(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第1章 本ガイドラインを有効に活用していただくために |
4.本ガイドラインをJCRから出版するにあたって
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長 山中 寿
本ガイドライン作成作業の端緒は,2011年度より開始された厚生労働科学研究費補助金免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業指定研究「我が国における関節リウマチ治療の標準化に関する多層的研究」(研究代表者:宮坂信之)において,わが国の医療に適したRA診療ガイドラインを作成することが企画されたことであった。そして,関節リウマチ診療ガイドライン作成分科会(以下,ガイドライン作成分科会)(分科会長:山中 寿)が組織され,以後3年の時間をかけて「関節リウマチ診療ガイドライン2014」が完成した。
RA診療が過去15年間で急速に進歩したことが引き金となり,欧米では多くのガイドラインやリコメンデーションが発表された。わが国と欧米各国では医療体制,医療保険システム,薬剤のレパートリーなども異なり,治療反応性や安全性にも一定の人種差が存在すると考えられているため,わが国におけるRA診療に特化したガイドラインの作成が待たれていたこともあり,本ガイドラインの作成には期待が集まっていた。
本ガイドラインは,現時点で最も進化したガイドライン作成法であるGRADEシステムを用いて作成されたことが最も大きな特徴である。GRADEシステムは,単にエビデンスを吟味してエビデンスレベルを決定するだけでなく,利益と不利益のバランスや患者の意見,価値観なども盛り込んでエビデンスレベルとは独立した推奨度を決定する方法である。従来のガイドライン作成法と比較すると,作業量は格段に増えるが,多くの情報を取り入れる分だけ日常臨床の現場に近い指針を示すことができると期待されている。
一方で,RA診療に関してはすでに多くのエビデンスが蓄積されており,コクランレビューをはじめとするシステマティックレビューも多数出版されている。この状況下で新たに一からシステマティックレビューを行うことは非効率であると考えられたため,本ガイドライン作成にあたっては既存のシステマティックレビューを可能なかぎり流用し,古いシステマティックレビューしか存在しない場合は追加解析をすることによってエビデンスの評価を行った。
利益と不利益のバランスに関しては製薬会社の協力を得て,厚生労働省に提出した市販後調査成績を抜粋してまとめることにより,推奨度の決定に利用するという新しい方法を採用した。
また,患者の意見の集約には公益社団法人日本リウマチ友の会の多大な協力を得て,アンケート調査を実施し,さらにフォーカスグループによる意見の聴取などを行ったうえで,代表者にはパネル会議にて推奨度の決定において他の委員と対等の立場で投票していただいた。この意味で,患者の意見が推奨度に反映されたガイドラインであることの意義はとても大きいものと考えている。
GRADEシステムによるガイドライン作成はわが国ではまだほとんど行われておらず,作成経過では試行錯誤も繰り返したが,2013年度末をもって,「RA診療ガイドライン分科会総合報告書」を厚生労働省に提出することができた。
RA診療が過去15年間で急速に進歩したことが引き金となり,欧米では多くのガイドラインやリコメンデーションが発表された。わが国と欧米各国では医療体制,医療保険システム,薬剤のレパートリーなども異なり,治療反応性や安全性にも一定の人種差が存在すると考えられているため,わが国におけるRA診療に特化したガイドラインの作成が待たれていたこともあり,本ガイドラインの作成には期待が集まっていた。
本ガイドラインは,現時点で最も進化したガイドライン作成法であるGRADEシステムを用いて作成されたことが最も大きな特徴である。GRADEシステムは,単にエビデンスを吟味してエビデンスレベルを決定するだけでなく,利益と不利益のバランスや患者の意見,価値観なども盛り込んでエビデンスレベルとは独立した推奨度を決定する方法である。従来のガイドライン作成法と比較すると,作業量は格段に増えるが,多くの情報を取り入れる分だけ日常臨床の現場に近い指針を示すことができると期待されている。
一方で,RA診療に関してはすでに多くのエビデンスが蓄積されており,コクランレビューをはじめとするシステマティックレビューも多数出版されている。この状況下で新たに一からシステマティックレビューを行うことは非効率であると考えられたため,本ガイドライン作成にあたっては既存のシステマティックレビューを可能なかぎり流用し,古いシステマティックレビューしか存在しない場合は追加解析をすることによってエビデンスの評価を行った。
利益と不利益のバランスに関しては製薬会社の協力を得て,厚生労働省に提出した市販後調査成績を抜粋してまとめることにより,推奨度の決定に利用するという新しい方法を採用した。
また,患者の意見の集約には公益社団法人日本リウマチ友の会の多大な協力を得て,アンケート調査を実施し,さらにフォーカスグループによる意見の聴取などを行ったうえで,代表者にはパネル会議にて推奨度の決定において他の委員と対等の立場で投票していただいた。この意味で,患者の意見が推奨度に反映されたガイドラインであることの意義はとても大きいものと考えている。
GRADEシステムによるガイドライン作成はわが国ではまだほとんど行われておらず,作成経過では試行錯誤も繰り返したが,2013年度末をもって,「RA診療ガイドライン分科会総合報告書」を厚生労働省に提出することができた。
本ガイドラインは,多くの臨床医に日常診療で利用していただくことを目的として多大な労力をかけて完成したものであるが,厚生労働省へ報告するのみでは十分な情報伝達が難しいと考えられた。わが国におけるRA診療が歴史的にJCRの主導で行われてきたことは明らかであり,またガイドライン作成分科会委員は全員がJCR会員であったことから,JCRの組織を用いてガイドラインの普及を図ることが妥当であろうとの意見が研究代表者の宮坂信之,分科会長の山中 寿とJCR理事長の髙崎芳成の間で議論された。
そして,本ガイドラインをJCRから出版することがJCR理事会において報告され,正式に承認された(2013年度第5回理事会,2014年2月1日)。また,完成した厚生労働省ガイドライン(案)は2014年4月の第58回日本リウマチ学会総会・学術集会(JCR 2014)において発表され,大きく注目を集めた。さらに,本ガイドラインをJCRより「関節リウマチ診療ガイドライン2014」として出版するにあたり,パブリックコメントの取得と利益相反マネジメントを行った。
そして,本ガイドラインをJCRから出版することがJCR理事会において報告され,正式に承認された(2013年度第5回理事会,2014年2月1日)。また,完成した厚生労働省ガイドライン(案)は2014年4月の第58回日本リウマチ学会総会・学術集会(JCR 2014)において発表され,大きく注目を集めた。さらに,本ガイドラインをJCRより「関節リウマチ診療ガイドライン2014」として出版するにあたり,パブリックコメントの取得と利益相反マネジメントを行った。
1. パブリックコメント
JCR2014にて発表したガイドライン(案)を発表後直ちにJCRウェブサイトに掲示し,さらにJCR全会員に対してメーリングリストで連絡してパブリックコメントを求めた。期限は2014年5月末までの1ヵ月間とした。
2014年5月末の時点で,最終的に3通りのパブリックコメントが寄せられた。主たる内容は,
①ガイドラインの作成方法(特に対象者)と表記方法に関するもの
②妊娠,授乳に関する記載に関するもの
③誤植
であった。
①は,パブリックコメントを求めるためにガイドライン本文のみをJCRウェブサイトに掲示し,作成方法などは掲示しなかったために生じたコメントと判断した。このコメントに関しては,本ガイドラインの第1章に詳細に記載されている事項であり,第1章をお読みいただければ理解していただけると判断し,可能な範囲で対応することとした。
②は妊娠,授乳に関する貴重な意見であったが,推奨文自体に対するものではなく,解説の部分に対する意見であった。したがって,解説文を修正し,反映させた。
③は修正した。
2. 利益相反マネジメント
本ガイドライン作成にあたっては,「一般社団法人日本リウマチ学会における事業活動の利益相反(COI)に関する指針」(http://www.ryumachi-jp.com/pdf/COI_board.pdf)に基づき,ガイドライン作成に関与した委員は全員,日本リウマチ学会利益相反マネジメント小委員会(http://www.ryumachi-jp.com/pdf/COI.pdf) に「事業活動の利益相反に関する指針」およびその細則に則る「利益相反の自己申告書」を提出して審査を受けた。その結果,適正に記載されていることが確認され,日本リウマチ学会利益相反マネジメント小委員会より以下の了解を得た。
「RA診療ガイドライン2014」の発行にあたって,ガイドライン執筆者にCOI申告書を提出していただき,日本リウマチ学会利益相反マネジメント小委員会で各申告書を審査した結果,記載に不備がないことを確認した。
日本リウマチ学会利益相反マネジメント小委員会
委員長 羽生忠正
委員長 羽生忠正
以上の過程を経て,「関節リウマチ診療ガイドライン2014」が発行されることになった。構想から出版まで3年以上の時間を要したが,委員全員が多忙な臨床医であることと膨大な作業量を考えた場合,妥当であると考えられる点をご理解いただきたい。
なお,本ガイドラインは,RA診療の視点からはわが国と欧米の診療体制の違いなどを示すことができて有用であると考えるが, ガイドライン作成の視点からもGRADEシステムを導入して作成したガイドラインが日常診療でどれだけ有用であるかを知るうえで重要なステップであると考える。
本ガイドラインを十分にご活用いただければ幸甚である。
なお,本ガイドラインは,RA診療の視点からはわが国と欧米の診療体制の違いなどを示すことができて有用であると考えるが, ガイドライン作成の視点からもGRADEシステムを導入して作成したガイドラインが日常診療でどれだけ有用であるかを知るうえで重要なステップであると考える。
本ガイドラインを十分にご活用いただければ幸甚である。