決めるべきである。 | 推奨の強さ | 強い | 同意度 | 4.95 |
解説 | インフリキシマブはわが国で最初に発売されたTNF阻害薬であり,最もエビデンスの豊富なbDMARD(生物学的製剤)と考えられる。しかしbDMARD(生物学的製剤)のなかでの製剤選択および症例選択はいまだ検討中の課題であり,また安全性に関するエビデンスレベルは有効性に関するエビデンスと比べいまだ十分とはいえず,個々の患者のリスクとベネフィットを勘案して適応を慎重に決定するべきであることを強調したい。 | ||
Q | ①インフリキシマブはRAの疾患活動性制御に有効か? ②インフリキシマブはRAの関節破壊制御に有効か? ③インフリキシマブはRAの機能障害制御に有効か? ④インフリキシマブはRA患者に使用した際,有害事象による薬剤中止を増加させるか? ⑤インフリキシマブはRA患者に使用した際,重篤な有害事象を増加させるか? ⑥インフリキシマブはRA患者に使用した際,感染症を増加させるか? ⑦インフリキシマブはRA患者に使用した際,死亡を増加させるか? | ||
A |
①有効である。 ②有効である。 ③有効である。 ④増加させるとはいえない。 ⑤増加させるとはいえない。 ⑥増加させるとはいえない。 ⑦増加させるとはいえない。 |
エビデンスサマリー
コクランレビューにおいては,インフリキシマブ(INF)に関する2つのRCT,3つの文献が選ばれ,いずれもMTX併用療法が対象とされた。コクランレビューでは6ヵ月後,1年後に分けて解析されている。Risk of biasの評価では,2つがlow risk of bias,1つがmoderate risk of biasと判断された。
疾患活動性制御については,2つのRCTでACR20,50,70が検討されている。わが国における標準的治療法である INF3mg/kg 8週ごとでは,6ヵ月後におけるACR20,50,70のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれ2.61(1.66~4.13),5.63(2.02~15.66),15.34(0.89~264.59),1年後におけるACR20,50,70のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれ2.46(1.45~4.15),2.63(1.16~5.98),4.60(1.02~20.70)といずれもプラセボ群に比べINF群で優れていた。
関節破壊制御については,1つのRCTで1年後のtotalradiographic score(総X線スコア),major radiographic progression(明らかなX線所見の進行),radiographicimprovement(X線上の改善)が検討されている。わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは,total radiographic scoreのMD(IV,Random,95%CI)は-8.70(-11.58~-5.82)とプラセボ群に比べINF群で有意に低値であり,またmajor radiographic progressionのRR(M-H,Random,95%CI)は0.27(0.12~0.63),radiographic improvementのRR(M-H,Random,95%CI)は3.10(1.60~6.01)といずれもプラセボ群に比べINF群で優れていた。
機能障害制御については,1つのRCTで1年後のHAQ-DIが検討されている。わが国における標準的治療法である INF3mg/kg 8週ごとでは,1年後におけるHAQ-DIのMD(IV,Random,95%CI)は-0.10(-0.31~-0.11)であり,プラセボ群に比べINF群で低値の傾向であった。
薬剤中止については,1つのRCTで1年後の全薬剤中止,有害事象による薬剤中止,効果不十分による薬剤中止が検討されている。わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは合計174例が検討され,プラセボ群と比較した際の全薬剤中止のRR(M-H,Random,95%CI)は0.53(0.36~0.80)と明らかにINF群で少なかったが,有害事象による薬剤中止のRR(M-H,Random,95%CI)は0.73(0.24~2.21),効果不十分による薬剤中止のRR(M-H,Random,95%CI)は0.54(0.33~0.90)であり,INF群における全薬剤中止の減少は主として効果不十分による薬剤中止症例の減少によるものと考えられた一方,有害事象による薬剤中止を明らかに増加させる根拠はなかった。
重篤な有害事象については,1つのRCTで1年後のWHO Adverse Reaction Terminologyで定義される重篤な有害事象が検討されている。わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは合計172例が検討され,プラセボ群と比較した際の重篤な有害事象のRR(M-H,Random,95%CI)は0.56(0.27~1.13)であり,INFが重篤な有害事象を明らかに増加させるとの根拠はなかった。この結果は他の用法・用量においても同様であった。
感染症については,2つのRCTで6ヵ月以内に生じた抗菌薬投与を要した感染症および重篤な感染症が,1つのRCTで1年以内に生じた重篤な感染症が検討されている。6ヵ月以内に生じた抗菌薬投与を要した感染症および重篤な感染症はすべての用法・用量の合計529例で検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれ抗菌薬投与を要した感染症が1.48(0.99~2.23),重篤な感染症が0.72(0.28~1.84)であった。1年以内に生じた重篤な感染症は用法・用量別に検討され,わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは合計172例が検討され,プラセボ群と比較した際の重篤な感染症のRR(M-H,Random,95%CI)は0.29(0.06~1.34)であり,INFが重篤な感染症を明らかに増加させるとの根拠はなかった。この結果は他の用法・用量においても同様であった。
死亡については,2つのRCTで6ヵ月以内に生じた死亡が検討されている。すべての用法・用量の合計529例で検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は0.22(0.05~0.99)であり,INFが死亡を増加させるとの根拠はなく,逆に減少させた。ただし,この結果は死亡した症例数が両群とも少数であるため,さらなる症例蓄積による再検討を要する。
以上より,コクランレビューにおいて,INFはMTX併用療法において,プラセボ群と比較し疾患活動性制御,関節破壊制御,機能障害制御のいずれに対しても明らかに良好な効果をもたらすことが示された。また有害事象による薬剤中止,重篤な有害事象,抗菌薬を要する感染症および重篤な感染症,死亡のいずれも明らかに増加させるとはいえないことが示された。
さらに,コクランレビュー以降2002~2012年に発表された文献についてもPubMedおよび医学中央雑誌を検索しそれぞれ53,127の文献がヒットしたが,いずれもコクランレビューで選択された文献のサブ解析または同様の結果を示す研究であり,上記結論は不変であった。
疾患活動性制御については,2つのRCTでACR20,50,70が検討されている。わが国における標準的治療法である INF3mg/kg 8週ごとでは,6ヵ月後におけるACR20,50,70のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれ2.61(1.66~4.13),5.63(2.02~15.66),15.34(0.89~264.59),1年後におけるACR20,50,70のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれ2.46(1.45~4.15),2.63(1.16~5.98),4.60(1.02~20.70)といずれもプラセボ群に比べINF群で優れていた。
関節破壊制御については,1つのRCTで1年後のtotalradiographic score(総X線スコア),major radiographic progression(明らかなX線所見の進行),radiographicimprovement(X線上の改善)が検討されている。わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは,total radiographic scoreのMD(IV,Random,95%CI)は-8.70(-11.58~-5.82)とプラセボ群に比べINF群で有意に低値であり,またmajor radiographic progressionのRR(M-H,Random,95%CI)は0.27(0.12~0.63),radiographic improvementのRR(M-H,Random,95%CI)は3.10(1.60~6.01)といずれもプラセボ群に比べINF群で優れていた。
機能障害制御については,1つのRCTで1年後のHAQ-DIが検討されている。わが国における標準的治療法である INF3mg/kg 8週ごとでは,1年後におけるHAQ-DIのMD(IV,Random,95%CI)は-0.10(-0.31~-0.11)であり,プラセボ群に比べINF群で低値の傾向であった。
薬剤中止については,1つのRCTで1年後の全薬剤中止,有害事象による薬剤中止,効果不十分による薬剤中止が検討されている。わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは合計174例が検討され,プラセボ群と比較した際の全薬剤中止のRR(M-H,Random,95%CI)は0.53(0.36~0.80)と明らかにINF群で少なかったが,有害事象による薬剤中止のRR(M-H,Random,95%CI)は0.73(0.24~2.21),効果不十分による薬剤中止のRR(M-H,Random,95%CI)は0.54(0.33~0.90)であり,INF群における全薬剤中止の減少は主として効果不十分による薬剤中止症例の減少によるものと考えられた一方,有害事象による薬剤中止を明らかに増加させる根拠はなかった。
重篤な有害事象については,1つのRCTで1年後のWHO Adverse Reaction Terminologyで定義される重篤な有害事象が検討されている。わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは合計172例が検討され,プラセボ群と比較した際の重篤な有害事象のRR(M-H,Random,95%CI)は0.56(0.27~1.13)であり,INFが重篤な有害事象を明らかに増加させるとの根拠はなかった。この結果は他の用法・用量においても同様であった。
感染症については,2つのRCTで6ヵ月以内に生じた抗菌薬投与を要した感染症および重篤な感染症が,1つのRCTで1年以内に生じた重篤な感染症が検討されている。6ヵ月以内に生じた抗菌薬投与を要した感染症および重篤な感染症はすべての用法・用量の合計529例で検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)はそれぞれ抗菌薬投与を要した感染症が1.48(0.99~2.23),重篤な感染症が0.72(0.28~1.84)であった。1年以内に生じた重篤な感染症は用法・用量別に検討され,わが国における標準的治療法であるINF3mg/kg 8週ごとでは合計172例が検討され,プラセボ群と比較した際の重篤な感染症のRR(M-H,Random,95%CI)は0.29(0.06~1.34)であり,INFが重篤な感染症を明らかに増加させるとの根拠はなかった。この結果は他の用法・用量においても同様であった。
死亡については,2つのRCTで6ヵ月以内に生じた死亡が検討されている。すべての用法・用量の合計529例で検討され,プラセボ群と比較した際のRR(M-H,Random,95%CI)は0.22(0.05~0.99)であり,INFが死亡を増加させるとの根拠はなく,逆に減少させた。ただし,この結果は死亡した症例数が両群とも少数であるため,さらなる症例蓄積による再検討を要する。
以上より,コクランレビューにおいて,INFはMTX併用療法において,プラセボ群と比較し疾患活動性制御,関節破壊制御,機能障害制御のいずれに対しても明らかに良好な効果をもたらすことが示された。また有害事象による薬剤中止,重篤な有害事象,抗菌薬を要する感染症および重篤な感染症,死亡のいずれも明らかに増加させるとはいえないことが示された。
さらに,コクランレビュー以降2002~2012年に発表された文献についてもPubMedおよび医学中央雑誌を検索しそれぞれ53,127の文献がヒットしたが,いずれもコクランレビューで選択された文献のサブ解析または同様の結果を示す研究であり,上記結論は不変であった。
エビデンスの質 (GRADE) |
high |
該当するコクランレビュー | あり |
書誌情報 | Blumenauer BBTB,Judd M,Wells GA,Burls A,Cranney A,Hochberg MC,Tugwell P,Lopez-Olivo MA. Infliximab for the treatment of rheumatoid arthritis.Cochrane Database of Systematic Reviews 2002,Issue 3 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD003785 |